検査台から患者が転落し、骨折やクモ膜下出血した事例が発生―医療機能評価機構 (2018/8/15 メディ・ウォッチ)
検査や治療・処置の際に患者が検査台から転落し、骨折外傷性クモ膜下出血などを負ってしまった―。
こうした事例が、2014年1月から2018年6月までに9件も報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました。
認知症などで医療者と患者が十分に意思疎通できない場合など、転落リスクが高まる
日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等は義務づけ)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に気づいたものの、ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集。その内容や背景を分析して、事故等の再発防止に向けた提言等を行っています(医療事故情報収集等事業、関連記事はこちらとこちらとこちら)。また事故事例などの中から、毎月、とくに注意すべき事例等をピックアップし、「医療安全情報」として公表しています(最近の情報はこちらとこちらとこちら)。8月15日に公表された「No.141」では「検査台からの転落」がテーマとなりました。
ある病院では、頭部MRI検査のために看護師と診療放射線技師で患者を検査台へ移動させましたが、その際、看護師は「患者が認知症である」ことを診療放射線技師に伝えませんでした。技師は、患者の頭部を固定しましたが、「意思疎通ができている」と思い身体は固定しませんでした。撮影開始10分後に患者が検査台にいないことに技師が気付き、検査室に入ると、患者は検査台の右側の床にうずくまっていました。患者は右大腿骨頚部外側骨折をしていました。
また別の病院では、患者は鎮静し心臓カテーテル検査を行っていました。検査の途中、看護師が物品を取りに出、検査室に戻った時、患者が右足からずれるように転落してしまいました。医師は患者に背を向け清潔台で作業中、臨床工学技士は機器の操作中、診療放射線技師は画像確認中であり、誰も患者を見ていませんでした。その後、頭部CT撮影を行ったところ、外傷性くも膜下出血が認められました。
機構では、重篤な影響が患者に出ていることを重く見て、▼患者の病態(認知症の兆候はないか、意思疎通が十分に行えるかなども含めて)を把握し、医療者間で患者の情報を十分に共有する▼患者が検査台から転落する危険性があることを認識し、患者から目を離さないように医療者間で声をかけ合う▼転落する危険性のある検査の際は、安全確保のため、患者に説明を行い、納得を得た上で身体を固定する―などの取り組みを行うよう注意喚起しています。
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