【社会】シェールガスVSソ-ラー 世界に与える影響を海外メディア分析 NewSphere(ニュースフィア) 2014年1月10日
チェコのNPO言論ネットワーク、プロジェクト・シンジケート(ダニエル・イェルギン氏寄稿)は、アメリカのシェールエネルギーの台頭が、世界的に政治・経済面で大きな影響を与えていると紹介する。
一方、投資ブロガーネットワークのシーキング・アルファは、ソーラーこそ今後有望であり、シェール革命の頭を押さえると主張している。
アメリカが世界最大の産油国に?
シェールエネルギーは、シェール岩(※頁岩。泥岩の一種)地層から採掘される天然ガスや石油(タイトオイル)のことだ。採掘のための水圧破砕法は1947年に開発されたが、実際に実用化されたのは2000年前後であり、大規模供給がされるようになったのは2008年である。
アメリカのシェールガス/タイトオイルの産出量は膨大で、現在は同国産のガスや石油の半分ほどを占めるに至っており、アメリカはあと数年でサウジアラビアとロシアを追い越して世界最大の産油国になるだろうという。
イランさえ折れさせたシェールパワー
アメリカはガス輸入の必要がなくなり、ガス価格はヨーロッパの3分の1、アジアの5分の1となった。豊富で安価な米国産シェールガスのうち、ロシア産やノルウェー産を締め出してヨーロッパに流れたものは、在来型エネルギーに依存する高コストな工場を窮地に追いやった。日本では福島原発事故以降の発電源の代替となっている。中国でも環境汚染の問題から、石炭発電に代わって重視され始めているという。中国のシェールガス埋蔵量も世界屈指だが、技術面・環境面で課題が大きいと指摘されている。
これはさらに、中東諸国が石油供給を握っている構造をも揺るがすことになった。プロジェクト・シンジケート記事の主張では、経済制裁に頑強に耐え続けていたイランが急に核対話に応じ始めたのは、わずか2年でシェールにシェアを奪われつつあったからだという。ただし記事は、世界の他の国にとっての価値も考慮することから、アメリカにとって中東が全くどうでもよくなるというのは過言だと断っている。
まだまだ安くなるソーラー
一方、シーキング・アルファの記事は、1年半前の記事で「買い」だと勧めたソーラー関連企業株が、その後さらに下がったものの、最終的に2倍から10倍ほどに上がっている実績を強調する。
記事はソーラー発電のコストが急落していることを強調する。ミネソタ州など、特別に日照に恵まれているわけでない地域でも、在来型エネルギーのコストと遜色なくなってきているという。
中国もソーラーに力を入れる?
大気汚染に苦しむ中国はソーラーパネルの設置ペースを上げており、2012年から2015年の間に発電容量を5倍とする計画である。日本でも2012年から2013年にかけて350%増と推定されている。クレディ・スイスはソーラーの台頭の前に、シェールの成長予測を大幅カットした。
記事は、ソーラーが有望になるにつれ、研究投資はさらに集まり、今後も効率化が一層進むと主張する。問題は過剰投資による過剰供給であるが、価格下落に伴って企業が淘汰されるため、実際にはむしろ早急に供給拡大が必要なぐらいだという。中国も実質的にソーラー企業の4分の3を退場させる決定をしたが、これもソーラーの先行きが暗いことを意味するのではなく、逆に業界にとって必要な整理なのだという。
再生可能エネルギーの府の側面 不正補助金との指摘受けるドイツ
一方ユーラクティブ.comは、ドイツが再生可能エネルギーの大口利用者を税制優遇していることが、EUが国家による企業補助金を禁止していることに抵触するとして、欧州委員会から捜査を受けている件を報じている。「エネルギーにも経済にも責任を負っている」ガブリエル独経財相は、「ドイツ産業界にダメージを与えて、欧州に利益があろうはずがありません」「CO2証明書が安ければ、石炭発電所が現代のガス火力発電所よりも安くなってしまいます」などと抗弁している。