【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第7回 議会改革先進事例の紹介(1)
ユーストリーム、スマートフォンを利用する流山市議会(2012/08/02 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第7回は「議会改革先進事例の紹介(1) ユーストリーム、スマートフォンを利用する流山市議会」をお届けします。
ユーストリームで委員会の動画を配信
ITの本格的な機器を導入する場合、そのコストも大きくなり、そのことを理由にITに不慣れな議員から「議会のIT化は時期尚早」などの発言が聞かれることともあります。しかし千葉県流山市議会では、2009年4月から委員会をライブ中継していますが、ユーストリームを使用して支出を極力ゼロに近づけています。今では、流山市議会の事例をもとにユーストリーム配信を行う議会も増え始めていますが、ユーストリーム配信の元祖は流山市議会の取り組みです。
スマートフォン使用でYES or NOを表示
2010年3月の定例議会からは、議案に対する賛成・否決の決断を議員1人ひとりが自らの議席でスマートフォンを使用して行っています。結果は議場内にあるスクリーンへ映されますので、どの議員が賛成あるいは否決したか瞬時に分かる仕組みです。また、同日中にその結果が議会のホームページへ掲載されます。こちらも全国初です。
流山市議会ではIT化がなぜ進む?その工夫とは
流山市議会では、市民に開かれた議会を目指す際に重要なのは、市民が議会活動をどこでどのように知ることができるかという議会活動の可視化についての環境整備であると考えています。IT普及率が伸び、若い世代が多く居住する流山市では、従来のアナログ的な議会活動の改革もさることながら、これらユーストリーム中継や賛否表明へのスマートフォン利用のように、これまで他の議会がほとんど手を付けてこなかった議会のデジタル化にも取り組み始めたのです。
2009年9月定例議会で「市民に開かれた議会の実現に向けて更なる情報発信と情報通信技術の推進を求める決議」を可決し、その目的を達成するためのICT推進計画書を策定しました。この計画書をもとに、現在の取り組みがあります。計画書の作成過程で、大学教授や専門研究員等をユーストリーム、ツイッター、スカイプといったITツールを駆使してバーチャル参加させるなどの工夫をしてきました。また、委員会ではツイッターの公式アカウントを取得して、中継を視聴した方から委員会に関する意見や感想もいただくようにし、それら意見を参考に委員会の進行などに修正を加えながら進めています。
これまでの連載の中で、全国の議会でIT化が遅れているという事例をご紹介しました。ITに不慣れな議員や事務局スタッフが大きな阻害要因となっているとしましたが、このようなITに不慣れな方々を少しずつ慣らしていく助走期間をうまく設けたことが、流山市議会の成功要因の1つだと考えられます。助走期間中の成果はそうしたITに不慣れな方がITに慣れたということを成果とし、いつのまにかその人たちが政策の中心となって推進していく立場を徐々に作りあげていくことが、抵抗の多い新しい事業を進めていくコツと言えそうです。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。