集団的自衛権の行使容認に賛成すべきか?反対すべきか?  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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集団的自衛権の行使容認に賛成すべきか?反対すべきか? (2014/6/9 太田雄基 日本政策学校4期生/政治とITプロジェクト所属)

集団的自衛権の行使容認をめぐるニュースが毎日のように報道されています。そもそも集団的自衛権とはなにか、いま、なぜ、議論されているのか、賛成・反対の立場でそれぞれどのような議論がなされているのか、日本政策学校第4期生の太田雄基さんに寄稿いただきました。

(写真:陸上自衛隊HPより)

(写真:陸上自衛隊HPより)

◇        ◇        ◇

 政府は現在、集団的自衛権の行使は憲法違反であるとの立場をとっているが、中国の影響力が増大していることや米国の国力が相対的に低下しているなど、国家間のパワーバランスが変化していること等を背景とし、安倍首相のリーダーシップの下、集団的自衛権の行使容認を憲法解釈の変更で行うよう議論を続けている。

 集団的自衛権の行使容認については、アジア太平洋地域の安全保障情勢が悪化しており、日米安全保障体制を強化する必要があるとして、賛成する立場がある一方、他国の戦争に巻き込まれる可能性が高まるなど平和主義からの逸脱であるとして、反対する立場や、厳格な「憲法改正」ではなく、簡易な「憲法解釈の変更」で集団的自衛権の行使容認を行うことは、立憲主義からの逸脱であるとして、反対する立場がある。

そもそも集団的自衛権とはなにか?

 政府は、集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利」であると定義している。具体的には、日本の同盟国である米国が他国から武力攻撃を受けた場合、日本が反撃を行える権利が、集団的自衛権である。

 また、政府は、憲法と集団的自衛権の関係について、「憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている」とし、集団的自衛権の行使は憲法違反であるとの立場をとっている。

いま、なぜ、集団的自衛権が議論されているのか?

 まず、国家間のパワーバランスが変化していることが、1つ目の理由である。中国の影響力が増大し、アジア太平洋地域において領土等を巡る不安定な状況が生まれており、緊張が高まっている。

 一方、戦後日本の安全は、日米安全保障体制による米国の軍事力のもとで確保されてきたが、米国は経済力で中国に追われるなど相対的に国力が低下してきており、米国の庇護を一方的には期待できない状況に変化している。

 そこで、日米安全保障体制をより持続可能なものとするために、より公平な負担を担うべく、集団的自衛権の行使容認について、政府・与党で議論が続いている。

 次に、安倍首相のリーダーシップが発揮されていることが、2つ目の理由である。安倍首相は有識者による私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置し、2014(平成26)年5月15日に、憲法と集団的自衛権の関係等に関して報告書を取りまとめた。

 安倍首相は、報告書を踏まえて、日本人が海外で紛争に巻き込まれる事例を示し、「米国が救助、輸送中に日本近海で攻撃があるかもしれない」とし、「日本人自身が攻撃を受けていなければ、日本人が乗っている米国船を自衛隊は守れない。これが憲法の現在の解釈だ」と述べ、集団的自衛権の行使を容認するよう憲法の解釈を見直すべきとの考えを示した。

集団的自衛権の行使容認に賛成・反対それぞれの主張

「賛成する」立場の主張 「反対する」立場の主張
実体面から反対 手続面から反対
・アジア太平洋地域の安全保障情勢が悪化しており、日米安全保障体制を強化する必要がある。
・安倍首相の祖父の岸信介元首相が手がけた1960(昭和35)年の日米安全保障条約改定時に、「改正によって日本は戦争に巻き込まれる」と反対運動が起きたが、50年たってむしろ平和がより確固たるものとなっている。集団的自衛権の行使を容認し、日米安全保障体制を強化することで、抑止力が高まり、より戦争に巻き込まれなくなる。
・集団的自衛権の行使容認は、憲法の平和主義からの逸脱である。日本が他国を守るための戦争に参加することを認めることになる。当然、他国の戦争に巻き込まれる可能性が高まる。
・日米安全保障体制の強化には、集団的自衛権の行使容認ではなく、経済協力を中心としたソフトパワーに活路を見いだすべきである。
・集団的自衛権の行使容認を、厳格な「憲法改正」ではなく、簡易な「憲法解釈の変更」で行うことは、立憲主義からの逸脱である。
・集団的自衛権の行使容認は、自国の防衛に専念してきた戦後日本が、海外での戦争に参加できる道を開く安全保障政策の大転換であり、憲法の根幹を一内閣の判断で好きに解釈していいとなれば、その条文は存在しないのと同じであり、政府や国会が憲法に制約されるという立憲主義に反している。
太田雄基氏太田 雄基(おおた ゆうき)
日本政策学校第4期生/政治とITプロジェクト所属
函館ラ・サール高等学校卒、東北大学法学部卒、東北大学公共政策大学院修了。現在、金融庁に勤務するかたわら、日本政策学校で政治について学ぶ。高校野球部OB会活動がきっかけで、函館市に足しげく帰省するようになる。金融庁での職務経験や大学・大学院・政策学校での研究成果をもとに、函館市の人口減少、市街地の空洞化・老朽化を函館市の全世代で解決するための活動を展開中。