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声なき声を世界に「ふくしま会議2011」開催レポート

「ふくしま会議」 開催までの経緯と今後の展開

−−そもそも被災地復興に関わろうとお考えになったきっかけは。

今年4月中旬に弊社のグローバルCEOが米国より来日し、フライシュマン・ヒラード・ジャパンとして東北・日本の復興のために何ができるか考えようという話をしました。
そのとき、日本の声が世界に届いていないことに対して、何かしらのアクションをせねばと考え抜いたというのがそもそもの始まりでした。

−−開催までの経緯はどのようなものでしたか。

昨年より親交のあった、エネルギーシステムなどを研究されている国立環境研究所の藤野純一氏と話をしましたところ、国の復興構想会議の委員である赤坂憲雄氏(学習院大学教授)を紹介され、そこを皮切りに、東北の復興や都市計画について研究・活動している方々とつながっていきました。
この出会いが5月下旬で、勉強会は6月~7月に行っていました。

−−前身の勉強会のテーマについて。

最初は東京を中心に、再生可能エネルギーに関する勉強会を重ねていました。 福島の自然エネルギー特区構想が最も大きなテーマであり、県や国の復興会議に対して働きかけていくことを目的に議論をしました。 そのような問題意識を持って、福島の人々と「ふくしま会議」の構想について話をしたところ、むしろ除染、医療対応、子どもの安全、食の安全といった人々の生活に密着した課題に対するニーズが大きいことに気付かされ、また、ある種、東京という外部の人間に対する反発のようなものも感じました。
そこでの教訓をもとに、地元の人々と一緒になって、会議の形態やテーマ・内容を深めていかなくてはと強く感じました。

−−福島の方とお話をして、感じられたことは。

福島の人々と話をする中で、地域の中でも「分断」されていることを強く感じました。 県内をみても、浜通り、中通り、会津と地域ごとに被害状況が全く異なり、それによって人々の気持ちまで分断されているようだと地元の方々も話していたのです。
だから、まず福島の人々が一緒に集まれる場を作らなければという思いが強くありました。
それに加えて、国内外の有識者や経営者などと話をする中で、福島の声が県外、海外に聞こえてこないという危機感を募らせていたこともあり、国内外にその声を発信する場としても機能させなければならないと考えました。

−−「福島の人々が一緒に集まれる場」とは。

地元ではすでに多くの取り組みが地域レベルで進んでおり、まさにコミュニティ単位での「ふくしま会議」が繰り広げられていました。 例えば、佐藤健太さんという若者のツイッターから生まれた「負げねど飯舘」や、地元クリーニング店主の高橋美加子さんが中心となって南相馬で原発問題を訴える活動があります。
しかし、そういった個々の活動はありつつも、まだ福島全体が一緒になって語り合う場がなかったという状況を受け、「ふくしま会議」は皆が集り、語り合い、声なき声を世界に発信していく場にしようというコンセプトが、そのとき固まりました。

−−「ふくしま会議」の今後について。

今回の「ふくしま会議」には、3日間を通じて県内外から延べ1,000人以上が参加し、福島の人々の声や思いに耳を傾ける場づくりに少しでも貢献できたのではないかと思います。
この取り組みは、どんな形であれ、「継続していくこと」が絶対に必要だと考えています。
「ふくしまの声」に耳を傾けることが、日本のみならず、世界にとって重要なこと。
ここでの経験を世界に届けることが日本の責務ではないでしょうか。
20年、30年と続けていくための持続可能な方法を皆と模索しながら、次の一歩につなげたいと思っています。

田中 愼一(たなか・しんいち)
ふくしま会議 運営委員/
フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。ワシントン事務所にて米国政府議会・マスコミ対策を担当した後、1985年に初代デトロイト事務所長として北米地域における同社の広報戦略立案・展開の責任者に就任。
1994年、セガエンタープライゼス株式会社に転じ、海外オペレーション部長等を歴任。
1997年、世界最大のコミュニケーション・コンサルティング・ファームであるフライシュマン・ヒラード(本社:米国セントルイス)に参画、日本法人を立ち上げ、代表取締役に就任。
企業や組織の事業戦略実現を支える戦略コミュニケーション®分野の第一人者として、多様化するビジネス課題に直面する数多くの日系外資系企業・組織にコンサルティング・サービスを提供。
近著に『オバマ現象のカラクリ-共感の戦略コミュニケーション®』(アスキー新書)など。

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