故人が生前契約していた有料サービス、相続人を困らせないためのポイントは? (2018/8/19 JIJICO)
情報の棚卸で分かる「意外に多い契約数」
自分のことは自分が一番よく知っている、ではお聞きしますが貴方が現時点で契約している各種サービスを全て把握していますか?そのサービスは有料ですか?そのサービスの使用料は「口座引き落し」ですか「振り込み」でしょうか?
主な有料契約とは以下のものが挙げられます。
- 公共料金関係 ~電気、ガス、水道
- 通信関係 ~電話契約(固定電話、携帯電話)
- 通信関係I ~インターネット(プロバイダ)契約
- 通信関係II ~新聞購読契約、NHK受信契約
- 通販関係 ~クレジットカード会社契約、定期購買・購読契約等
- 各種保険 ~保険契約
- 証券会社 ~口座維持管理料、信託報酬等
- 貸金庫 ~使用契約
まず、全てを把握できていましたか?さらにこれらの契約に関する費用は口座引き落し契約でしょうか、自分での振り込み契約でしょうか?
死亡後に契約や支払いが続いた結果トラブルになった例
例えば、個人名での各種契約の中には、契約更新の期間中に解約を含めた契約内容の変更の申し出がない限り、自動的に契約が更新されるものがあります。当然新たな年間の契約料が自動的に引き落しとなります。各種保険契約や損害保険等の多くはこのパターンが多いので、契約の事実を家人に知らせていないと将来のトラブルの元となる恐れがあります。
身近な例では年間12回、毎月のお届けという食品や嗜好品の通販等も、一括振り込みの契約の場合、契約満了まで商品が届けられます。 契約者死亡の為、契約の途中解除を申し入れた場合の対応(残金の返金等)は各社で異なるようなので、事前の確認が欠かせません。
振り込みと引き落としの違い~引き落としは放置すると危険!
仮に契約の当事者である貴方に万が一の場合、引き落とし契約は契約者死亡の連絡、または契約の解除の申請が無い限り契約は継続されますので口座に残金がある限り延々と引落しが続きます。振り込みの場合はこの心配はありませんが、未納、延滞が続けば督促の対象となり、場合によっては相続人との間に訴訟問題に発展する危険性もあるのです。
特に、故人が持ち家で一人暮らしをしていた場合等、郵便物は投函されたままとなります。相続人や親族が遠方に居住していた場合等は直ぐに空き家同然となってしまい、投函された事実に気付かないままというケースも出てきます。こうなりますと督促側は「なしのつぶて=無視」の扱いを受けたと考えますから、心情的にも険悪な状態を招くことは必至です。
また、ご存知のように当事者死亡直後に金融機関にその旨を連絡すれば当該口座は凍結されます。ですが家人にも知らせていないような故人の専用口座でこの様な契約を結んでいた場合には、先に述べたように引き落としは出来なくなるまで財産が流出する、または滞納期限切れで、ある日突然相続人の家庭に督促状が届くことになるのです。
契約者以外による契約解除の方法~手続きが煩雑なものも多い!
有料契約には月額料金の場合や年会費の場合等、多様な形態があります。引き落としの期限、振り込みの期限も契約会社によって様々です。さらには契約の解約手続きについても各社バラバラです。詳細は省きますが、契約者以外が解約を申請する場合には煩雑な手続きを経なければいけないケースがほとんどですし、中には契約者以外の解約を認めていない契約書で運用しているケースもあるのです(死亡時には都度相談等)
契約者本人である貴方は、解約の方法まで把握できているでしょうか?さらに、自分以外に解約の手続きについての情報を提供しているでしょうか?
遺言の前に自分情報の整理と保管を~誰のための情報か?
特に一人暮らしの場合は家族との間で日常この様な情報交換の機会はより少ないため、より正確な個人情報(有力契約一覧等)の記録は欠かせません。
遺言の作成や相続財産の調査等については相続人間の家庭事情等もありうかつに口外できないとは思いますが、ここに挙げたような個人に関係する有料契約の存在は事前に知らせておきませんと、場合によっては相続財産の不本意な流出(目減り)となり、さらにはサービル契約の把握や解約手続きといった無用な負担を相続人に強いることになるのです。
そうしないためは、例えば市販のエンディングノートやライフプランノートと言われる生前整理に活用できる用具を利用することをお奨めします。記載されている全ての項目を記入するのではなく、ここで紹介した範囲の情報だけを記入しておけば、仮に誰かに見られたとしても相続に関して深刻な影響はないはずです。また、契約を網羅することで「知られたくない有料サービス」を再確認することができますし、自分の手によって解約し、闇に葬ることも可能になります。
有料サービス契約を始めとする個人に関する情報の整理は、家族のためでもあり、自分のためでもあるのです。もちろん、契約内容を変更した場合や解約、新たな契約をした場合にはノートの更新もお忘れなく。
- 著者プロフィール
-
寺田 淳/行政書士
1957年、東京都杉並区生まれ。1980年、中央大学経済学部卒業。同年、電機機器メーカーに就職。2009年に同社を退職し、在職中に取得した資格で2011年に行政書士事務所を新橋駅前に開業して現在に至る。
- 関連記事
- PCやスマホのデータなど死後「デジタル遺品」となるものの整理方法
- 親の財産にかかる税金、死後の相続手続きをスムーズにするための準備とは
- 遺産分割、配偶者に居住権新設を 高齢化で民法相続見直し
- 遺言書で相続時のトラブルを防ぐには?
- 高齢化社会で増える任意後見契約とは