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近所のゴミ屋敷、どう対応すればよい?法的な手段はとれるのか? (2018/2/20 JIJICO

関連ワード : ごみ問題 条例 法律 

ゴミ屋敷に対処する条例がない街では法的な対処が難しい現状

いわゆるゴミ屋敷問題に対しては、条例を定めて対処する自治体が増えていますが、条例がない場合には、どうしたらよいのでしょうか。

まず、自宅の敷地内に大量のゴミを溜め込んでいる場合、これを直接に規制する国の法令は見当たりません。

廃棄物処理法では、「廃棄物」を「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。」と定義付けているところ、憲法29条1項が財産権を保障しているため、当の住人が「ゴミではない」「自分の財産だ」などと主張してしまえば、それをゴミ(廃棄物)と決め付けることは非常に難しいからです。

また、廃棄物処理法5条1項は、「土地又は建物の占有者(括弧内省略)は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない。」と定めているものの、これに違反する場合の罰則が定められておらず、努力義務に過ぎません。

ゴミ屋敷

生活環境を侵害されている近隣住民としては、精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求をすることもできますし、自己所有の不動産の価値が下がったとして損害賠償請求をすることも可能そうに思えます。

しかし、司法にこれを認めさせるためには、損害の立証をしなければならず、特に、近隣問題の場合は「受忍限度論」というものがあって、生じた損害が受忍限度を超えるものでなければ行為者は責任を負わないものとされているため、受任限度を超えるものであることまで立証しなければなりません。

それ以上に、他人の自宅敷地内にあるゴミの撤去まで求める権利を近隣住民に認めて司法による救済を図るなどということは、現行法上は、やはり難しいと言わざるを得ません。

自治体への働きかけ、条例制定への働きかけに期待せざるを得ない

そうすると、ゴミ屋敷条例のない地域にあるゴミ屋敷の近隣住民としては、ゴミを撤去してもらうために、町内会や自治体を通じて当の住民に粘り強く働きかけてもらったり、あるいは、このような問題提起をすることで、条例の制定に繋がっていくことを期待するしかありません。

ゴミ屋敷問題は高齢者の増加も関係しているのでは。福祉的支援も重要

もちろん、国が法律を定めて対処できるようにしてくれれば良いのですが、翻って考えてみるに、このようなゴミ屋敷問題は、昔から存在したというよりも、最近になって問題化するようになってきたのではないかといった印象を受けます。

ゴミを溜め込んでしまった本人に責任があることは否定できないのですが、その背景には、認知症、加齢による身体機能の低下や地域からの孤立などの問題が潜んでいるため、法的規制とは別に本人に寄り添った福祉的な支援も無視してはならないでしょう。

提供:JIJICO

著者プロフィール
田沢剛

田沢 剛/弁護士
裁判官として数々の紛争処理を経験してきたこと
裁判官時代に民事、刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり、裁判所がどのような点を問題にしているのか、どの部分の証拠が足りないのかなど、事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。

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