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【AI時代をどう生きるか?】第1回:ビジネスパーソンが身に付けておくべき知識とスキル (2017/3/5 nomad journal

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人工知能(AI:Artificial Intelligence)。ビジネスパーソンならずとも、一度は聞いたことがあるでしょう。試しに新聞を広げてみると、AIを用いた製品やサービスの記事が、日々紙面をにぎわせているはずです。現政権も成長戦略の柱として、AIを活用する「第4次産業革命」の推進を発表しました。AIは社会を変えると同時に、私たちの働き方をも確実に変化させるでしょう。そこで本連載では、AI時代にビジネスパーソンが身に付けるべき知識やスキルは何か、お届けしていきます。一回目の今回は、AIの基礎知識や歴史について学んでいきましょう。

ロボット

AIの誕生と2度のブーム

そもそも、AIとは何でしょうか。実は私たちの身近なところにも、すでにたくさんのAIが存在しています。たとえば、ソフトバンク社が2014年に開発したロボットPepper君は、人の表情を認識し、感情を読み取ることができます。iPhoneに搭載されているSiriは、話しかけると音声を自動認識し、適切な対応をしてくれます。また、お掃除ロボットのルンバは、部屋の形をセンサーが読み取り、自動的に掃除を行ってくれます。これらには全て、AIの技術が使われています。

AIが活躍しているのは、ビジネスシーンだけではありません。プロ棋士と人工知能ソフトが対戦する「将棋電王戦」では、2013年から2年連続でコンピュータが勝利しました。「ロボットは東大に入れるか」を検証するプロジェクトで開発された「東ロボくん」は、2014年のセンター試験の模試にて、全国の私立大学の8割でA判定という結果を出しました。「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」では、AIが執筆した小説が、文学賞「星新一賞」の一次選考を通過しました。これらの結果を見れば、AIがいかに進化しているかがお判りでしょう。

ここで、AIの歴史を振り返ってみましょう。人工知能という言葉が生まれたのは1956年です。研究者たちが研究成果を発表し合う「ダートマス会議」で、AI研究の第一人者であるジョン・マッカンシー氏が用いたのが最初です。彼の発表を聞いた研究者たちは近い未来、人間のように思考できるAIを開発できると信じ、機運が高まっていきました。しかしその後、AI研究は冬の時代を迎えます。第1次(1956~1960年代)、第2次(1980年代)と2度のブームを迎えるものの、いずれも失速してしまいます。

世界的企業がAI開発を競い合う

まず第1次ブームで、AIはチェスや数学の定理証明に使われましたが、ビジネスには応用できませんでした。第2次では通産省(当時)が550億の予算をかけ、「第5世代コンピュータ」を開発。医療や法律の知識をコンピュータに覚えさせ、医者や弁護士の役割をさせる取り組みでしたが、そのためにはありとあらゆるケーススタディを教える必要があります。また実際の現場では例外的なことも起こり、簡単に判断できる事象ばかりではないなど実現性が低いとされ、結局失敗に終わりました。

そして現在、第3次のAIブームが起こっています。ブームのきっかけは、「ディープラーニング」という技術革新です。2006年頃から、脳科学の研究がAI開発にも応用されるようになりました。人間の脳は、自ら学習して成長することができます。それに倣い、脳を構成する無数のニューロン(神経細胞)を工学的に再現することで、AIも自ら「機械学習」し、画像や音声を認識するための「パターン認識能力」を高めていったのです。Googleが開発したAIは、このディープラーニングによって、猫を猫と認識できるようになりました。詳しくはディープラーニングの章で説明しますが、実はこれこそが画期的なブレイクスルーだったのです。

現在、グーグルやフェイスブック、マイクロソフトやIBMといった世界的な企業が、競い合うようにディープラーニングの開発を進めています。グーグルは2013年、ディープラーニングの第一人者である、トロント大学教授のジェフリー・ヒントン氏が立ち上げたベンチャーを、翌年にはイギリスのAI開発ベンチャーを約420億円で買収しました。また、2013年にはフェイスブック、2014年にはバイドゥ、そして日本のドワンゴが、それぞれ人工知能の研究所を設立しました。世界でも名だたる大企業が行動を起こしていることからも、AIにどれほどの可能性と、ビジネスチャンスを感じているかがお分かりになるでしょう。

AIは人間にとって脅威なのか

一方、AIの発展と共に、不安視されていることもあります。まず、人間の雇用が奪われるのではないか、という予測です。2014年、英デロイト社は、今後20年の間に、現在の仕事の35%がAIに奪われる可能性があるとしています。オックスフォード大学もこの10~20年で、米国の702の仕事のうち、約半分が失われると発表しました。実際に米国では、計算や書類作成などの単純業務はAIが行うようになっており、会計士や税理士の需要は8万人も減っています。

また、シンギュラリティ(技術特異点)という概念があります。これはAIが進化することで、全人類の知恵を超えてしまうというもの。人間には想像もつかない何かが起こるのでは、と懸念されているのです。AI研究家のレイ・カーツワイル氏は、このシンギュラリティが2045年に起こると唱えています。物理学者のホーキング博士や、実業家のビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏も、この脅威論に同調しています。実際、グーグルやマイクロソフト、そして日本でも人工知能学会は倫理委員会を設け、AIの進化が社会にどのような影響をもたらすかを議論しています。1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督による映画「2001年宇宙の旅」で、HAL9000という人工知能が人間を殺害するシーンが描かれていますが、これまではSFの世界の話だった、人間対人工知能の戦いが起こってしまう日が来るのでしょうか。

いずれにせよ、AIはこれから間違いなく、我々にとってより身近な存在となっていくでしょう。社会生活を送る中で、AIとの関わりは避けられません。その中で、我々はどう生きるべきか。どのような知識やスキルを持っておくべきか。これから全12回に渡ってお届けしていきます。

参考:
「人工知能は人間を超えるか(松尾豊)」
「AIの衝撃(小林雅一)」
「人工知能と経済の未来(井上智洋)」
「2045年問題 コンピュータが人類を超える日(松田卓也)」

記事制作/肥沼 和之(株式会社月に吠える・代表取締役/ジャーナリスト)

【ライター】肥沼 和之
大学中退後、大手広告代理店へ入社。
その後、フリーライターとしての活動を経て、2014年に株式会社月に吠えるを設立。
編集プロダクションとして、主にビジネス系やノンフィクションの記事制作を行っている。
著書に「究極の愛について語るときに僕たちの語ること(青月社)」
「フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」

提供:nomad journal

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