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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第5回 マニ研調査から読み解く議会の現状(2) 周回遅れの情報発信(2012/07/05 早大マニフェスト研究所)

 政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第5回は「マニ研調査から読み解く議会の現状(2) 周回遅れの情報発信」をお届けします。

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 前回、議会の情報発信の現状について、早稲田大学マニフェスト研究所の調査をもとにご説明しました。今回は、議会の情報発信のスピードに着目し、現状をひもといていきます。

議会の議事録をホームページに掲載するまでに3カ月かかっている

議事録公表までにかかる日数表議事録公表までにかかる日数(早大マニ研提供)

 1つの議会が終了し、その議事録が議会のホームページなどへ掲載されるまでに、3カ月かかるケースが少なくありません。当研究所の調査(『2011年議会改革度調査』)によると、議会終了後から議事録掲載まで2~3カ月要している議会は全体の89%を占めています(右グラフを参照:緑と紫の部分)。また、議会が作成している「議会だより」という広報誌も四半期に1度しか作成しないことが多いため、住民が議会のありようを知る機会は、議会終了後からかなり時間が経ってからになります。

 普通の住民感覚からすれば「遅い」と感じられる方が多いと思いますが、このことを議会側に問うと、「役所や公民館などに設置されている公の掲示板へ掲載している議決情報をご覧ください」とこれまで回答されました。街には公の掲示板が複数個所に設置されており、議会でどのような議題が議論されて決定したのかを、議会終了日の翌日に掲示するようになっています。すなわち、「知りたい方はその掲示板のところへ見に行きなさい」という意味です。これは、主権者である住民に対して重要な事案の情報を積極的に届けるという姿勢が希薄だということをよく表しています。議会の常識は、住民感覚とかい離していると言わざるを得ません。

よりよい議事録掲載には私たちが議事録を求める姿勢も必要

 議会の議事録は、当日に録音された音声テープを文字化する必要がありますが、その作業は外部へ発注することが多いです。外部委託先から文字化されて戻ってくるのが約2カ月後、その議事録内容を確認してからホームページなどへ掲載するためにさらに数日必要ですので、結果として掲載までに3カ月ほどかかっています。以前、本記事でも「議会は通常、6月、9月、12月、3月に開催される」と書きましたが、3カ月も議事録作成にかかっていると、1つの議会が終了して次の議会が始まる直前に、前回の議会の議事録が完成するという事になります。

 もっと早く議事録を完成させるにはどうすればいいでしょうか。効率の良い事務手法へと改善し、運営面を見直すなど課題が多いと思いますが、最も効果的なのは、「議事録を社会(住民)が求めていく」という姿勢だと思います。

 選挙で熱心に投票に行き政治へ参画する方でも、選挙が終わったあとの4年間は、ほぼ政治に無関心になります。当選した政治家への「おまかせ政治」になってしまっていると言えます。大きな問題やテーマ性がない限りは新聞やテレビなどでも取り上げられませんので、関心事は日常の生活が優先となります。ですから、自分たちの地域に関連していることを執行部や議会がどのようにものごとを決定しているのか気に留めることもあまりないのではないでしょうか。しかし、私たちの日常生活に関わることは議会で決められていますので、議会を見ていれば自分たちの生活環境の現状や将来が見えてきます。また、情報を知るように努めていれば、疑問点に気が付き、議会へ意見を言うことだってできるのです。

 議事録を隅々まで目を通すことはなかなか困難です。だからこそ、議会側は議事内容を住民へより早く、わかりやすく知らせる工夫が必要です。また、住民側も積極的に議会の情報を知るように心がけていただく。このように、住民、議会両者の歩み寄りが地域をよりよくしていくことにつながるのではないでしょうか。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。

関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)

週刊 地方議員
第4回 マニ研調査から読み解く議会の現状(1)ブラックボックス化
第3回 議員は日ごろ何してる?~「見えづらい議会活動」が変わっていく
第2回 議会ってなにするところ?~すべては議会で決まっている
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