【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第15回 議会の位置から「開かれる」べし (2012/12/20 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第15回は「議会の位置から「開かれる」べし」をお届けします。
開かれた議会を目指すが……
衆院選の期間中、メディアでは連日、総選挙へ向けた各党の動きなどが報道されていました。にぎわっていた一方、国政に対する国民の政治不信や不満は高まっており、各メディアが実施した世論調査でも「投票する政党を決めていない」とした層が圧倒的に高い数値となっていました。
一方、地方政治は住民からの信頼を回復しようと、国政よりもいち早く行政改革や議会改革などに取り組んでおり、地方から始まった1つの変革事例が、全国へ瞬く間に広がっているケースがたくさんあります。その1つに「議会基本条例の制定」が挙げられます。
議会基本条例は、2006年に北海道栗山町議会が全国の議会で初めて制定したのを皮切りに、今では300議会を超える地方議会で制定されており、検討中の議会を含めると相当数に上ります。これら議会基本条例には、とあるキーワードが必ず盛り込まれています。それは、「開かれた議会」という言葉です。
開かれた議会とは、住民に対して議会が情報を公開し、説明を行い、住民からも意見が自由に言え、議会と意見交換できるなどの状態を指します。いま、地方議会では開かれた議会を目指し、これまでにはなかったさまざまな活動が展開されているのです(これまでの『週刊 地方議員』を参照)。
ところで、筆者はいつも開かれた議会と聞くと、疑問に思うことがあります。それは、議場の「位置」です。通常ですと議場は役所の2~4階にあり、正面玄関から入って最も奥まったところにあります。しかも、ほとんど窓のない壁で閉ざされており、どこか異様な空間となっています。さらに、住民が傍聴しに行っても、氏名や住所を書かなければ傍聴できないのです。
インターネットを活用した動画配信や、市民への議会報告会を積極的に取り組む姿勢は大変喜ばしいことですが、そもそも議場のあり方について、考え方の根本から議論をすることこそ重要ではないでしょうか。
議場が役所の1階に
地方自治法で議会は、「住民から選ばれた議員たちが話し合いを行い、結論を出していく組織」と定義されています。その議会で決定したことを首長以下の執行部が実施していくこととなっており、執行部よりも議会の方がより住民に身近な存在なはずです。ところが、従来の議会はこれの真逆のことを行っていたのです。
極端にいえば、首長側の執行部が考えて決めたことをチェックするだけの機能しか果たしてこなかったのです。しかも、議会が開会する以前に、首長側と議会側とで話し合い、調整してから議会を開会しますので、「壁で閉ざされた議場」という密室で談合が行われていたと批判されても仕方のない状況も多かったのではないでしょうか。このように、これまでの議会活動をよしとせず、本来の議会の姿に戻していこうというのが、いま全国で起こっている議会改革です。なので当然、「住民にいちばん身近な組織=議会」として、議会が役所内で最も住民がアクセスしやすい位置にあってもよいのではないでしょうか。もっと言えば、役所を飛び出して、町の中で住民がいちばん集まりやすい場所で議会が開催されてもよいと思います。
「議場はここにあるものだ」「議会とはこういうものだ」という“思い込み”から脱却し、気がつくことから、さまざまな議会改革はスタートしています。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。