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住民の幸福度から見る「より幸せになる地方創生とは?」

第2回 地域に貢献する人は幸福度が高いのか (2017/5/22 PB地方創生幸福度調査検討委員会 事務局)

関連ワード : 地方創生 幸福度 調査 

本連載では、PB地方創生幸福度調査検討委員会(事務局 パイプドビッツ パイプド総研)による全国2万人の地方創生幸福度調査結果の紹介や、委員会の有識者との対談など、「地方創生」と「幸福度」の関係性を読み解いていきます。第2回は、「地域貢献と幸福度」をテーマに、地域貢献意欲および世代間による幸福度の差について検証していきます。

地域に貢献する人は幸福度が高いのか~地域貢献意欲と幸福度~

 本調査では「地域や社会に役立つ自分の存在を感じられることが、自身が今後より幸せに暮らしていくために重要であるか?」という質問項目があり、この項目への回答を基に、地域貢献意欲と幸福度との関係について検証しました(図1)。

 その結果、自身が今後より幸せに暮らしていくために「地域や社会に役立つ自分の存在を感じられること(地域貢献)が重要である」と回答した方(地域貢献意欲のある方)の幸福度が7.19であり、重要でないと回答した方よりも幸福度が高いことが示されました。

図1:地域貢献意欲と幸福度

図1:地域貢献意欲と幸福度

男女の幸福度は地域貢献意欲で違うのか~地域貢献意欲と幸福度×性差~

 次に、図1で示した地域貢献意欲による幸福度の差が、性別によって違いがあるのか検証するため、地域貢献意欲による幸福度について男女別で分けて集計しました(図2)。

 その結果、男女ともに「地域貢献が重要である」と感じている方の幸福度が高いことが示されました。また、地域貢献意欲がある方の男女差(0.11)と比べ、地域貢献意欲のない方の男女差(0.44)が大きいことが示されました。

図2:地域貢献意欲と幸福度(性別)

図2:地域貢献意欲と幸福度(性別)

地域貢献を重視しない男女の幸福度は地域間で違いがあるのか~地域貢献意欲と男女の幸福度×地域差~

 図2において、幸福度が低く男女の差が大きかった「地域貢献が重要でない」と回答したグループについて、さらに地域間(三大都市圏と地方)で分けて幸福度の平均値を算出しました(図3)。

 その結果、三大都市圏の方の男女差が地方の男女差よりも大きいことが示されました。

図3:地域貢献意欲と幸福度(性別・地域別)

図3:地域貢献意欲と幸福度(性別・地域別)

世代間の幸福度は地域貢献意欲で違いがあるのか~地域貢献意欲と幸福度×世代間~

 これまでは、地域貢献意欲による幸福度について、男女別に分けて検証してきました。ここからは、年代別に分け、地域貢献意欲による幸福度が世代間で違うのか、についてみていきます。

 図4は年代別に幸福度の平均値を算出したグラフ、および地域貢献意欲によって分けたグラフの計3本のグラフを作成したものです。

 まずは、世代間で幸福度を比較すると、図4のすべてのグラフについて、年代が上がるほど幸福度が高くなっていることが示されています。次に年代別に地域貢献意欲による幸福度の差についてみてみると、20代の幸福度の差が大きく、60代以上で小さくなっていることが示されています。

図4:地域貢献意欲と幸福度(年代別)

図4:地域貢献意欲と幸福度(年代別)

地域貢献意欲による世代間の幸福度は地域間で差はあるのか~地域貢献意欲と年代別の幸福度×地域間~

 続いて、図4で示したグラフにおいて、さらに地域別に分けて幸福度の平均値を算出しました(図5)。

 その結果、地域貢献意欲によって20代、特に地方の20代において幸福度の差が大きいことが示されています。

図5:地域貢献意欲と幸福度(年代別・地域別)

図5:地域貢献意欲と幸福度(年代別・地域別)

 今回の検証により、(1)地域貢献を重視しない三大都市圏の男性、(2)地域貢献を重視しない地方の20代、に該当する方の幸福度が特に低いことが分かりました。したがって、地方創生事業によって彼らが地域貢献を実感できる場が確立されれば、彼らの幸福度は上がり、より地域の活性化につながるのではないでしょうか。

幸福度を上げる地域貢献活動はどのような分野か~地域での事業・イベントへの参加有無による幸福度の差×事業分野~

 では、地域貢献を実感できるような地方創生事業とはどのようなものがあるのでしょうか。本調査では、地方で行われている事業やイベントに従事したり参加したりしたことがあるかを調査しています。分野ごとに、従事あるいは参加した経験のある回答者の、経験のない回答者との幸福度の違いを比較しました(分野ごとの参加経験のある回答者の割合を記述しています)(図6)。

 その結果、地元への移住促進や移住者への支援、健康増進・ヘルスケア、生涯学習・地域ボランティア、訪日外国人を対象とした接客において、参加経験者の幸福度が高くなっています。

図6:地域の事業・イベントへの参加経験有無による幸福度の上昇(分野別)

図6:地域の事業・イベントへの参加経験有無による幸福度の上昇(分野別)

 
 次回以降では、地方創生事業にかかわる様々な分野と幸福度との違いについてみていきたいと思います。次回となる第3回は、「健康・ヘルスケア」に焦点を当て、健康状態や健康への意識、生活習慣と幸福度について検証していきます。

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■パイプド総研(事務局)
株式会社パイプドビッツにおいて、社会における様々な問題の解決のための政策やICT技術、また関連する先進事例について、社外の専門組織、企業、地方自治体等との協力関係のもと調査研究を進めるとともに、地域や民間組織等具体的な場面での実現・実証を行い、それらの成果を社外に広く発信するために設置している組織です。<パイプド総研とは
■PB地方創生幸福度調査検討委員会(委員長: 政策創造塾塾長/明治学院大学学長特別補佐(戦略担当) 伊藤健二)
パイプド総研で運営している「政策創造塾」において、「地方創生」を幸福度の観点から検証するため、全国2万人以上を対象とした、住民の「幸福度」及び「働き方」「生活意欲」等に関するアンケート調査を実施するために発足した委員会です。リクルートホールディングス、みずほ銀行、NTTデータ経営研究所等の有識者に参加頂き、荒川区、和歌山県に協力頂いています。<委員会メンバー
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調査レポート(PB地方創生幸福度調査)
政策創造塾
関連ワード : 地方創生 幸福度 調査