【政治】「日本の課題に注目せよ!」英コラムニストが警鐘 NewSphere(ニュースフィア) 2013年10月17日
「欧米の政治家は日本を訪れて現状を見て来るべきだ。日本が今直面している課題は、これから我々が直面するものだからだ」
こう主張するのは英フィナンシャルタイムズ紙の主席コラムニスト、ギデオン・ラックマン氏。「日本が示唆する我々の暗い未来」と題する記事で、現在の日本が抱える課題を、欧米の国々に警鐘を鳴らす形で明らかにしている。
少子高齢化、世代間格差の問題
まず、一番に取り上げているのが、少子高齢化の問題。
日本は高齢化と少子化、どちらの傾向も顕著であるとし、日本の人口が2010年から減少していること、2060年には現在の1億2700万人の人口が8670万人まで減少し、人口の4割が65歳以上になると予測されていることに言及。
その結果、日本では世代間格差が広がっている。日本の高齢者が若者よりも断然投票率が高いことにふれ、他のサービスが削減されても、年金と社会保障は維持されてきたと指摘。
一方、若者は将来増税に向き合わなければならず、安定した職業に就くこともますます難しくなる。高齢者の雇用を守ってきたため、現在若者の38%が「不安定な」仕事に就いていると論じている。
確かに、先の第46回衆議院議員総選挙では、60歳代が74.93%、50歳代が68.02%、70歳以上が63.30%、40歳代が59.38%、30歳代が50.10%、20歳代が37.89%と、明らかに高齢者の投票率が高い(明るい選挙推進協会調べ)。
高齢者の意見が過剰に政治に反映される「シルバーデモクラシー」と呼ぶ声もある。この傾向が続けば、高齢者の割合が増す将来、ますます状況は深刻化する。なお投票しないことで蒙る不利益については、若年世代が1%投票を棄権すると約13万5千円損をする、との東北大学の試算もある。
アベノミクスのデフレ対策
続いて、日本政府の債務残高について触れた。米国では対GDP比100%くらいで騒いでいるが、日本は現在230%を超えているにも関わらず、混乱もなく正常に国家として機能していると指摘。しかし国債費が国家予算の約25%を占めることに言及し、世界的な金利上昇に対しては「非常に脆い」と警鐘を鳴らしている。
日本が抱えるデフレの問題への対応策については、マネーサプライを2倍近くにしようとするアベノミクスを「過激な経済実験」として、「それに比較すると米連邦準備理事会や欧州中央銀行が控えめに見える」と論じている。
また、アベノミクスには、資本の逃避、市場のパニック、(最終的に)過度のインフレが起こるリスクを含んでいると述べ、アベノミクスが大きなギャンブルである点を指摘している。
移民を受け入れるべき?
また同氏は、日本で介護ロボットの開発が盛んであることに触れ、移民受け入れの問題と絡め、「移民よりもロボットに介護してもらいたがるのは奇妙に思える」と皮肉った。ただ、広く移民を受け入れてきたEU諸国が現在、移民問題に苦慮している現実を踏まえれば、まだまだ移民問題については議論の余地がありそうだ。
同氏は最後に、安倍首相が精力的にリーダーシップを発揮していることも含めて、日本にはこれからも注目が必要だとして記事を結んでいる。