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“何もしない”のに革新的な働き方改革の地味にスゴイ中身 (2017/5/10 瓦版

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社員の自主性に最大限委ねる「大人の働き方改革」

(株)インテージホールディングス 経営企画部の松尾重義氏

政府が推進する働き方改革の追い風に乗るように、多くの企業が、労働環境の改善に動いている。テクノロジーを活用した多額の投資を伴うような業務スタイル刷新に取り組む企業も珍しくない。そうした中、最小限の投資や施策で、最大限の効果を目指す“働き方改革”を進めるのが(株)インテージホールディングスだ。社員の自主性に最大限に委ねるそのやり方は、地味にスゴイ、まさに「大人の働き方改革」といえる。

あえて何もしない理由

時短勤務、育児休暇、週休3日制…。育児と仕事の両立、残業過多の解消、業務効率化など、働き方改革の一環で、新たに制度を導入する企業は少なくない。枠組みを設定することで、効率的に職場の環境改善を推進できるからだ。だが、本当にそれで万事OKなのか。インテージグループが進める働き方改革は、まるでそうした取り組み対するアンチテーゼの様でもある。

(株)インテージホールディングス 経営企画部の松尾重義氏2

ズバリ、“ほとんど何もしない”のだ。一応、これまで10時30分から15時だったコアタイムを撤廃し、フルフレックスを導入。さらにリモートワークの拡充という“制度”は導入している。だがそれは、あくまで社員に対する制約を取り払うのがその目的。つまり、より自律性を高めるための施策だ。この2つによって、社員は、各自の裁量で時間も場所も自在にコントロールできるようになる。

「時短勤務や育児休暇などの制度を導入すれば、それなりの効果はあるのかもしれません。しかし、結局は制度が増えることは足かせが増えることもなる。例えば時短勤務だけで本当にすべての子育て世代の社員に貢献するのか。それ以前に業務価値の最大化に役立つのか、ということです。ならば、制約をできるだけなくし、各自が個々の裁量で、一番、クライアントに対し、効果を発揮できるよう仕事と向き合ってほしい。そのためには制約ができるだけ少ないことが一番と考えています」と同社でグループの働き方改革をけん引する経営企画部の松尾重義氏は説明する。

重要なのはあくまでも仕事での成果

重要なのは、仕事での成果。そこが起点だから、あくまでも働き方は個々に委ねる。午前中、家でゆったりしながら企画を練って、午後からはミーティングために出社。午前はオフィスで仕事をして、午後からは家で仕事をしながら介護など、社員は、仕事の成果を十分に考慮しながらプライベートやバイオリズムとバランスを取りながら、自身の裁量で業務を最大化する。これが、同社の進める働き方改革の“全貌”だ。

もちろん、自由奔放、なんでもありというわけではない。行動は基本、チーム単位。スケジュールは、1週間をベースにチームで共有する。この2つが最低限のルールだ。信用はしていても、個々が何をしているのか分からない状態はつくらない。組織に属しているのだから、当然といえるだろう。そこさえクリアすれば、基本的に裁量は働く側に全面的に委ねる、まさに信頼関係をベースにした“大人の働き方改革”という言葉がしっくりくる取り組みといえるだろう。

(株)インテージホールディングス 経営企画部の松尾重義氏3

「我々はこれまででも月の残業時間が20時間ほど。もちろん残業時間はさらに削減していきたいが、それだけが課題というわけではない。そうした中で、中期の目標を考えたとき、働き方改革が重要となった。それは何かというと、社員一人ひとりが自律し、プロフェッショナルとして今まで以上に高い付加価値を提供できるようになること。そのために社員の側へ裁量を大幅に振り分けたということです」と松尾氏は、こうしたスタイルで働き方改革を進める狙いを明かす。

唯一の目立ったアクションが絶大な“効果”に

至ってクールに言ってのける松尾氏。だが、本当にこれで改革がうまくいくのか…。もともとそうした資質のある社員が多いのだとしても、少々疑問は残る。この謎を解くカギは、改革推進と同時に誕生した新たなポジションにある。実は、同社取締役の仁司与志矢氏が、働き方改革推進担当に就任。幹部自らが先頭に立つことで、言葉以上のメッセージを送っている。

「働き方改革を推進する話が出たときに仁司が自ら新ポストに就任することを申し出ました。もともと働き方改革は関心のあるテーマだったということもあるようです。このことで、グループ全体にも本気度が伝わったと思います。そもそも、こうしたマインドに働きかけるメッセージはこれまでなかったので、“違い”を感じていると思います」と松尾氏。“なにもしない改革”の最大の肝は、実はこの人事といっていいかもしれない。

(株)インテージホールディングス 経営企画部の松尾重義氏4

なんのための働き方改革なのか。本来、企業や従業員は、取り組む前にしっかりとそこに向き合う必要がある。「残業をなくすため」、「女性活躍を推進するため」…。どれも間違いではないだろう。だが、忘れてはならないのは、個々の社員がそのポテンシャルをどこまで最大化できるかだ。そこに目を向けなければ、どんなにすぐれた制度もすぐに形骸化する。改革どころか改善さえおぼつかないだろう。気の利いた風の制度だけがその特効薬でないことにも気づくハズだ。

ツール面でも特別な投資はほぼなしで行われているという同社の“働き方改革”。まさにないないづくしのその取り組み方は、痛快でさえある。今年度は、グループの国内15社でそれぞれ取り組みを開始していく予定だが、先行して実施しているホールディングスの半歩先を行くようなそのアプローチが提示するものは、働き方改革に取り組む多くの企業にとって、逆説的ながらも示唆に富んでいるといえるのではないだろうか…。

◇        ◇

【会社概要】
社名: 株式会社インテージホールディングス
英文社名: INTAGE HOLDINGS Inc.
創業: 1960年(昭和35年)3月
代表者: 代表取締役社長 宮首 賢治
連結従業員数: 2,349人(2016年3月末時点)
事業内容: マーケティング支援事業(消費財・サービス、ヘルスケア)、ビジネスインテリジェンス事業
HP: http://www.intageholdings.co.jp/

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