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30年後の日本が世界でリーダーとなるために (2015/11/7 北原秀治 日本政策学校第2期生)

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 30年後の日本人は、きめ細やかな感性の豊かさと、継承してきた日本古来の伝統文化を携え、世界中の人々に刺激を与える存在となることでしょう。そして世界でもっとも魅力のある国になり、世界を牽引する強い国になるでしょう。そう確信しています。

 『グローバル化』特にここ数年、耳にするようになりました。企業で英語が公用語となったり、学校教育の英語改革を打ち出したり、グローバル化を後押しする為の動きが盛んに行われています。しかしながら、島国日本にいるせいか、この「グローバル化」が他人事のように聞こえることがあります。なぜでしょうか。

 他国からの占領経験を持たない国は、これまでの世界史を顧みても日本だけです。それ故、日本では独自の文化・言語を長い時間を掛け発展させることが可能でした。

 一方、世界に目を向けるとあらゆる国や言語、文化が混淆しています。しかしながら、ここ最近は連日のように耳に入って来る、中国の台頭、中東問題、安保法制、TPPといった問題から、どうやら日本もホモジニアスから脱出する時期が来たのではないかと思う方もいるのではないでしょうか。

(イラストはイメージです)

(イラストはイメージです)

世界から目を向けられない日本

 日本の良いところとして、金融、産業、科学、教育など資源を除くすべてにおいて国内需要でほぼまかなえる事が挙げられるでしょう。

 日本人のパスポート取得率の低さは、まさにその表れと言えます(※1)。実はこのパスポート取得率の話、アメリカでも同じ状況なのです。

 しかしながら、日本とアメリカで決定的に違う点があります。それは、世界の目はアメリカに向いているが、日本には向いていないという事実です。日本人はこの事をしっかりと認識する必要があります。

 日本ではアメリカのニュースは頻繁に流れますが、アメリカでは日本のニュースはほとんど報道されません。それよりも、中東問題や中国に関するニュースの割合が非常に多いのです。人口の比率が違うから?そもそもなぜ世界の目は日本に向かないのでしょうか。

 では、世界に誇れる日本について考えてみましょう。

 マンガでしょうか、アニメでしょうか、それともオタクか果てはアイドルか。

 現在、世界の舞台で多くの日本企業が今この瞬間も戦いを挑んでいます。それと同時に世界のトップから脱落する企業、製品はあとを絶ちません(※2)。特に有力企業上位は中国やアメリカ企業で占められています。

 数年前までは世界第2位だった経済大国の企業がなぜ上位にいないのか? その答えの一つは、かつての高度経済成長期、つまり爆発的な人口増加による国内需要に支えられていたからです。しかし、超高齢化社会、そして人口が減少する日本では、過去の栄光を引きずるばかりです。

 かつては世界中のビジネススクールで日本企業のケーススタディが行われていました。しかし、今は減少する一方だといいます。まさに、世界の目が日本から離れていく瞬間を、私たちは過ごしているのでしょう。

 一方、世界で活躍すると言えば、その功績を誰もが認めた証として表彰されるノーベル賞ですが、日本人受賞者数は2015年では24人(外国籍含む)と多く、特に自然科学部門では世界2位です。

 それでも世界から目を向けられない日本ですが、ではこのノーベル賞受賞の数の理由はどこにあるのでしょうか。

 当然ながら日本には優秀な人材が多いというのが単純明快な答えなのですが、思うに、優秀な人材を育てる環境、つまり古くから続く日本の科学行政のシステムや、大学教育のシステムが、コツコツ歳月かけて研究する職人気質の日本人特性に見合ったもので、そこが他国のものとは別の、非常に優れたシステムであったからと言えます。

 しかし、これも大学法人化、TPP導入、医療の崩壊、福祉の増大による予算の減少など、日本を取り巻くあらゆる状況の変化により、これまでの日本独特のシステムを踏襲することは現実的に難しいと言わざるをえません。

 変化なき環境で、次の30年間、日本人はノーベル賞をこのペースで受賞し続けることができるでしょうか。そして、アジア諸国を中心として世界からは好意的に受け入れられている日本(※3)は、果たしてこの立場を存続させることができるのでしょうか。

危惧するのではなく、作り上げる時がきている

 われわれが30年後の未来に向けて取り組むべきこと、それは人口減少に歯止めを掛けて、GDPを維持することでしょうか。

 30年後を危惧するのではなく、これからの30年を作り上げる時がきています。「世界に目を向けられる日本」になるために、私の考えるこれからの30年でやるべきことをいくつか述べたいと思います。

-「30年後の未来を担う子供達の今を考えること。」

 現在の子供達が成長し、自分の足で世界を踏み始める時のために、これから我々が彼らにしてあげられる事があります。

 インターネットや交通網が発達した今、子供達にもっと世界を見る機会を作ってあげることは、我々がすぐにでも取り掛かれるものです。30年後の彼らは英語という言語をコミュニケーションツールとして使用することになりますが、世界へ羽ばたく為に、基本ツールを獲得するための教育を行う事は、我々の義務であると思います。

-「個人が世界に向けて情報を発信すること。」

 日本国人口1億から世界人口70億へ、発信対象を膨らませましょう。

 日本固有の文化、伝統、習慣、もちろん普通の生活様式だって、世界中で興味を持っている人が大勢います。しかし残念な事に日本人は世界への情報発信が上手くできず、日本の事なんてまだまだ世界では謎の領域なのです。

 先日、海外に住む友人から言われました。「日本の小学生がみんな背負っている高級なバックってどんなもの?非常に興味があってね、今話題になっているのよ」というのです。

 小学生の高級バック。正体はランドセルでした。日本の日用品でさえ世界の人達は知りません。世界発信なんていうと大層な物に聞こえますが、ブログやツイッターで共通言語を使って一歩を踏み出すだけで良いのです。

 現在、日本人の海外留学者数は2004年をピークに減少傾向です(※4)。これではグローバル化どころか鎖国時代に逆戻りです。一方、日本とは対照的に、東南アジア諸国からの欧米諸国への留学者数は急激に増加しています。世界で学ぶ機会を得た若者の比率を考えてみてください。この現象が30年後の世界をどう変えるか、これは皆様のご想像にお任せしたいと思います。

 そして最後に私からの提唱は、まずは世界に拡がること。そして世界で活躍する日本人が繋がっていくことで、世界規模の戦略的ネットワークの構築が可能となります。これにより、世界で起こる情報をいち早く共有し、日本国内へ還元することが可能です。同時に、日本からの情報を世界へ発信するウェブが構築可能となります。

 私は、こうした世界規模の有機的ネットワークは、日本を世界で勝ち抜くグローバル国家にする第一歩だと考えています。

 2012年に全世界研究者ネットワーク(UJAW)は、世界の日本人研究者を繋ぐプラットフォームとして、日本学術振興会ワシントンオフィスサポートのもと誕生しました。自然科学系の分野を中心とした世界各地のコミュニティー、そして一人一人を結ぶ取り組みが始まっています。150年前の開国から初めて日本人研究者が歩み出した、世界規模で繋がることへの、記念すべき一歩です。

 私はUJAWの戦略企画室リーダーとして、世界の日本人研究者そして政府を繋ぐシステムの構築に取り組んでいます。

 世界の情報が日本へ、日本の情報を世界へ。世界規模で繋がる未来は、私達の一歩から生まれます。30年後の日本が世界のリーダーとなるための一歩一歩を共に進めていきましょう。

著者プロフィール
北原秀治(きたはら しゅうじ) 日本政策学校 第2期生
ハーバード大学博士研究員、UJAW(全世界日本人研究者ネットワーク)世話人、BJRF(ボストン日本人研究者交流会)幹事。東京女子医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。癌研究をする傍ら、日本政策学校、ハーバード松下村塾(ボーゲル塾)で政治を学ぶ。専門は解剖組織学。「政治と科学こそ融合すべき」を信念に活動中。
参考文献
※1:旅券統計(外務省)
※2:日本経済新聞 電子版 2012年7月28日号
※3:http://www.upi.com 2015年9月4日号
※4:「日本人の海外留学者数」及び「外国人留学生在籍状況調査」並びに「外国人留学生の10月渡日状況」について(文部科学省)
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