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大都会の中の超高齢化社会、大阪あいりん地区の厳しい現状 (2016/5/18 政くらべ

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地方は今、人口減少にあえいでいます。中山間地域では住民の過半数を65歳以上の高齢者が占める限界集落も珍しくなくなりました。だが、限界集落は中山間地域だけに限りません。大阪市西成区にある労働者の街・あいりん地区は、都会の真ん中にあるいわば限界集落です。弱者救済の政治の光は届いているように見えません。

1万人の労働者は限界集落もびっくりの高齢化率

あいりん地区はJR西日本の新今宮駅南側にある半径300メートルほどの一角です。別名は昔からの地名である釜ヶ崎。この狭い地域に安宿や日雇い労働者が就労する寄せ場が並び、多くの労働者が暮らしています。路上で寝ている人も少なくありませんから、労働者というよりホームレスという呼び方が適切かもしれません。いわゆる昔ながらのドヤ街なのです。

朝に仕事にありついた人は1日汗を流して働き、仕事にあぶれるとなけなしの金をはたいて酒を飲み、愚痴をこぼしています。夜になると賞味期限切れのコンビニ弁当1個100円で売られています。それで飢えをしのぐ人さえいるのです。

住民登録のない流れ者が多く、実態はよく分かりませんが、ざっと1万人が暮らしているとみられています。そのうち、高齢者は7,000人とも8,000人ともいわれます。全国の高齢化率は2014年で全国26%、大阪市24%。あいりん地区の高齢化がいかにすさまじいかが数字に表れています。

かつての高度経済成長を支えた「日本で最も危ない街」

大阪市は人口4月1日現在で約270万人。東京23区、横浜市に次ぐ日本第3位の大都市です。今も多くの若者が進学や就職で地方から集まってきています。あいりん地区の労働者の多くも同じように地方から大阪へやってきて、居ついたのです。特に高度経済成長に日本がわいた1960年代にやってきた人が目立ちます。

当時、大阪では万国博覧会が開かれ、一気に近代都市に生まれ変わりました。若い日の労働者たちは作業員として大阪の発展に寄与した人たちでした。あいりん地区の日雇い労働者が最も多かったのは1980年代後半からのバブル経済のころだといわれています。ざっと3万人もの労働者が街にあふれていました。

あいりん地区が「日本で最も危ない街」と呼ばれたのもこのころです。暴動がたびたび起き、警察署まで襲撃されました。日本の警察署は容疑者の逃走を防ぐため、窓に鉄格子が設置されていますが、西成区では警察の襲撃を防ぐ役割を果たしていました。

行き倒れや孤独死が続出し、まるで途上国のスラム街

かつては道端で覚せい剤を販売していたり、薬物注射に使ったとみられる注射器がポイ捨てされたりしていました。この街に身を隠した犯罪者もいて、治安も最悪でした。最近は高齢化が進み、少し大人しくなっていますが、女性が1人で歩けるようなところではありません。

逆に労働者の結核感染率は人口10万当たり516.7人と推計され、国内平均の実に28倍。路上で行き倒れになるホームレス、福祉アパートの一室で誰にも看取られずに孤独死する例も後を絶ちません。まるで開発途上国のスラム街のような光景は、この街の日常といって良いでしょう。

2011年の東日本大震災の直後、事故を起こした福島第一原子力発電所の作業員にあいりん地区からも比較的若い年代の労働者が駆り出されていきました。大金をつかんだからなのか、その多くは戻らず、それ以来高齢化がさらに進んだように感じられます。

政治の光が届かない格差社会の最底辺

あいりん地区では、さまざまなNPO法人や宗教団体が仕事のあっせんや年老いた労働者の世話をしています。大阪市も厳しい財政事情の中、結核対策に億単位の予算を投入し、生活保護の受給を受け入れるなど、高齢者対策に力を入れてきました。それでも、格差社会の最底辺にいる労働者たちに政治の光が十分に差し込んでいるとはとても思えません。西成区内には閑静な住宅街や昭和の風情が残る商店街もあります。

しかし、区内で生まれ育った若者の多くは、あいりん地区のイメージを嫌い、区を離れています。逆に物価が安いことで集まってくるのは貧困層ばかり。あいりん地区のマイナスイメージがもたらした厳しい現実といえるでしょう。

あいりん地区では、高齢化の進行で本名も分からないまま無縁仏として葬られる労働者が増えています。自治体やボランティア任せにせず、国もこうした実態にもっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。

提供:政くらべ

高田泰
50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。
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