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「自治体名の売却」に反対多数 自治体向け調査「ネーミングライツ」

自治体がネーミングライツ(命名権の売却)についてどのように考えているのかを調査するために、政治山ではインターネット上でメールアドレスが取得できた約900の自治体にアンケートを実施した。その結果、「施設名ならよいが自治体名の売却には反対」の回答が過半数を占め、自治体名の売却に賛成意見の自治体はなかった。(2012/04/18掲載)


<調査方法>
調査対象:全国1789の地方自治体のうち、ホームページでメールアドレスが取得できた943自治体
送信方法:スパイラル(R)を用いたWEBアンケートフォームによる回答 (調査表はコチラ)
実施日 :2012年4月3日~4月13日
回収状況:送信数 943件、有効回答数 111件(無回答7件)

ネーミングライツに関する自治体向け調査 3月、大阪府泉佐野市が新たな財源確保のために市の命名権を売却する構想を発表し、大きな反響を呼んだ。

政治山では、3月27日から読者参加型ネット調査である「政治山クリックリサーチ」でこのテーマによるリサーチを開始。「自治体名の売却に反対」の意見が最も多く90票、「命名権の売却自体に反対」27票、「売却に賛成」17票という結果が出た(詳細はクリックリサーチ一覧を参照)

この問題に対して当の自治体はどのように考えているのかを調査するため、自治体のウェブサイトからメールアドレスを取得できた943の都道府県市区町村に、同様の質問を3日から13日にかけて行った。

その結果、111自治体から回答があり、「施設名ならよいが自治体名の売却には反対」が55票で半数を占めた。続いて「命名権の売却自体に反対」が11票で、「自治体名の売却」に賛成の意見はなかった。

アンケート結果

選択肢 回答数 回答した自治体名
自治体名の売却に賛成 0 なし
施設名ならよいが
自治体名の売却には反対
55 松田町、芦屋市、阪南市、留寿都村、大田市、串間市、野沢温泉村、静岡市、土佐清水市、あわら市、八千代市、安芸高田市、滝川市、田原市、玉野市、小川村、北斗市、伊達市(北海道)、高島市、剣淵町、宇佐市、石狩市、高山市、軽井沢町、鎌倉市、安平町、田村市、富士見町、上田市、にかほ市、石巻市、新居浜市、愛媛県、阪南市、水巻町、南陽市、坂出市、島牧村、弥彦村、遊佐町、南越前町、黒潮町、御殿場市、三浦市、新冠町、岩美町、坂祝町、下諏訪町、与那原町、北見市、交野市、坂戸市、えりも町、厚木市、佐倉市
命名権の売却自体に反対 11 鶴居村、置戸町、平泉町、根室市、幸手市、赤井川村、北大東村、産山村、新得町、太子町(兵庫県)、長沼町
分からない 38 茨木市、洋野町、袋井市、大宜味村、青森市、小郡市、松島町、刈谷市、留萌市、行橋市、千葉市、嘉麻市、旭川市、小竹町、朝日町(三重県)、平谷村、三重県、宝達志水町、鳥取県、岩出市、中富良野町、三原村、宇和島市、土岐市、国東市、熊本市、箕輪町、古賀市、沖縄県、河内長野市、杵築市、湯河原町、函館市、松江市、奈良市、松阪市、五木村、福岡市
無回答 7 埼玉県、下市町、霧島市、川口市、横浜市、白老町、直方市

自治体担当者の自由回答

また、回答の際に自治体担当者から自由回答を募集した。「まちの名前」へのこだわりを理由に、「反対」とする意見が多かった。以下に回答のあった意見を紹介する。 ※担当者名と所属自治体は出さない条件で回答を収集したため匿名

  • 自治体名には、その地域ならでのアイデンティティーが含まれているため、無関係のものが使うのは好ましくない。(岩手県内自治体)
  • 命名権による資金調達は財政難にあえぐ自治体にとっては効果的な手法である。
    しかし、街の成り立ちや市民の暮らしに密接する「我が街の名称」の売却については、街の歴史や市民感情を考慮すると大変に難しいテーマであると感じている。(北海道内自治体)
  • 施設を含めて命名権売却については、現状では具体的な検討までは行っていません。(福岡県内自治体)
  • 当市は、公募により自治体名を決定しており、市民の思いや願いが込めれれています。よって、当市においては上記回答(編注:「施設名ならよいが自治体名の売却には反対」)となっています。(北海道内自治体)
  • 泉佐野市のブランドイメージが地域においてどれほど浸透しているか定かでないが、市名のネーミングライツによって、納税意欲の低下や住民との合意形成が図れるかなどの問題を考えると疑問がある。
    また、公共施設のネーミングライツについても、議決を得てうえで自治体の責任において設置したものなので、単に収益だけを求めて命名権を売却することは、対住民に対しての説明責任が果たせるのか?
    いずれにしても、今後の動向に注目したい。(埼玉県内自治体)
  • 現実的に地方の場合、企業が手を挙げるといったことないと思いますが、実現できればメリットは望める。(長野県内自治体)
  • アイデアは素晴らしいですが、問題が多すぎて、自治体名の売却を実現することは非常に困難だと思います。(宮城県内自治体)
  • 自治体名の売却の場合、住民や企業等が住所変更手続において多大なコストを負うなどの理由により、その実施には慎重であるべきと考える。(大阪府内自治体)
  • あくまで一担当者の意見としていただきたいが、長年住み続けて地元に愛着のある住民のことを考えると、自治体名の売却はやってはいけないことであると思うし、住民に対する裏切り行為とも思える。最低でも住民投票を行ったうえで実施するレベルのことと思う。施設名等についてはケースバイケースだと思っている。(福岡県内自治体)
  • 自治体名は、地域の歴史と文化が表象されたものであるため、商業目的の客体とすべきではないと思います。(北海道内自治体)
  • 施設名においても、ネーミングライツによる効果が本市にとって十分見込まれる場合のみ、実施するものと考えています。(神奈川県内自治体)

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