【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第17回 「効果的な」議会改革と「やりがい感のない」議会改革 (2013/1/17 早大マニフェスト研究所)
政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。「議会改革」をテーマにした「週刊 地方議員」の連載では、研究所の調査結果をもとにして議会改革の最新事例を紹介しながら、議会本来の役割について考えていきます。第17回は「「効果的な」議会改革と「やりがい感のない」議会改革」をお届けします。
議会改革は一段落している?
全国の地方議会では、議会改革に取り組んでいるところが増加しています。しかし、その活動自体もひとまず落ち着いているように思われます。今、議会で何が起こっているのでしょうか。
なぜ議会改革を行うのか
本連載が始まったとき、「なぜ地方議会が動き始めたのか」についての要因を記しました。当研究所が毎年行っている全国すべての地方議会を対象としたアンケート調査の回答によると、いずれかの改革に着手している議会は着実に増加しているようですが、議員がいくら頑張って議会を変えようとしても、議会に対する住民の見方は以前と変わらず厳しいようです。
今回は、「住民が議会改革に理解をあまり示さないのに、なぜ取り組んでいるのか」という点について考えてみましょう。
議会改革とは、どのような目的で行われるのでしょうか。議会改革を実行しても住民は議会へ関心を持たず、議会への信頼感も高まらないのであれば、議会改革ではなく別のことに取り組んだ方がよいのではないか、と考えられないでしょうか。住民に喜んでいただくために議会改革を行っているのであれば、「○○という議会改革を行った結果、住民の××がよくなった」という効果が見えてくることが必要となります。
例えば、「今までは取り組んでいなかった“議会報告会”を初めてやってみたところ、住民に議会についてより知ってもらえた。それだけでなく、住民から出された意見を政策として取りまとめ、首長部門へ提案したところ、課題が解決できた」といったような具体的な成果です。住民の方々にとって「議会活動に変化を与えた結果、議会がどのようになったのか」「自分たちの地域や生活が、どのように変化したか」が伝わらないと、議会への信頼はなかなか得られにくいのではないでしょうか。
もう一度基本に立ち返ることが重要
「あの議会がやっているから、うちも何か取り組んだ方がよいのではないか」というように、議会活動の目的が明らかになっていない議会改革は、「形だけまねた」「とりあえずやってみた」で終わってしまう場合が多いでしょう。それは、取り組んだ議会側にも明確な目的や目標がないので、実行してみても変化に気が付かないケースが見受けられます。そこには、「やりがい感」などはありません。議員自身に充実感がないと、次へ取り組む意欲はなかなか出てこないでしょう。議会の中には、「議会改革の一通りのことをやっています」と言われるところがときどき見受けられます。一方で、議員の活動姿勢にあまり変化が見られないのは、この「やりがい感」がないことが原因だと考えられます。やりがい感をつくるためには「取り組む際のゴール(=明確な目標)」が必要なのです。
議会改革は「誰のために」「何のために」やっているのでしょうか。そして、取り組むときには「何をどの程度まで、誰が、どのようにして、いつまでに」といった“具体的な手法”を考えておくことが大変重要です。議会改革に取り組み、その後、活動が停滞している議会や議員がいらっしゃるのであれば、あらためて「議会とは何をするところか」という基本を確認することをお勧めいたします。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。