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ITにより加速するオープンガバメント~透明性、市民参加、そして行政の縦割りをなくし産学官連携推進できるか (2014/5/20 清水武彦 一般社団法人Give & Take Plus 代表理事)

 オープンガバメントとは、一般的に、オバマ大統領が就任直後に公表した大統領メモ「透明でオープンな政府」の中で、より一層開かれた政府を目指すために、「政府・政策・情報の透明性(transparency)」「市民参加(participation)」「政府内および官民の連携(collaboration)」という3原則がある。

 オープンガバメント=開かれた政府(行政)という意味では、日本でも(1)情報開示(2)住民自治に基づく住民参加(3)政策決定過程を開示するという議会改革が進められてきた。

2012年に産官学が連携して設立した「オープンデータ流通推進コンソーシアム」のホームページ

2012年に産官学が連携して設立した「オープンデータ流通推進コンソーシアム」のホームページ

海外先行の取り組み
単に情報を示すだけでなく、市民に分かりやすい形で

 アメリカ連邦政府行政管理予算局(OMB)が提供するサイト「Data.gov」では、保有する国勢、環境、経済状況などのデータを提供。単に統計情報として公表するだけではなく、生データやツール、地理情報を提供することで、利用者が加工や分析が容易に行える。もうひとつのOMBが提供するサイトで「IT Dashboad」がある。こちらも連邦政府のIT投資について、コスト、スケジュール、CIO評価(リスク管理、要件管理、請負業者の管理、過去の実績などで評価)という3つの要素で評価した結果が表示されるため、市民が容易に判断することができる。

市民参加させるのではなく、市民が参加したくなる取り組み

 市民の参加を促す取り組みとして、ホワイトハウスが提供するサイトであり、経済問題を中心とした国民の声を大統領に直接届けるため、全米規模の市民集会をインターネット上で開催する「Open for question」が代表的だ。

 英国では以前から政府機関が保有する情報資産の公開を「公共情報登録所(The UK Government Information Resister)」で積極的に行ってきたが、情報資産の再利用・マッシュアップに関するアイデアを一般から募集するコンテストをオンライン上で実施したのが「Show us a better way」。同コンテストでは優勝者に賞金2万ポンド(約300万円)が送られることもあって約500のアイデアが集まり、そのうち5つが実際に採用された。

 一方、高齢化社会の日本の中で、IT、ICTを活用したオープンガバメントを進めるには、政治行政分野に浸透しづらいという課題をクリアしていかなければならない。

政府、自治体、産業界、学術界、政治家たちの取り組み

 日本も統一的にオープンガバメントに取り組む見通しだが、一部については、既に先行的に実施されている。

 オープンデータ流通環境の実現に向けた基盤整備を推進することを目的に産官学が連携して2012年「オープンデータ流通推進コンソーシアム」が設立された。ここに参加する福井県鯖江市では、統計情報、議会関係のみならず、高齢化社会に対応する利用者目線の施設情報、観光情報、文化情報、防災情報などを開示している。

 また、首相官邸をはじめ各省で、動画投稿サイト「YouTube」にチャンネルを持ち、動画配信を行っている。配信されるのは、大臣の会見、政務三役会議や委員会などの会議の模様、政策の説明など多岐に渡る。見るだけのものは、初心者にとってはITの煩雑な操作をしなくていい。

 加えて、短い文章で表現するTwitterも、パブリックコメントや意見の募集などに活用。多くの政治家も個人的にTwitterをコミュニケーションや議論の手段として利用しだしている。

オープンガバメントの本丸は

 日本のオープンガバメントは、傾向として「透明性」と「市民参加」に留まっていて、海外諸国と比較すると、「行政内および官民の横のつながり」が弱い。

 一方、米国の「Business.gov」や韓国の「国民直訴庫」では、「各省庁に分散している情報を1カ所に集約して提供する」、あるいは「提案や嘆願を1カ所で受け付け、適切な省庁に割り当てる」という国民の目線で利便性を高めている。つまり、利用者の利便性を高めることが、最終的には「市民参加」を促すことにもつながる。

日本のオープンガバメントの夜明け

 オープンガバメントへの挑戦は、IT、ICTの活用により、高度に高めてきた各界の技術、スキル、ネットワーク等を公益のために改めて再編しなおすことであり、これまで築き上げてきた縦割り行政を取り払い、「行政内および官民の横のつながり」を促すことでもある。

 これまでの行政のオープンデータ=透明性の確保によって、市民がその情報をきちんと受け取れるよう利用者目線で一歩前に進める。そうなれば、市民参加も、単に参加してもらうという形から、市民から参加したくなる仕組みができてくる。その上で、行政内の縦割りを超えて、あるいは産学官連携をしながら、市民が選ぶ、より効率的、効果的な社会利益の追求が、日本流のオープンガバメントの夜明けぜよ。

清水武彦氏清水武彦(しみず たけひこ)一般社団法人Give & Take Plus 代表理事
元市役所職員。シンガポール国立大学リークワンユー公共政策大学院行政学修士課程卒業。市役所で、環境、社会教育、学校教育、福祉、まちづくり部門での勤務経験を生かして、ケニア共和国にて青年海外協力隊でコミュニティ開発を行う。その後、経営視点を学ぶため、中小企業の海外進出支援を現地でサポート。地域経済とコミュニティ自立循環させるための活動を行っている。
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