【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第1回 なんだか議会が動きはじめた?(2012/05/10 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。 「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第1回は「なんだか議会が動きはじめた?」をお届けします。
議員もボーっとしてはいられない
議会活動を改める議会が、いま、急増しています。
資料やプロジェクターを使って説明する「議会報告会」
の様子。議会改革の一環(所沢市議会=マニ研提供)
「選挙の時にしか議員を見たことがない」「議員はなにをやっているのかわからない」という住民の声をよく聞きます。そこからさらに、「だから議員はもっと給料(報酬)や人数を減らすべき」「議員は本当に必要なのか」という声も聞かれます。
最近では、名古屋の河村たかし市長や大阪の橋下徹市長のように、首長側が議会改革を訴えてたくさんの支持や人気を集める状況もでてきています。議員は当選してはじめて仕事ができますから、世論や有権者の声にはとくに敏感です。そうしたこともあり、議会活動を改める議会が増えています。
議会に変化が求められている背景には、3つの要因があります。
1つ目は、住民の声です。前述したように「議会でなにをやっているのかわからない。税金で支払われている給料(報酬)の分、議員はきちんと働いているのか」という声が高まりつつあることです。
2つ目は、制度が変わったことです。国では、自民党から民主党に政権が移りましたが、市町村などの基礎自治体に権限と責任を委譲する、地方分権の流れは法律の改正とともに一貫して進んでいます。これからは、それぞれの自治体で政策も財源も決めていかなくてはなりません。
3つ目は、改革派首長の出現です。首長に触発されて、議会も存在意義を高められるよう、改革をはじめるパターンです。
このような背景から、議員もボーっとしてはいられず、「議会」そのものの役割や意義をあらためて見直す取り組みが活発化しているのです。
議会改革“優等生”も50点
では、実際に、議会改革は進んでいるのでしょうか。早稲田大学マニフェスト研究所では、2009年から全国の地方議会の改革度調査を行ってきました。「情報公開」「住民参加」「議会機能強化」の3つのカテゴリーで評価し、全国の上位ランキングをホームページ上で公開(参照)しています。毎年、調査をしていると、議会改革を進めている議会と、そうでない議会とでは、どんどん差が広がっています。
しかし、議会改革に取り組んでいる議会といっても、当研究所の想定する理想像と比較すると、50~60点くらいに位置しています。しかも、一定水準を超えている議会はごく少数ですから、全国の地方議会の多くは、まだほとんど議会改革を実施していないのが現状だと言えます。
この連載では、当研究所の調査結果をもとに、議会改革の先進事例を紹介しながら、議会本来の役割について、皆さんと一緒に学び合える場にしたいと考えています。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・ マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。