生産性向上を妨げる「デジタルライフ疲労」はどうすれば軽減できるのか (2016/8/30 瓦版)
スマホの長時間使用が引き起こす新しいストレスのカタチ
スマホはもはや体の一部となりつつある。寝るとき以外は手にしている人というのが大げさでない人も少なくない。それがある種の精神安定につながっているのならいいが、その結果、新たな“疲労”も生まれている。その名は「デジタルライフ疲労」。いわゆる疲労とは質が違う、職場でのパフォーマンス低下も引き起こしかねない厄介な不調だ。
デジタルライフ疲労とは、疲れがなかなかとれず、気分が落ち込みやすく、職場の人とうまくコミュニケーションがとれないといった症状が特徴的な疲労をいう。スマートフォンを1日8時間以上使用している人に顕著にみられることから、デジタルライフ疲労といわれる。
仕事中、会議中、食事中、休憩中、帰宅後…。「スマホを8時間も!」と他人事のようにギョッとした人も少なくないかもしれないが、1日を振り返ってみれば、知らぬ間にそうなっているビジネスパーソンも少なくないかもしれない。
「デジタルライフ疲労は、身体面、精神面に広く疲労感をもたらすに留まらず、コミュニケーションにまで大きく影響を及ぼす複合的な疲労。従って、休息するだけでは回復は不十分です」。こう解説するのは、杏林大学名誉教授の古賀良彦氏。有効に活用しての長時間使用ならまだしも、そうでない面が多いなら、使い方を見直した方が賢明といえる、聞き流せない見解だろう。
スマホについては、スマホ老眼など、すでにさまざまな弊害が指摘されているが、そもそも、古賀氏の行った調査(対象者数2万人)では、約6人に1人がデジタル機器を8時間以上使用していることが分かっている。別の調査では、デスクワーク中心の職種でも、スマホの使用時間がPCの使用時間を上回る結果が出ており、もはや多くの人が重度のスマホ中毒といえるのかもしれない。
この13年で“疲労”が3割も増加
それが原因かは因果関係がハッキリしていないが、2004年の疫学調査では55.9%だった疲労を自覚している人の割合が、2017年夏の今回の対象2万人の調査では、87.7%となり、3割以上も増加している。内閣府の調査では、現在の生活に満足していると回答した人が73.9%と過去最高になったことが発表されたばかりだが、一方で、「疲労の自覚」が増加しているのは、なんとも皮肉としかいいようがない。
この厄介の不調、一体どうすれば、回復させることができるのか。古賀氏は「自分なりの休養・寛ぎ・楽しみによって疲労の蓄積を防ぐことが活力を生み出し、コミュニケーション能力を回復させる」とした上で、特に自分を再生するリクリエーションの重要性を指摘。趣味を持つことや食品、対応のサプリメントなどを利用するのも効果的とアドバイスした。
生活の奥深くにまで浸透した感のあるスマホ。その使用を控えるなど、デジタルデトックスを意識することが先決といえそうだが、社会のデジタル化は抗えないほど拡大している。ならばせめて、スマホを活用することで、一層生産性を向上させる。そうした発想の転換でもしない限り、デジタルライフ疲労は、社会に根深く浸透こそすれ、減少することは避けられないのかもしれない…。
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