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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】

もう一度言う。主権者との情報共有を!(2013/01/10 早大マニフェスト研究所)

政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。マニフェストをテーマとした連載「マニフェスト学校~政治山出張講座~」では、議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考えていきます。

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 「マニフェスト」という単語を日本語に言い換えれば、国政選挙であれば政権奪取したときの公約、すなわち「政権公約」と訳すことができるでしょう。ということは、地方分権時代における地方政治でのローカル・マニフェストは、「地域経営計画書」とでも呼べるでしょうか。すなわち、国政や地方政治においてマニフェストは、候補者が選挙の際に主権者と交わす“契約書”になるものです。

 選挙時の公約は守られなければなりません。そしてその公約は、候補者と主権者がどういう約束をするのか、具体的で分かりやすいほうがよいです。具体的な約束になればなるほど、選挙後に主権者がチェックができるからです。ですから、選挙後も検証可能なものがマニフェストと呼べるでしょう。これまで出された、キャッチフレーズばかりで中身が曖昧な公約とは、そこが決定的に違います。

2012年の衆院選で各党が提示した“契約書” 2012年の衆院選で各党が提示した“契約書”

 2012年12月16日の総選挙を振り返ってみると、すべての政党の公約がマニフェスト要件を十分満たしている、とは残念ながら言えませんでした(詳しくは早稲田大学マニフェスト研究所「各政党マニフェストのできばえチェック」をご参照ください)。

 今回、自由民主党が圧倒的に議席を獲得し、公明党との連携により盤石な体制となりましたが、政策の具体的な中身については意見も分かれているところが多くあります。また、選挙時のマニフェスト(あるいは公約集)には具体的に書かれていなかったため、主権者の立場では確認できない政策もあります。

 2012年末、自民党政権が始まりました。政権与党は、選挙時に主権者と約束した政策の具体的な中身を明らかにするとともに行程表を作成し、それが実行できる組織編成を行うことに全力で取り組まなければなりません。そして政権の座に着いたら、これらの情報を主権者と直ちに共有することこそ肝要です。

 民主党政権がつまずいた最初の要因は、選挙時のマニフェストの出来が今ひとつだったことに重ね、政権奪取後、行程表を作成しなかったことや、実行体制を編成しなかったことが挙げられます。そのため、トップがコントロールできず各省庁任せ(大臣任せ)になり、体系立てて政策実行ができませんでした。新政権には、こうした反省点を繰り返すことなく着実に政策を実行し、課題を解決して「新しい日本」をつくる成長戦略に着手していただきたいと考えています。

 2012年12月25日には、民主党の新しい代表に海江田万里氏が選出されました。この党代表選挙は党内事情を優先し、国民に開かれていない「従来型」の形式的な選挙になっていたことが残念です。総選挙で大敗した大きな要因の1つに、これまでの政治手法に対して国民が不信感を持っていたことを理解していただきたかったと思います。

 今回の総選挙では、党のホームページやメディアを通じて主権者へ訴えかける工夫が随所で見られ、各党の「政策を届けようとする熱意」は伝わってきました。しかし、選挙が終わったから熱意が冷めてしまってはよくありません。各党や国会議員の仕事はこれからが本番ですので、主権者へ情報を伝える努力を選挙時以上にお願いしたいところです。また、数で圧倒的有利になった自民党は、数の力で国会審議を進めるのでなく、主権者と情報共有を丁寧に行いながら、体系立てて政策を実行していただくことに期待したいと思います。

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