【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第4回 マニ研調査から読み解く議会の現状(1)ブラックボックス化(2012/06/21 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第4回は「マニ研調査から読み解く議会の現状(1)ブラックボックス化」をお届けします。
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前回、「住民から見えづらい議会」を変えようという流山市議会などの動きをご紹介しました。では、実際に議会の情報公開はどれくらい進んでいるのでしょうか。私たち早稲田大学マニフェスト研究所の調査から、現状と課題をひもといていきます。
積極的な情報公開には程遠い現状
議会は、議場という特別な場所で閉鎖的に開催されるため、住民にとっては「見えづらく」「遠い」存在だと思われがちです。このため、自治体の議会は、より多くの住民へ議会の情報を届ける手法の1つとして、議事録をホームページ等へ掲載しています。しかし、この議事録の取り扱い1つを見ても、積極的に住民へ公開しようという姿勢はまだまだ低調であることが、当研究所の調査で明らかになりました(2010年8月~12月に1797議会を対象にアンケート調査を実施。1367議会より回答)。
本調査によると、本会議の議事録公開の状況は、以下のように概ね積極的に行われているように見えます。
【本会議の議事録公開の状況】
紙媒体でのみ公開‥‥‥‥‥‥‥207団体(15%)
インターネット上でのみ公開‥‥207団体(15%)
紙とインターネット両方で公開‥733団体(54%)
公開請求があった場合のみ公開‥211団体(15%)
非公開‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9団体(1%)
しかし、本会議に至るまでには常任委員会などで詳細な議論を行っており、その常任委員会の議事録の公開状況では一転、公開に対し消極的になっています。
【常任委員会の議事録の公開状況】
紙媒体でのみ公開‥‥‥‥‥‥‥137団体(10%)
インターネット上でのみ公開‥‥105団体(8%)
紙とインターネット両方で公開‥167団体(12%)
公開請求があった場合のみ公開‥823団体(60%)
非公開‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥135団体(10%)
本会議を傍聴やインターネット中継などで議会を一度でもご覧になった方はイメージできるかと思いますが、本会議で議長が「○○議案に対してご異議ございますか?」と議員に問えば、議員から「異議なし」と声が返ってくることが多いのです。実は、本会議では議員が1つの議案に対してYESかNOの意思表示をする場面が大半で、本会議の場で深く議論されることはあまりありません。とはいえ、議員も簡単に答えを出しているのではなく、十分な議論を経ています。議論する場が、主に委員会なのです。住民にとって、どのような議論を経て結論に至ったのかを知ることは非常に重要なことです。その結論までの過程が、求めなければ情報が出てこない「非公開」なのは、やはり大問題です。
その他の公開状況については、議会改革度調査2010 結果報告2(pdfファイル)をご覧ください。
議会の責務は、住民が関心のある個所を確認できる環境を整えること
議会の情報公開に対する態度ですが、常任委員会の議事録の公開について「公開請求があった場合のみ公開」と回答した議会が60%という調査結果からわかるとおり、「聞かれたら教えます」という傾向にあります。言い換えれば、「聞かれるまで自分からは公開しない」という非常に内向きの発想です。
前述のとおり、議会は議場という建物の中で開催されているため、壁で覆われた中の様子は普通の住民の目が行き届きにくくなっています。しかも、議会は通常、平日の昼間に開催されることが多いため、1日中議場に傍聴へ行ける人を除いて、多くの方は議会を見ることはできません。近年、ケーブルテレビやインターネットでの配信を行う議会が増加していますが、何時間も画面に張り付いて見られるほど時間に余裕がある方は少ないでしょう。すなわち、住民が関心のある個所を短時間で確認できる環境を、あらゆる手段を用いて整えることは議会の責務と言えるのです。
早稲田大学マニフェスト研究所は、2009年より全国の議会の活動状況を「情報公開」「住民参加」「議会機能強化」の3つの視点で調査してきました。今後、本調査結果で明らかになった議会の現状をお伝えするとともに、皆さんと一緒に議会の課題について考えていきたいと思います。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
週刊 地方議員
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