なぜ中途採用で選考ドタキャンが増加しているのか (2017/7/26 瓦版)
ドタキャンも珍しくない中途採用の選考辞退の実態
少子高齢化をトリガーにした人手不足はもはや慢性的だ。その結果、多くの企業が欲しい人材・優秀な人材を確保することに苦慮している。いわゆる売り手市場が常態化する中で、求職者による選考自体のドタキャンも横行している。求職者有利とはいえ、そこにはどんな背景があるのか。
エン・ジャパンが運営する人事担当者向け中途採用支援サイト「エン 人事のミカタ」が直近1年以内に中途採用を実施した企業を対象に「中途採用における選考辞退」についてアンケート調査(n=665)を行っている。それによると、選考辞退の発生については86%があったと回答。さらに以前と比較して辞退が増えたと回答した企業は50%に及んだ。
人口動態から推計しても年々、人手不足が深刻になることは明白だが、それにしても選考そのもののキャンセルが増えているのはどういうことなのか…。アンケートの詳細から、その糸口を探ってみる。
まず選考辞退のタイミングはどうなっているのか。最多は、面接前日・当日のドタキャン辞退(58%)、次いで内定後(56%)。ドタキャン求職者からの辞退連絡の有無については、「すっぽかし」が91%で断トツ1位。メールで連絡は67%となっている。この2つの結果からなにがみえるのか。
ひとつはシンプルに売り手市場が加速しているということ。もう一つは、求職者の乱打作戦だ。売り手市場で、転職を成功させる確率は確実に上がっている。一方で、できるだけ条件のいい会社に転職したいという欲も比例して高まっていると考えられる。その結果、求職者は多くの企業に応募し、天秤にかけているということだ。
売り手市場だけが、求職者のドタキャン増の要因なのか…
それを裏付ける調査結果もある。辞退理由についての質問に対し、最も多かったのは「他社の選考を通過/内定を取得した」が75%で2位以下を圧倒。求職者の多くが複数受験していることが明確になっている。割合は少ないものの、3位は「希望する給与・待遇ではなかった」(21%)となっており、両社をすり合わせても求職者の乱打ぶりが透けてみえる。
売り手市場ならではの状況といえるが、企業側の情報発信にも課題がある可能性はある。例えば、口コミではブラック企業という評価もあるが、公式発信情報には社員が笑顔で楽しそうに働いているカットばかりで、書いてあることもまるでホワイト。これでは、求職者に不審を抱かれても仕方はないだろう。社会人経験もある中途求職者がキャンセルして連絡すらしないというのは、完全決別宣言であり、関わりたくもないともとれなくない…。
もっとも、企業側にすれば、例えば面接の日程調整や選考過程の短縮をしたくても、組織の都合でいくつかのプロセスを踏む必要がある場合もあり、悩ましい部分はあるだろう。とはいえ、情報が筒抜けになる時代にもはや企業が猫を被るのは不可能といっていい。それを踏まえた上で、企業はできるだけストレートに情報開示し、並行して働きたくなる会社として磨きをかけることが求められるということだろう。いかに優秀人材を引き寄せられるか。売り上げ追求以上に昨今は、企業にとってそこが存続への重要課題だ。
- 関連記事
- 若者の就活がうまくいかない本当の理由とは
- 「時差Biz」は都民ファーストにならない!?企業も本質的な働き方改革に取り組むべし
- このまま会社員を続けるのか、もっと他にいい“場所”があるのか…
- 事例から考える、フランチャイズ・システムと優越的地位の濫用該当の可能性
- 出戻り社員は本当に戦力として使えるのか