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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第2回 議会ってなにするところ?~すべては議会で決まっている(2012/05/24 早大マニフェスト研究所)

 政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第2回は「議会ってなにするところ?~すべては議会で決まっている」をお届けします。

自治体の不祥事、財政悪化……厳しい視線が議会へ向いた

住民投票の結果、議会解散・出直し選挙が行われた2011年3月の名古屋市議選(マニ研提供)住民投票の結果、議会解散・出直し選挙が行われた
2011年3月の名古屋市議選(マニ研提供)

 国会は、国民が選んだ議員が首相を指名して内閣を組織するのに対し、地方自治体では、議員、知事・市区町村長(首長)ともに直接選挙で選びます。この地方自治体の統治システムを「二元代表制」と呼びます。地方自治体は、議会で決めたことを行う機関です。議員も首長も同じ有権者から選ばれ、それぞれが独立し、対等な立場で果たす責任があるのですが、これまでは圧倒的に権力が首長に集中していました。政策を実行する予算や職員、情報はすべて首長側にあり、道路や施設などのハード事業、教育や医療などのソフト事業を行うのも首長側でした。

 この体制のもとでは、議員は首長に近い存在であるほうが住民の要望を実現しやすかったのです。実現した要望を自分の手柄として有権者にアピールし、選挙を有利にすすめることができました。ですから、これまでは、首長の与党として活動することが選挙に勝つための近道だったと言えます。しかし、そのようなことが続くと、首長が提案する議案に対して議員は「NO」と言えなくなり、首長の提案が議会で否決されることはほぼゼロでした。このような現象が、全国のどこでも当然のごとく起こっていたのです。それでは、議会の存在意義があるとは言えません。

 日本は戦後、高度経済成長期から世界中が驚くほどの復興と成長を遂げました。しかし、バブルが崩壊し経済が停滞期に入るころ、自治体でもさまざまな不祥事が噴出しました。公金を横領したり、汚職で逮捕されたりするようなことが、次々に表に出始めたのです。同時に、国や自治体の財政も苦しくなり、それまでのように潤沢な資金がなくなって、やりくりに困る自治体も出てきました。その有名な例が、財政破たんした北海道の夕張市です。当初、こうした不祥事や財政悪化を招いた要因は「首長や自治体職員にある」と住民は批判していましたが、次第に「議会はいったいどこをチェックしていたのか」と、議会にも厳しい視線が向けられるようになったのです。

議会には大きな権限がある、それを自覚すること

 それでは、地方議会はどのような権限が与えられているのでしょう。それは、地方自治法第96条に示されています。議会は、自治体に必要な予算を定めたり、その予算が適切に使われたかどうかをチェックしたり、必要であれば自ら条例をつくることもできます。一方、首長の権限は、自治体がスムーズに運営できるよう統括し、議会で認められた事業が適切に実施されるよう経営・管理することです(詳細は文末参照)。

 首長が1人なのに対し、議会は複数の議員の集合体です。これは、住民の多様な意見を行政に反映するためであり、集めた意見や課題を議会全体で議論し、課題解決のための政策や条例をつくりだすことを目的としています。そして、首長側に執行させ、適切に実行しているかチェックするところが議会なのです。本来、議会には非常に大きな権限があります。それを自覚することこそが、「議会改革の最初の一歩」なのです。

(参考資料)

地方自治法第96条

  • 一 条例を設け又は改廃すること。
  • 二 予算を定めること。
  • 三 決算を認定すること。
  • 四 法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
  • 五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
  • 六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。
  • 七 不動産を信託すること。
  • 八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
  • 九 負担付きの寄附又は贈与を受けること。
  • 十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること。
  • 十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること。
  • 十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
  • 十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。
  • 十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整に関すること。
  • 十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項
  • (2) 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。

地方自治法第147条

  • 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。

地方自治法第148条

  • 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。

地方自治法第149条

  • 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
  • 一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
  • 二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
  • 三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
  • 四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
  • 五 会計を監督すること。
  • 六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
  • 七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
  • 八 証書及び公文書類を保管すること。
  • 九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。

地方自治法第154条

  • 普通地方公共団体の長は、その補助機関である職員を指揮監督する。
■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・ マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。

関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)

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