日本は育児とキャリアが両立できない?「女性の活躍推進」掲げる安倍政権に、海外報道は悲観的 ニュースフィア 2014年6月2日
政府は28日、第4回となる産業競争力会議(議長:安倍首相)を開催した。子育て支援策や税制の見直しなど、「女性の活躍推進」及び「労働力と働き方」について議論された。
急激に高齢化が進み労働力が不足する日本では、女性の就労増が急務であるとされ、アベノミクスの柱のひとつとなっている。しかし、海外各紙は概ね悲観的なようだ。
壁1:育児との両立
豪ABCは、育児とキャリアの両立を阻む2つの要因を伝えている。保育所の不足と、社会の理解不足だ。
「子供を預けられなければ我々は働くことができない」昨年、東京の杉並区に、保育所の増設を求める母親達が集結したことは、同メディアをはじめ海外各紙でも報じられた。また、現在育休中のある女性は「もし職場復帰するなら、狭くて人手も足りない無認可の保育所に娘を預けなくてはならない」と語っている。
足りないのは保育所だけではない。ある別の女性は「託児所に子供たちを残して外で働くのはよくないこと、女性は自宅で子供たちの世話をするのが当然、という社会の見方がある」と語る。この女性は、小売店のマネージャーとして働いていたが、妊娠後、男性上司から産休を得られず退職に追い込まれたという。
壁2:雇用条件
さらに雇用の格差も立ちはだかる。ブルームバーグは、パートや派遣など増え続ける非正規雇用に着目している。その多くは女性だ。
政府のデータによると、パートタイムは現在労働市場の約40%を占めており、その平均賃金は時間あたりフルタイムの38%以下だという。
同誌は、先進国で唯一、日本の平均賃金が1997年から15%低下しているのは、このパートタイム経済の台頭によるものと分析する。経済が停滞する状況では、契約から正社員への起用など一時雇用が次への踏石となることは稀で、単にずっと低賃金で働かせられるだけだと述べている。
日本は変われるのか
ブルームバーグによると、佐藤ゆかり参議院議員は「共働き家庭の増加に追いつくべく、社会保障や年金システムを見直す必要がある。税体系の歪みを修正して、女性がより自由に働き、社会の中で積極的な役割を担えるよう障壁をなくす必要がある」と語っている。
またABCによると、大臣として少子化対策や男女共同参画を担当する森まさこ参議院議員も「女性の積極的な社会参加は経済成長戦略の最優先事項」と語っており、政府は「3年以内に待機児童をゼロに、2020年までに企業や政府内の役職者の30%を女性が占めることを目指している」という。
日本は今度こそ変われるのだろうか。少なくとも海外各紙の見方は懐疑的だ。ブルームバーグは佐藤ゆかり議員を「日本の数少ない女性議員のひとり」と紹介し、ABCも森大臣を「たった2人しかいない女性閣僚のうちの1人」と伝え、日本の政治における女性の少なさをそれとなく批判している。実際、列国議会同盟によると、日本の衆議院議員480人中、女性は39人で約8%。先進国では最低で、世界平均22.2%を下回る。
「政治家は高齢の男性ばかり。子供の面倒は母親が見るもの、と思っているような人たちが政策を作っているのですから」と前出の育休中女性は嘆く。
またブルームバーグによると、モルガン•スタンレーMUFG証券のロバート•フェルドマン氏も、「アベノミクスは女性の社会参加など労働問題のいくつかに取り組んでいるが、女性は男性の補助的な仕事をするもの、という社会的通念がまだ根強く残っている」と指摘しているという。