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住民の「想い」から始まるまちづくり:自治体職員の地域での実践

第3回 道の駅を拠点としたむらづくりで地域創生―株式会社 南山城の挑戦 (2016/10/24 株式会社南山城 代表取締役社長 森本健次)

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「住民を主体とする地方自治の実現と、地域の潜在力を活かした多様性あるまちづくりのために、自らの頭で考え、行動を起こすことができる人材を育成すること」を目的とした、地方自治体職員対象の人材育成プログラム「東京財団週末学校」の受講生によるコラムです。

行政より公益を担う株式会社をつくる!

 2017年4月、京都府南山城村に道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」がオープンします。私は高校卒業後31年勤めた南山城村役場を退職し、今年4月から道の駅の運営会社「株式会社南山城」の代表として、運営にむけた準備や商品開発を急ピッチで進めています。

 「道の駅」と言うと「観光客を相手に土産物を売る休憩施設」といったイメージが大半だと思います。もちろん特産品の販売も行いますが、それはあくまでも手段であって、生産者に代わって出口対策(=販売)を行うことによって一次産業を支えることが真の目的です。このように、「村に必要なことを村の人が取り組み、それによって村の人が利益を享受する」ための仕組みづくりを行い、「行政より公益を担う株式会社」となることを目指しています。

 この道の駅事業も当初はいわゆるハコモノ事業でした。言ってしまえば「道の駅をつくることによって賑わいと雇用が生まれるだろう」といった期待以上のものは何もない状態で担当となったのが2010年。魅力あるむらづくり事業の重点課題として設定されていた次の5つのテーマと道の駅事業を結び付け、必要な機能を道の駅につくることを考え始めたのでした。

魅力あるむらづくりの5つのテーマ

(1)若い世代が就労できる農業振興施策
(2)養豚場の臭気対策
(3)一人暮らし等高齢者の生活支援体制
(4)国道163号バイパスに伴う残土利活用事業
(5)団塊世代等の田舎暮らし推進事業

 まず取り組んだのは、これらのテーマを道の駅がどう村の人たちにとって貢献できるかを考えることで、大きく「産業」「生活」「人口」といった括りで「村で暮らし続けるために必要な仕掛け」を考えてきました。

隠れたお茶の里からの脱却

 南山城村は宇治茶の主産地として、京都府産茶の約3割を生産しています。しかしその大半はJAや茶問屋を通じて系統出荷されており、近年の茶の消費低迷に伴う茶価の下落で、茶農家数の減少が続いています。「茶みたいなもんあかん。今年でもう茶をやめるわ」「子どもには茶を継がせられへん」と聞くこともしばしば。茶農家が自ら小売りをしたくても、つくること以外に手間暇をかけられないのが実情で、六次産業化をすれば発展するという短絡的な考え方は現場では通用しないということを思い知りました。

茶農家数の推移

茶農家数の推移

 そこで、茶葉をつくる人(=茶農家)と、「つくること以外をやる人」が組めばうまくいくのではないかとの仮説を立て、何か新しいことに取り組みたいと考えていた茶農家をリーダーに、茶農家数人と共に、南山城紅茶プロジェクトを2010年に始めました。

 南山城村の茶葉から紅茶をつくる南山城紅茶プロジェクトは、新宿歌舞伎町の居酒屋で、宇都宮の紅茶専門店のオーナーと「宇治茶で紅茶をつくったら面白い」と盛り上がったのがきっかけ。翌年にはそのオーナーと紅茶農家を南山城村に招致し、村内の茶農家への紅茶づくりの提案や技術指導から取り組みました。

 こういった企画をはじめ、プレスリリースやSNSでの情報発信、近隣のカフェへの営業等、活動資金は京都府の助成金を活用したり自己資金を投入しながら、一次産業を支えることに取り組みました。宇治茶の産地で始まった茶農家と行政とのプロジェクトということで、メディアの反応は抜群。全国ネットのテレビや英字新聞にも取り上げられ、初めて村でつくった20kgの紅茶は、生産量と比べものにならないほどの大きな反響がありました。

 それはいいことばかりではなく、宇治茶の亜流、異端児とも言われ、村の中からは「問屋に目を付けられ茶が売れなくなったらどうしてくれるのか」と言った苦情も行政に届くようになっていました。

 まだ200kgほどの生産量ではありますが、今では宇治の茶問屋や京都市内の百貨店でも取り扱っていただけるようになりました。こうした取り組みから気づいたことは、「つくり手」を支える「支え手」の存在が重要であること、六次産業化は原料を加工することではなく、一次産業を支える仕組みをつくることだということでした。

宇治茶の産地で始めた南山城紅茶プロジェクト

宇治茶の産地で始めた南山城紅茶プロジェクト

ステークホルダーは思ったより幅広い

 私は2011年に東京財団週末学校に参加しました。最終成果物の「私の政策提言」は、「地域で育てる『南山城村の茶』の地域ブランド化」がテーマ。週末学校を通じて訪れた米国オレゴン州ポートランド市や宮城県大崎市「鳴子の米プロジェクト」の調査で得た学びは、そのシステム的な部分を学ぶことではなく、ステークホルダーが直接的な人たちだけでなく間接的な人も含めて広範囲で課題解決に取り組んでおり、行政職員も程よい距離感で関わり、情報提供や意見集約、課題共有する場がつくられているということでした。

 「私の政策提言」のステークホルダーが、見えている範囲の茶農家だけでなく広く存在することに気づいたことで、自らが取り組むことは、それまで目的としていた南山城紅茶をきっかけとした産業振興に留まらず、お茶を軸とした村の暮らしの継続という地域づくりであると考えるようになりました。このことは「南山城村第4次総合計画」「南山城村地域創生総合戦略」に盛り込まれていくことになります。

 行政は多くの“計画”をつくりますが、実行する主体を明確にしないまま、つくること自体が目的となり、結果、何も進まないことがよくあります。南山城村の道の駅の基本計画も「誰がやるのか?」が見えて来ず、私自身もそこを悩んでいた時に訪ねたのが高知県四万十町の道の駅「四万十とおわ」でした。

 そこで、地域商社として四万十川中流域の一次産業を支える仕組みをつくっている株式会社四万十ドラマの畦地履正(あぜち りしょう)社長と出会いました。畦地社長にまず言われたことが「(俺らは)お前らとは立ち位置が違う。行政が見に来て何ができる。生産者を連れて来い」でした。それまでデキル役場職員として周りからもちやほやされていた部分もあったかと思いますが、いきなり本質を突かれた衝撃は今でも鮮明で、次に来た言葉、「お前が腹を括れ!」に背中を押されたのでした。

つくる人をつくる難しさ

 人口減少は課題ではなく現象です。少ない人口の中でも村の暮らしが続けられるように、村に必要とされている機能をどうつくり維持していくか、そしてその主体となる「人」をどうつくるかということが本当の課題であると思います。

 「道の駅でイノシシの肉を焼けばよく流行るで」とか「こんな饅頭をつくればいい」とか様々なアイデアが寄せられます。こうしたアイデアを実現していくためには、そもそも「道の駅は誰の何のためものか」ということを考えながら、新しい仕組みをつくれる人が必要です。そういう「人」をつくったり、その人たちが動けるように環境を整えたりすることが大事だと考えるようになりました。

地元の人にフォーカスした道の駅PRポスター

地元の人にフォーカスした道の駅PRポスター

 ようやく生産者の人たちとの野菜会議も始まりました。来年4月の道の駅オープンの際に、地元の野菜をどう揃えるかを話し合う会議です。その時期に収穫できるものは何か、売り場に何が欲しいのか、1日当たりの売上想定額はいくらかを議題に、行政職員も交え、それぞれがどんな役割を担うのかという対話が生まれた瞬間でした。運営会社として人の動きも少しずつ見えてきたことや、建築工事が始まり道の駅のオープンが具体的に見えてきたこともあって、ようやくこの段階までくることができました。

自分事として考える

 とは言えまだ何も始まっていません。今、南山城村をはじめ全国各地で、それぞれの地域の特徴を活かした自律的で持続的な社会をつくっていけるよう地域創生に取り組んでいます。

 私は南山城村生まれ南山城村育ち、この村で働いてこの村で死んでいく。村のことをすべて自分事として考え、村の人たちが村で暮らし続ける仕組みをつくることが自分に与えられたミッションだと思っています。

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■東京財団週末学校とは
日本は人口減少社会を迎え、私たちが過去に直面したことのない様々な課題が、地域の“現場”で顕在化し始めています。「東京財団週末学校」は、その新たな課題の解決に取り組む全国の市区町村職員を対象とした人材育成プログラムです。このプログラムの目的は、「住民を主体とする地方自治の実現と、地域の潜在力を活かした多様性あるまちづくりのために、自らの頭で考え、行動を起こすことができる人材を育成すること」です。講義、国内外の先進地における調査、グループワーク等を通じ、持続可能なまちづくりのための揺るぎない自治哲学を身につけ、自ら行動を起こす力を培います。
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