トップ    >   調査    >   震災がれきの受け入れ表明なしは90%超――政治山自治体アンケート

「「自治体名の売却」に反対多数 自治体向け調査「ネーミングライツ」」へ 「ネット選挙に関する意識調査」へ

震災がれきの受け入れ表明なしは90%超――政治山自治体アンケート

 政治山ではこのほど、全国943自治体を対象に「震災がれきの受け入れ」に関するアンケート調査を行った。期間内に回答があった76自治体のうち、震災がれきの受け入れを表明しているのは3自治体に留まり、「表明していない」とした自治体に対し、国から要請があった場合に震災がれきを受け入れるかを聞いたところ、「受け入れる」と回答した自治体はゼロだった。その理由としてほとんどが処理施設の容量・能力をあげ、処理が進まない震災がれきが直面する問題が浮き彫りになった。(2012/5/17)


<調査方法>
調査対象:全国1,789の地方自治体のうち、メールアドレスが取得できた943自治体
送信方法:スパイラル(R)を用いたWEBアンケートフォームによる回答 (調査表はコチラ)
実施日 :2012年5月1日~5月15日
回収状況:送信数 943件、有効回答数 76件

 心情としては受けれたいが、現実問題として簡単には震災がれきを受けれることはできない――今回の政治山の調査で、自治体が震災がれき受け入れ問題に苦慮していることが明らかになった。自治体による震災がれきの受け入れについては、4月26日の「政治山ニュースまとめ」でお伝えしたとおり現在、さまざまな問題が顕在化している。受け入れ施設の容量や能力、焼却灰の処分地、風評被害への憂慮、ごみ処理組合の足並み、そして住民の理解。各自治体の「がれきを受け入れられない理由」はさまざまだ。

 今回、回答をいただいた76自治体のうち、震災がれき受けれを表明しているは大分県と岩手県岩手町、静岡県浜松市の3自治体(無回答6)。3自治体とも、がれきの処理はいまだ行ってないと回答している。

ネーミングライツに関する自治体向け調査  がれき受け入れを表明していない67自治体に、「国からの要請があった場合、受け入れるか」を聞いたところ、「受け入れる」はゼロ。「受け入れない」が44.8%、「検討中」が41.8%という結果になった(「無回答」13.4%)。「検討中」と回答した自治体の自由回答を見ると、「調整が必要」「現段階では難しい」など、受け入れに消極的な書き込みが多く、受け入れ容認に転ずる可能性は高くない印象だ。

 また、「受け入れない」と回答した30自治体に「受け入れに慎重な理由」をたずねたところ、「住民の反対」「首長の意向」と明確に理由を回答したのは、それぞれ2自治体。86.7%が「その他」を選択している。ただ、「その他」の内容を自由回答欄で見てみると、住民の反応を考慮していることを伺わせるものが少なからず存在した。住民ありきの自治体だからこそ苦慮している状況を伺わせる結果となった。

 自由回答で目立ったのが、処理施設の能力とキャパシティを課題や拒否理由にあげる事例だ。そもそも処理施設自体がない、老朽化している、改修中や休止中といった回答もあり、受け入れたくても物理的に難しいという状況が見受けれる。また、「処理施設を共同運営しているため単独では判断できない」という回答も少なくなかった。このほか、「安全性の確証が得られていない」「放射性物質に汚染されたがれきは受け入れない」など、地域や住民に対する安全性を理由にあげる自治体もあった。

自治体担当者の自由回答

今回のアンケートでは選択式の回答のほか、自治体担当者から自由回答も募集した。ここでは、特徴的な回答を抜粋して掲載する。
※各コメントは、自治体や担当者個人が特定されないよう一部、政治山による編集を行っています。

  • 最終処分場の残容量から受け入れ否とさせていただいている。また、可燃ごみについては、中核市を含め5市町村での広域処理を行っているが、こちらも放射性物質に汚染された可能性のある災害廃棄物については一切、受け入れしないとしている。
  • 本町においては現在、焼却処理場が休止中であり、最終処分場の残容量に余裕がないことなどから、受け入れは困難な状況。
  • 当市では独自の焼却施設や最終処分場を持たないため、ごみ処理を近隣の自治体に委託しています。そのため、当市の判断だけでがれきの受け入れをすることはできません。
  • がれきの処理は広域で対応しているのが現状であり、対応については他の構成市町村との意見統一と地域住民との調整が必要になる。
  • 災害廃棄物の安全性が確保されることを前提として回答いたします。災害廃棄物の広域処理については基本的に賛成ですが、市内の廃棄物を処理している一部事務組合では廃棄物の焼却灰の処理委託先が決まっておらず、現状では受け入れ不可能と考えています。受け入れ条件は、焼却灰の処理先が安定的に確保でき、地元住民の了解が得られることです。なお、埋め立てごみについては、最終処分場の残余容量が少ないため、受け入れには応じられない状況です。
  • 県のガイドライン(素案)が示されたが、現時点で、現在及び将来における生活環境への影響、市民の健康リスク等安全性に対する確証を持つに至っていないことから判断できない。また、本市が溶融飛灰の再資源化を委託する県外施設は、震災がれきを含む飛灰の処理を行っていない。
  • 被災地の復興を支援するためにがれきの処理を行うことは、大変重要であると考えております。しかし、本市の処理施設は建設後20年以上経過して老朽化が進んでおり、焼却施設が故障した際には他市町へ緊急的に焼却処理をお願いしています。このような施設の状況から、被災地から定期的にがれきを受け入れることは難しいと判断しております。
  • 災害廃棄物の受け入れについては、安全性を第一に検討してきたが、市の埋立方法に物理的な特性があり、技術的な安全性の確証が得られていないため、現時点では困難と判断している。
  • 市内にごみ焼却場などの処理施設・処分場がないため、関係自治体との確認が必要。当市のみで受入の可否についての発言ができない。いずれにしても、要請があれば処分場等の用地を検討しなければならないと考える。
  • 被災地では処理施設が不足しており、大量の災害廃棄物を処理するためには、広域処理が必要となっています。そのため、本市では、災害廃棄物の受入れを前提とした試験焼却を実施し、その結果により本市の焼却施設で処理が可能と確認した後、本格受入をする計画です。現在、試験焼却ついて、今月末を目途に実施できるよう、国、県と調整をしているところです。
  • 被災地の復旧・復興のために、がれき処理は不可欠です。被災地を助けたい気持ちは十分に理解しております。がれき処理に関しては、広域処理を行っており、市単独でがれきの受け入れを表明できるものではありません。また、焼却灰の処理についても処理施設を持っていないので、受け入れに協力いただける自治体の理解が必要であります。
  • 現在の焼却炉は今年で19年目を迎えます。一般的に焼却炉の寿命は25年ほどと言われており、その他地域の焼却炉同様、老朽化が進んでいます。計画している統合焼却炉の建設候補地は地元の反対があることから、いまだ建設の目途が立っておりません。このため、できるだけ焼却炉への負担をかけずに延命化措置を講じていくことが重要であり、本年度は大規模な修繕と点検を予定しています。焼却能力も30トン/日と小さいことから、震災がれきを受け入れる程の余裕はありません。また、最終処分場へ焼却灰を埋め立てており、市の焼却灰を埋め立てていくだけでも残余量に限りがあります。
  • 議論の入り口で「受け入れない」という事ではありませんが、受け入れに当たっては条件が整ってはじめて受け入れへの議論が可能であろうと思います。
  • がれきの受け入れについては現在、処理施設が日常のごみ処理だけで手いっぱいであり、大変困難な状況である。
  • (1)広域で処理している最終処分場が満量に近い状況である。(2)農業が基幹産業のため、町が単独で受入を表明できない。仮に、震災がれきを受入した場合、二次(風評)被害が心配であるのと、またこうした状況に陥った時の国の補償が不透明である。
  • 受入れの可否に関する検討は行っていません。ただ、放射性物質等を含む災害廃棄物の受入れは行わない方針です。
  • 被災がれき試験焼却のための説明会実施について、焼却場及び最終処分場周辺自治会の役員会で説明し、住民説明会の開催について了解をえられたので、県と説明会の開催日程を調整しています。
  • 平成24年度から3年掛けて焼却施設の基幹設備の改良工事を実施予定であり、工事期間中は処理能力が不足するため、災害廃棄物を受け入れる余裕がないため。

関連記事

「「自治体名の売却」に反対多数 自治体向け調査「ネーミングライツ」」へ 「ネット選挙に関する意識調査」へ