オープンガバメントに関するシンポジウムが東大で開催 (2013/11/20 政治山)
オープンガバメントの現状と、今後の展開を考えるシンポジウム「オープンガバメント シンポジウム phase 0 から phase 1 への課題を探る」が19日、文京区・東京大学で開催された。オープンデータの活用を専門とする研究者や先進的な取り組みを行っている民間企業、NPO法人らが発表、約200人の聴衆は議論に耳を傾けた。イベントの主催は東京大学公共政策大学院で、同大学院の「行政と情報通信技術(PADIT)研究プロジェクト」の一環として開かれたもの。
会では冒頭、同大学院客員教授の奥村裕一氏がキーノートスピーチとして「オープンガバメントの壁」をテーマに登壇。政策過程に市民が積極的に関わるオープンガバメントの実現に向けて、市民・行政・NPO、民間企業などの主体に、それぞれ人材・時間・動機などの「壁」があると指摘。そうした壁をのりこえ、「まずはフェーズ0(=試行錯誤)の状態からフェーズ1(=役所・議会、市民の目覚め)の段階に移ることを期待している」と語った。
リレースピーチでは、世界や日本でのオープンガバメントの動向について、4人の識者が発表。国際大学GLOCOM 主任研究員でOpen Knowledge Foundation Japan 代表の庄司 昌彦氏からは、日本政府のオープンガバメントの取り組みが世界30位(Open Knowledge Foundation発表)と評価されている現状について共有。よりオープンガバメントを進めていくのは、「データの活用」が重要だとし、英国政府の取り組みを参考にすべきだと述べた。
株式会社公共イノベーション代表取締役である川島宏一氏は、課題を起点とした課題解決プロセスを提示。「まちには情報が溢れている。どのように生かしていくかは、現場のセンスの問題」だとした。
株式会社ソーシャルカンパニー代表取締役の市川裕康氏は、行政への市民参画分野でのテクノロジー活用を意味する「シビック・テクノロジー」について紹介。「海外で成功している事例を、日本で広めることが重要」だと語った。
アクセンチュア株式会社経営コンサルティング本部アクセンチュアアナリティクス日本統括の工藤卓哉氏からは、ブルームバーグ・米ニューヨーク前市長の下でデータを活用した政策立案に関わった経験をもとに、「データを使うのは市民。集約したデータだけではなく、生データや集約のロジックを公開することが大事だ」と強調した。また、リアルタイムの人口統計の推移を予防医療に生かしたり、映像・音声データを防犯に生かす事例についても説明した。
会の後半は、法政大学教授の廣瀬克哉氏と奥村氏をコーディネーターに、先進事例の報告とパネルディスカッションが2部にわたって行われ、活発な議論が交わされた。発表者は下記の通り。
<1部>
・杉浦裕樹氏(横浜コミュニティデザイン・ラボ 代表理事)
・田中美乃里氏(NPO法人地域魅力 理事長、藤沢市市民電子会議室運営協議会 委員)
・目黒章三郎氏(会津若松市議会議員 前議長)
・松永英也氏(NPO法人ドットジェイピー 事務局長)
<2部>
・牧田泰一氏(鯖江市 政策経営部 情報統括監)
・田口仁氏(独立行政法人 防災科学技術研究所 研究員)
・関治之氏(Code for Japan 代表)
・ハリス鈴木絵美氏(change.org日本代表)
最後に奥村氏は、「古代ギリシャ時代の政治では、知識の共有が重要だった。議会が市民の代表として監修していきながら、知識をみんなで有効に使っていけるよう、壁を取ることが一番大事だ。皆さんと一緒に、新しい時代のパブリックのあり方を考えていきたい」とし、会を締めくくった。