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新時代の地方政府のあり方~地方の自立を目指した自治体改革(2012/02/03 政治山)

先進的な地方政治改革の手法を学ぶ研修会「自治体サミット2012 vol.1~新しい時代の地方政府とは その意義と実践~」(主催:自治体サミット研修会、協力:早稲田大学マニフェスト研究所)が2日から2日間にわたり、東京・日本橋で開催され、議会改革、公会計改革、自治体の情報活用などをテーマに、事例紹介や議論が交わされた。1日目同様に100人を超える参加者は熱心に登壇者の話に耳を傾けた。

<議会改革のキーワード>議会の役割を改めて見直す議会改革まとめ

前葉泰幸・津市長前葉泰幸・津市長

2日目は、市職員の「流儀」に挑戦した前葉泰幸・津市長の提言「市長の問題意識を政策形成へ~市役所の流儀を打ち破れ~」からスタート。

前葉市長によると、ここで言う「流儀」とは市職員の行動原理であり、「現状維持、前例踏襲、過剰防衛」であるという。市長が新しい施策を実行しようとしてもやろうとせず、前例がないと嫌がり、市民の批判を過剰に心配をする。その「流儀」を改善するために、市長はトップダウン型の政策立案と我慢強い説得を行いながら、職員の意識改革を図っていった。

また、これまで市長の判断を最後に行っていた予算編成のプロセスにメスを入れ、まず市長が政策の方向性を提示しながら政策形成を行い、また案が決定するまで行っていなかった情報発信も、形成過程から公開していった。職員の意識を変えていくには、「何より職員に我慢強く説得していくことが重要だ」と述べた。

続いて、新日本有限責任監査法人が発表した「公会計とパブリックマネジメントの現場~公会計情報の活用~」では、現在、地方が取り組んでいる企業会計の手法を役所などの会計を意味する公会計に導入する試みについて、現状と課題の整理、そして提言がなされた。

これまでは単式簿記と言われる方式で自治体は財政状況を整理してきた。これにより現在の資産の正しい評価ができず、将来へのツケを正しく計算できないという。分かりやすいのは、職員に退職金が払われる際に発行される退職金手当債だ。「今のお金の流れ」を記録する単式簿記では、30年後に職員が退職金を受け取る負担を把握することができない。そのため地方にはこういった「隠れた借金」が多く存在しているという。

複式簿記を採用する公会計改革を行うことにより、資産と将来の負担を把握。また実行した政策の評価を正しくできるようになるとし、改革の重要性を強調した。現在、多くの自治体で採用されており総務省が推奨する改訂モデル、基準モデルについては短所を指摘、新しいモデルを作り出すべきだとした。

議会改革を支える議会事務局改革~議会事務局プレゼン・大討論会~議会改革を支える議会事務局改革~議会事務局プレゼン・大討論会~

パネルディスカッションでは廣瀬克哉法政大教授をコーディネーターとして、「議会改革を支える議会事務局改革~議会事務局プレゼン・大討論会~」と題し先進的な試みを行った各自治体の議会事務局関係者と学者、研究員による討論が行われた。

鳥羽市議会の議会事務局員である北村純一氏は、Ustream(ユーストリーム)と呼ばれるネット中継サービスを市議会へ導入し、他自治体ではあまり公開されることのない常任委員会も公開の場とした。従来の広報誌、市民への報告会だけでなくITを導入することで、「議会の見える化」を一気に推し進めた。中継が民間サービスであるため不安定さについて質問があったが、「経験上、光回線で中継すれば問題はない」と断言した。

陸前高田市の千葉徳次議会事務局長は、行政側のみで作成されることの多い復興計画に、議会が積極的に参画した事例を紹介。前三重県議会事務局次長の高沖秀宣氏は、新たに法改正が行われたことで可能になった議会事務局の共同設置案のプレゼンを行った。

議会改革の先進自治体として有名な元栗山町議会事務局長の中尾修東京財団研究員と江藤俊明山梨学院大教授は、それぞれの知見から3者の提案にコメント。共同設置案に対しては何度か応酬があるなど、積極的な議論が繰り広げられた。

そのほか、「新たな資金調達手法~茨城県におけるレベニュー信託の事例」(ゴールドマン・サックス証券)では、アメリカの州政府で一般的に使われている、事業の目的別に発行する債券で、民間資金を活用するレベニュー債の考え方を導入した茨城県の事例を紹介。「議員/議会/自治体の情報活用 最新事例紹介」(株式会社ガラパゴス、日経メディアマーケティング株式会社)では、発表者がスマートフォン向けアプリやソーシャルメディアと呼ばれるウェブサービスのマーケティングに強い素地を生かし、議員や自治体がTwitterやFacebookなどを積極的に利用した事例を説明した。

  • 公会計とパブリックマネジメントの現場~公会計情報の活用~
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    新たな情報活用戦略とは
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早稲田大学マニフェスト研究所

<公会計改革ってなに?>行財政改革につながる公会計改革のまとめ
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