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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第9回 議会改革先進事例の紹介(3)
住民に「関所」を設けない議会:町田市議会
(2012/08/30 早大マニフェスト研究所)

 政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第9回は「議会改革先進事例の紹介(3) 住民に「関所」を設けない議会:町田市議会」をお届けします。

「開かれた議会」へ向けた取り組み

 議会改革に取り組んでいる多くの議会では、「開かれた議会」という文言があらゆる場面で登場します。「誰にとって開かれるのですか?」と問えば、「住民にとって」と回答が返ってきます。次いで、「どの程度まで開かれるのですか?」と聞けば、「基本的にすべてオープン」とおっしゃいます。議会改革については、議会の情報を住民へ伝える手段や、住民の意見を集約するものとして、本会議や委員会のインターネット中継、議会報告会の開催、議会広報の改訂など、さまざまに工夫された取り組みが盛んに行われています。

名乗らなければ傍聴できない議会

 シンプルな住民参加の手法として、「議会傍聴」があります。「住民が議会を傍聴する」という、「開かれた議会」の第一歩のような手法ですが、実際に住民が傍聴しようとすると、議場の入口で氏名や住所などを書かなくてはならない議会が大半です。

町田市議会では、氏名などを書かずに、受付で傍聴券と資料などがもらえる町田市議会では、氏名などを書かずに、受付で傍聴券と資料などがもらえる(早大マニ研提供)

 「住民に開かれた議会のはずなのに、氏名や住所をどうして書かせるのですか」と尋ねると、議員や事務局職員からも「なぜだろう?」と明確な回答は返ってきません。しかも、「名前を書かせて、誰が来たか調べたり、記録を取っているのですか?」と尋ねても、「特にありません」と言います。極端な話ですが、筆者がまったく縁もゆかりもない地の議会へ傍聴に行って、その地の住所を適当に書いても傍聴できるのです。誰もチェックはしていないですから。そうであれば、議会を傍聴しに来た方に氏名や住所を書かせることに、何の意味があるのでしょうか? 議会改革に取り組む方々には、こうした住民にとっての「関所」を設けることに、疑問を持つ着眼点がほしいですね。

 東京都町田市議会では、このような「関所」を撤廃し、誰でも自由に議会や委員会を傍聴することができます。

 ときどき「氏名などを書いてもらうのは暴漢があるかもしれないから」と回答する議会がありますが、それならば、その場で身分証明を確認するなど、きちんとチェックしなければならないのではないでしょうか。また、そもそも暴漢への対応は、「開かれた議会」とは次元の違う話です。

 このように、住民に開かれた議会を目指して経費をかけ、情報発信手段を整えるなどの取り組みは熱心なのですが、そもそも主権者である住民が議会を傍聴するのに名乗らなければならない点については、議会の皆様はお気づきになっていないのが現状です。

「関所」がある理由は、約50年前に決められた議会運用規定

 議会を運営するために、さまざまな取り決めを記したものがあります。それが「議会運用規定」などの名称で呼ばれている規定や規約です。実は、これらの取り決めは、昭和30年代や40年代に決められたもので、これまでほとんど修正や改正されず、今もずっと当時の進め方で議会運営が行われています。

 議員も「議会の進め方はこんなものだ」と、特に疑問を持たずに議会活動を行っています。議会に不慣れな新人議員も、当選後は先輩議員や事務局職員から「この場合はこうです」という方程式を説明されますから、「議会はこんなものだ」と思い込んでしまうのですね。

 昭和30~40年代頃と現代では、住民の生活環境も議会と住民の関係性も大きく変化していますが、この規約や規定などは変化に対応せず、また、誰も疑問を持たずに受け継がれてきている「伝統」なのです。だから、職員も「議場の入り口では、氏名などを書いてもらうものだ」と、それ自体に疑問を持たず、住民に「関所」を設けてしまっているのが実情です。

 議会改革は、「なんのために」「誰のために」、これまでの議会のあり方を変えていくのかを考えて実行に移していかなければなりません。もちろん、インターネットを活用した情報発信なども積極的に導入していく必要はあります。ですが、まずは自分たちの議会がどのような規定や規約に則って運営しているのかを確認し、「生きた化石」とも言うべき現行の議会運用規定を修正し、自らの足元をきちんと整えることこそが重要ではないでしょうか。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
町田市議会公式サイト
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
週刊 地方議員
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