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【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】

第13回 議会改革先進事例の紹介(6)
通年議会を実施する議会:長野県軽井沢町議会
(2012/10/25 早大マニフェスト研究所)

 政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第13回は「議会改革先進事例の紹介(6)通年議会を実施する議会:長野県軽井沢町議会」をお届けします。

議会が主体的に議会を開く

軽井沢町議会へ視察に行ったマニフェスト研究所メンバー軽井沢町議会へ視察に行ったマニフェスト研究所メンバー(早大マニ研提供)

 前回、現行制度は「議会の招集権は首長にあるため、議会なのに主体的に議会を開くことができない」ことを説明しましたが、今回はこの課題を突破する取り組みをしている長野県軽井沢町議会の事例を紹介したいと思います。

 軽井沢町議会は「通年議会」を実施しています。例えば、首長が1月に議会を招集したとします。その場合、議会の議決によりその会期を12月までの1年間と定めると、それ以後、議会は議長の権限で再開と休会を繰り返すことになります。本定例会はもとより、委員会もいつでも開催でき、議会運営の柔軟性・効率性を高めることができるのです。

通年議会のメリット

 通年議会にすると、議会活動が中断する「議会の閉会期間」をなくすことができます。すなわち、議会としては首長へのチェック機能を充実・強化できるとともに、民意の反映や災害時といった緊急対応等に対し、迅速に主体的に取り組むことが可能となります。

軽井沢町議会議会改革特別委員会メンバー軽井沢町議会議会改革特別委員会メンバー

 こんな事例があります。軽井沢町は有名なリゾート観光地です。ですから、軽井沢町では観光客が最も多い7月20日~8月31日までの間は町内の公共工事を自粛し、できるだけ道路交通などに不便を来さないように配慮しています。しかし、その間の工事ができないわけですから、工事をする側にとっては工期に支障を来すのです。大きな工事は完成するまで時間がかかります。しかも、決められた予算や工期の中で工事を終えなければならないので、場合によっては作業に無理が生じてしまう危険性もあります。通常、大きな工事は前年度以前から計画が作成されて進められているため、新年度になった4月や5月の早い段階で、入札が行われます。入札が終わっても議会で承認してもらわなければ工事には着手できませんから、6月の定例会まで待つか、本当に急ぎの場合は臨時議会を開催してもらうかしかなかったのです。

 「通年議会」は常に議会が開かれている状態(もしくは休会となっている状態)ですから、こうしたケースでもすぐに議会が開催でき、審議ができます。実際に軽井沢町では、春に入札した工事がすぐに着工でき、作業が無理なく進められています。

通年議会の課題

 通年議会を実施すると、常に議会が開かれている状態ですから、前回触れた「首長の専決処分」ができなくなり、首長機関の職員が議会対応に関わる時間が増えるのではないか、という課題が生じてきます。また、議会や委員会の開催数も増えるため「議員の負担も増えるのではないか」という声も聞こえてきます。前述の首長機関の負担については、議会と対話を重ねて“住民にとって効率のよい議会運営手法”を自分たちでつくっていくほかありませんし、後者の件については、議員は議事を行うことで報酬を得ているわけですから、当然のことと言えば当然です。そこに不満があるのなら、自らが議員の活動内容を提示し、その報酬額や定数などを提案するべきです。

 いずれにしても、議会は住民のためにありますから、“住民にとってどうなのか”を絶えず議論の中心にしていただきたいと思っています。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
軽井沢町議会/軽井沢町公式ホームページ
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
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