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保育所・幼稚園の第2子無料化で少子化は止められるか? (2016/9/27 JIJICO

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子育て支援をアピールする自治体

少子高齢化という言葉が叫ばれて久しいですが、いまや国や自治体では様々な対策がとられています。その一つとして「第2子であれば保育園や幼稚園にかかる費用が無料になる」という制度を取っている自治体が増えていることをご存知でしょうか。

「いやいや、ウチが住んでいるところでは、第2子は半額」という方や「第3子は無料」という方もいらっしゃると思います。いま、国の制度としては前述の「第2子は半額、第3子は無料」(一定の条件つき)という制度を敷いており、多くの自治体もそれに則っているからです。

お母さんと子ども

冒頭の「第2子であれば保育園や幼稚園にかかる費用が無料になる」制度については、自治体により年収要件や年齢要件が異なります。年収要件や年齢要件を全く設けていない自治体もあれば、そうでない自治体もあります。また、さらに優遇して「第1子から無料」としている自治体もあります。

なぜこのように自治体が工夫をこらすかというと「少子化を食い止めたいから」。「子どもが増えると経済的に厳しいので子どもはいらない」あるいは「子どもは一人でいい」という世帯が多いと考えた自治体の対策だというわけです。

お金だけではない!出産を躊躇する理由

もちろん、少子化に対する官民のそれぞれの施策は両輪だと思いますから、もちろんこのような自治体の取り組みはあるに越したことはないと思います。

しかし、忘れてはならないのは、少子化の理由は「お金がかかる」ということだけではないということ。お金より何より、パワーが要ります。パワーというのは、生まれた子どもに向けるパワー、第一子に向けるパワー、パートナーやその他家族に向けるパワー、そして会社(仕事)に向けるパワー等。言わずもがなですが、お金ではない理由がそこにはあるということです。

「お金」よりも「やりがい」を感じられるように支援することが大切

ここで突然ですが、みなさんに質問です。これまでと同じ仕事をしていて、もし今月からお給料が5万円増えると言われたら嬉しいでしょうか?ほとんどの方が嬉しいと感じるのではないかと思います。しかし、半年もすればこの「5万円上がった給料額」に慣れてしまって「当たり前」になります。

ハーズバーグという人は、これら金銭的報酬を「衛生要因」と表現しています。つまり「無かったら不満だけど、あっても満足感が高まる要素にはならない」というもの。今回の保育料対策についても、同じように衛生要因ではないかと感じます。はじめは保育料が安い、あるいはかからないことにお得感や喜びが生まれます。しかし、半年もすれば「安いこと・無料であることが当たり前」になってしまい、それ以外の要素に目が向けられてくるわけです。

前述のハーズバーグは、物事の動機には「衛生要因」ともう一つ「動機付け要因」があると言っています。動機付け要因とは何かというと「やりがい」です。第2子以降を育てることに対して、金銭的要因「以外」のやりがいが生まれることが感じられるのであれば、第2子以降を考える夫婦が増えるのではないでしょうか。子どもは生まれてみなければ、性格・特徴等分かりません。また何も考えずに出産をするのは無責任です。しかし、少なくとも「やりがい」や「喜び」よりも「大変さ」にクローズアップされるこの世の中自体が「少子化」につながっていると感じます。

つい先日、ママ友達に聞いてみました。「あと1人子どもを産まない理由は?」。すると返ってきた答えの8割が「今すでに大変なのに、これ以上大変になることが想像つかない」というものでした。それらを乗り越えるために必要な要素としては、本人の意識はもちろんのこと家族の協力や会社での理解等、挙げだせばきりがありません。しかし、見方を変えれば「子どもができたらこんなに大変だ」「こんなにお金がかかる」という話だけではなく「子ども達がいたからこんなに素晴らしい人生だった」というやりがいに視点をあてた話がもっと世の中に増えたら…。単なる保育料無料といった金銭解決だけではない世の中の広がり方があるのではないでしょうか。そんな風に感じます。

提供:JIJICO

著者プロフィール
神野 沙樹/社会保険労務士神野 沙樹/社会保険労務士
株式会社Niesul(KES社労士事務所併設)
1982年生まれ。大阪府出身。 2004年立命館大学 法学部法学科卒業後、機械メーカーに入社。株主総会関連書類や有価証券報告書の作成、各種契約書のチェックなどの法務関連業務に従事。 社会保険労務士事務所勤務を経て2010年開業。 社労士の受験指導をする中で、受講生の「分かった!」というひらめきの顔を見ることに喜びを見出し、研修講師に目覚める。楽しい研修とその分かりやすさには定評がある。
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