【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第12回 えっ!?議会は首長が開催する? (2012/10/11 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第12回は「えっ!?議会は首長が開催する?」をお届けします。
議会で議論しなくても物事が進められる
議会とは、まちの将来や現在の事業、私たちの生活に密接している税金の額やその使途などを議論し、結論を出すところです(第2回記事参照)。しかし、首長はすべての案件を議会に諮らなければ仕事が進められない、ということでは必ずしもありません。首長には「専決処分」という権限があります。緊急を要する場合や、わざわざ議会を開催して議会の意見を聞くまでもないような軽易な事案は、首長の判断で事業に着手することができ、あとで議会に報告すればよい、という手法もあるのです。
「それならば大部分を議会なんかに諮らずに、首長の判断でどんどん進めていけばいいではないか」と思われるかもしれませんが、そうしてしまえば首長が暴走した時に困ります。首長のこの「専決処分」には、住民にとってメリットとデメリットとがあります。メリットは、いちいち議会を開催する手間が省略でき、住民が選んだリーダーが施策をどんどん進めることができることです。デメリットとしては、首長がこの「専決処分」という意味を拡大解釈して議会を無視して、何でもかんでも自分の判断で進めてしまう危険性をはらんでいることです。昨今、首長と議会は二元代表ということを強く意識し始めた議会が増加してきましたが、こうした議会の中からは首長の専決処分について「首長の独断」「議会無視だ」という声も出ています。やはりチェック機関としての議会が必要になるわけです。
議会は首長が開催する
現在の地方自治法では、議会は首長が招集することとなっています。「えっ?」と思われるかもしれませんが議会は次のような手続きで開催されるのです。
- (1)議会運営委員会を開催
- (2)議会日程などを議論し議決
- (3)議長が首長に対し議会の招集を請求
- (4)首長が議会を開催
議会のリーダーは議長です。しかし、議会を招集する権利は首長側にあるという不思議なシステムが、現在の地方自治法で定められている議会の現状です。極端な話をすれば、議長から議会開催の要求があっても首長はすぐに開催しなくてもいいのです(自治法では、議長の請求から10日以内に開催しなければならないことになっています)。議会を自身の意思で開けないことに気付き始めた議員は、決まった期間だけ議会を開催するのではなく、1年中議会を開きっぱなしにしておく「通年議会」を近年、導入しはじめました。
次回は「通年議会」について、そのメリット・デメリットなどを、事例をもとに書いてみたいと思います。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。