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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第8回 議会改革先進事例の紹介(2)
住民が議会へプレゼンテーション:町田市議会
(2012/08/16 早大マニフェスト研究所)

 政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第8回は「議会改革先進事例の紹介(2) 住民が議会へプレゼンテーション:町田市議会」をお届けします。

住民が意見を届ける機会とは

 通常、住民が議会へ意見を届ける手法には、(1)電話やメール、(2)知り合いの議員へ相談する、(3)直接議会へ話に行く、(4)議会報告会などの際に発言する、といったもののほかに、議会には(5)陳情書を提出する、(6)請願書を提出するなどの方法も用意されています。

 中でも請願書の提出については他の手法よりも議会が課題として取り上げる可能性が高い手法だと言われています。その理由は、陳情が住民有志で意見書を作成し議会へ提出するのに対し、請願はそれに加えて最低でも1人の議員が名を連ねていなければならないためです。議員が意見書へ賛同するということは、議会として取り上げるべき課題であると認識しているということ。したがって、議会の委員会で特に注視されるのが請願という手法です。

住民が議員に対してプレゼンテーション

町田市議会の委員会の様子。左手前がプレゼン席にいる住民で、奥の左右が議員町田市議会の委員会の様子。左手前がプレゼン席にいる住民で、奥の左右が議員(早大マニ研提供)。

 東京都町田市議会は他の議会に比べて圧倒的に請願書が提出される数が多い議会です。その大きな要因の一つとして考えられることは、議会の委員会室に住民がプレゼンテーションを行える場をつくっていることです。

 手順としては、まず住民から提出された請願書の内容を議会事務局が確認します。つぎに内容に関係する委員会へ住民に出席してもらい、議員の前で自らプレゼンテーションしてもらいます。請願内容について、住民はその場で議員からの質問を受け回答を説明するのです。しばらく住民と議員との意見交換を行ったあと、委員会として請願内容を課題として取り上げるかどうか議論をして決定します。

すべての議論がオープン

 住民がプレゼンテーションを行い議員との質疑応答を行ったあと、それを受けて委員会として意見を採択するかどうかの議論に移りますが、この一部始終はプレゼンテーションした住民の目の前で繰り広げられます。また、委員会は傍聴が可能ですから、すべての議論がオープンになっています。筆者が傍聴した委員会では、3組の住民の方によるプレゼンテーションが行われましたが、そのうち1組の提案は却下されました。議員同士が議論する様子も目の前で繰り広げられることから、却下された理由もよくわかりました。

 このように、町田市議会は、住民が議会へ意見を届ける機会を制度として整え、そのすべてを公開しています。ですから、公平性も確保されていますし、住民と議会とが対等の立場で意見交換できる土壌が構築されていますので、他の議会に比べて請願書の提出件数が多いのです。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
町田市議会公式サイト
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
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