集団的自衛権問題、「“普通の国”に変えるため」と米紙が一定の理解 韓国紙は“異常な国”と批判 ニュースフィア 2014年5月20日
集団的自衛権の行使を目指す安倍政権の憲法再解釈に向けた動きが、ここに来て加速している。欧米メディアの関心も高く、社説や読者の声を通じて賛否両論の意見が寄せられている。
一方、韓国メディアは「朝鮮半島に関連した事案については、事前協議と韓国政府の同意が必要だ」(中央日報)、「三権分立の精神が失われた異常な国と言わざるを得ない」(朝鮮日報)など、憲法解釈による日本の集団的自衛権の行使に対して不安を表明している。
韓国紙「三権分立の失われた異常な国」と猛批判
中央日報は、「日帝侵略戦争の被害国が、日本の積極的な安保を憂慮するのは当然だ。安倍首相が日帝の軍国主義の象徴である靖国神社を参拝して歴史修正主義の動きを見せているのだから、なおさらだ」と批判する。これについては、ワシントン・ポストの社説も中国・韓国の不安を無用に煽る行為だと批判している。
同紙は一方で、北朝鮮の対韓威嚇などが強まる現在の東アジア情勢下では、日本の集団的自衛権の行使もやむを得ない場合もあるとしている。ただし、朝鮮半島に関係する軍事行動にあたっては、事前協議と韓国の同意が必要だと論じている。
朝鮮日報はより批判的だ。これまでの日本の歴代政権は、憲法改正でこの問題を解決しようとしてきたが、安倍政権はそれが難しいと見るや「“解釈改憲”というどの国にもない手法」に転じたと論じる。そして、政府が恣意的に憲法を解釈できるとなれば、「三権分立が失われた異常な国だと言わざるを得ない」と痛烈に批判。そうなれば「日本は今後、国際社会で民主主義国家あるいは法治国家とはみなされなくなるだろう」と社説を結んでいる。
英紙の読者投稿は賛否両論
英紙・ガーディアンは電子版で、「日本国民の意見は分かれている」として、集団的自衛権行使に対する読者の意見を世界中から募集している。今のところ掲載されている「支持」の主張は日本人のものと思われる投稿が一件。中間的な意見が一件、反対意見も一件だ。
支持派の「トモユキ」氏は「憲法9条と自衛隊の間に矛盾がある。そのため、現行の憲法を見直すことには賛成だ」と主張。「解釈の見直しは改正の初めの一歩であり、そのやりかたにも同意する」としている。ただし、「自衛は自衛であり、侵略ではない」と述べ、専守防衛の枠を超えて集団的自衛権を行使することに対しては反対だとしている。
一方、日本在住経験があるという「マット・ローデン」氏は、中国・北朝鮮の脅威に対する漠然とした不安に基いて議論が進んでいると主張。「このよう重要な決定を行う際には、自国を省みた冷静な将来分析が必要だ。そのような慎重な議論が国民の間で行われているようには思えない」と述べている。そして、「平和憲法は今もなお、世界に対して大きく誇るべきものだ」としている。
「日本を“普通の国”に変えるための理にかなった道筋」
ワシントン・ポストの社説は、憲法再解釈の動きそのものについては「理にかなっている」と理解を示している。
たとえば、もし、北朝鮮が米軍の空母に向けてミサイルを撃ち、日本がそれを撃ち落とす能力があるのであれば、日本がそれを実行することに「乗組員たちは全員“イエス”と言うだろう」と記す。
社説は、憲法再解釈によって、国連平和維持活動における日本の役割が高まるとも述べる。さらに、中国の海洋進出に対するベトナムやフィリピンへの自衛隊派遣の可能性にも言及している。同紙はこれらを総括して、「戦後70年近くを経て日本を“普通の国”に変えるための、理にかなった道筋」と評している。