日本、集団的自衛権の行使容認へ一歩 韓国紙、北朝鮮の挑発抑制に期待も、けん制忘れず ニュースフィア 2014年5月15日
安倍晋三首相選出の有識者による「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、集団的自衛権の行使容認についての報告書を15日に提出する。憲法の再解釈によって、集団的自衛権の行使を推奨する内容になるとみられる。
安倍首相は報告書提出を受け、国の防衛の基本的な方向性について、記者会見を開く予定だ。
首相は、政府の集団的自衛権に関する立場を、臨時国会が召集される今年秋までには明確にしたい考えだ。
保守派の悲願
日本の保守派は、「自国が攻撃された時にしか攻撃できない」という法の解釈に長年悶々としてきた、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
第二次世界大戦以後、日本は国際紛争解決の手段としての武力を放棄し、保守派の念願が叶うことはこれまでなかった。海外への自衛隊派遣は人道援助目的に限られ、イラクやアフガニスタンでは、戦闘を含まない平和維持活動や消極的な任務などにとどまってきた。
そのような自衛隊の活動内容に議論はあったが、日本国民はそれを維持することを選んできた。しかし最近では、現状が時代遅れ、あるいは、国家主義的思想の一団からは大昔の戦争の屈辱を引きずっていると批判する声もある、と同紙は報じている。
与党内にも根強い反発
ライデン大学(オランダ)のブライス・ウェイクフィールド教授(日本研究)は、集団的自衛権行使容認について「非常に大きな変化だ」と話す。「集団的自衛権を認めないこれまでの憲法解釈は、1954年(自衛隊設置)以来ほとんど揺らぐことはなかった」(フィナンシャル・タイムズ紙)
自民党の中には、自衛隊活動の縛りを解き、危険や責任を拡大することには消極的な者もいる。
党総務会長の野田聖子氏は、「60年間違えることの無かった、憲法解釈だ」と容認に反対の立場だ。同氏は、集団的自衛権を認めれば「自衛隊は正式な軍隊だ。軍隊とは、人を殺し、また自分も殺される危険があるものだ」(フィナンシャル・タイムズ紙)としている。
国民の不安も高まっているようだ。1年前、集団的自衛権の容認を支持する声は反対を上回っていた。しかしNHKが今月行った調査では41%が反対、34%が支持と数字が逆転した。
アメリカは歓迎、複雑な心境の韓国
安倍首相の諮問委員会のメンバーでもある、駒沢大学の西修名誉教授は、「オバマ大統領は、アメリカがこれ以上世界の警察でありつづけることはないと言っている」「アメリカの存在は弱まり、中国が台頭してきている」(フィナンシャル・タイムズ紙)と集団的自衛権行使の必要性を説明している。
バラク・オバマ米大統領は4月の日本訪問で、安倍首相の容認の考えを支持した。
しかし中国と韓国は、このような日本の動きに批判的だ。韓国のコリア・ヘラルド紙は、過去の日本軍国主義の犠牲となった韓国と中国は苛立っている、と報じている。日本政府は戦争で犯した自国の残虐行為を十分に認識することなく、集団的自衛権行使容認へ進んでいる、と批判している。
ただ韓国は、日本が国際的な防衛の役割を拡大することに複雑な心境だという。日本がその役割を広げることは、北朝鮮による挑発行為を抑制することになるからだ。しかし同時に、1910-45年の植民地時代の苦い記憶を呼び起こさせる不安なことでもある、と同紙は伝えている。
また、韓国外交部の趙泰永(チョ・テヨン)報道官は13日、日本の集団的自衛権行使容認について「朝鮮半島と関連した事項については韓国政府の明示的な同意が必要だ」「日本もこれを十分に分かっている」(朝鮮日報)と述べたという。