「2012年山口県知事選挙」のここがポイント
~環太平洋大学講師・林紀行氏が語る~(2012/07/11 政治山)
政治山では、7月29日に投開票が行われる山口県知事選挙に先立ち、同知事選の見どころや注目ポイントを環太平洋大学講師の林紀行氏に聞いた。同氏は、立候補予定者4人を招いて7月6日に行われた山口県知事選の公開討論会でコーディネーターを務めるなど、今回の選挙戦に早い時期から関わっている。原発問題や地元経済問題など、さまざまな課題を抱える「2012年山口県知事選挙」を、地元有権者はもちろん、県外の方にもわかりやすく解説します。
山口県の「原発」と「基地」をどうするか?
コーディネーターを務めた林紀行氏
「まず、大きな争点の1つとして原発問題があります。今回は、原発建設の行方を問う初めての大型選挙ではないでしょうか。その選挙に、橋下徹大阪市長のもとで反原発を進めたブレーンが立候補する予定ということになり、大きな話題になっています」
「また、山口県は、在日米軍岩国基地を抱え、オスプレイ配備をめぐる問題も出ています。『原発・基地問題』という大テーマが県民に問われているという背景から、全国的に注目を浴びる選挙となりました」
「ただ、県民は、こういった非日常の争点だけでなく、身近である日常の問題にこそ大きな関心があるのではないでしょうか。少子高齢化や若者の県外転出の問題は、国民的な興味を引くテーマではありませんが、今後の山口県を考える上では、避けることができません。また、半導体大手のルネサスエレクトロニクスが工場縮小を発表しました。産業構造の問題も、県民生活に直結した争点となるでしょう」
「以上のことからすると、原発問題、基地問題という大テーマと生活に身近な今の問題があるということをまず理解すべきだと思います」
公開討論会の論点はどこにあった?
「他にも、中小企業対策・企業支援や公共事業への考え方についても聞きました。『今あるものを使う』のか、『新しく持ってくる』のかは別としても、『新しい産業を作りたい』という面では共通していました」
「ただ、具体策をみると、違ったスタンスを読み取ることができます。たとえば、山口県経済を活性化する方法だけを見ても、『人財のネットワークを活用する』『緑のエネルギー革命』『産業金融』『県民ニーズの抽出が必要』など、多岐にわたるアイディアが出てきました。立候補予定者がどの分野に力を入れているのかを、公開討論会での発言や政策集を見て、判断してほしいと思います。
「立候補予定者の考えを見ていくと、かなりの違いが出たと思います。違いが出るというのは、比較するうえでよいことだと思います。一部メディアでは、上関原発建設について全候補が見直しで一致と書いていましたが、私はそうは思いませんでした。原発問題には、全力で取り組んでいくというトーンは共通していましたが、詳細をみると、『白紙撤回』『凍結』『誰もできると思っていない』『原発の新しい役割を考えるべき』と、主張に違いがみられました。こういったセンシティブな問題は、単なる『見直し』としてまとめられるほど、単純なものではないでしょう。中国電力へのスタンス、国のエネルギー政策に対する態度、現在の原発政策への代替案、再生可能エネルギーや自然エネルギーの活用の是非など、具体的に何をやるかといったところを、政策の現実性や成果の予測などの観点から見比べてほしいと思います。
次期知事選びのポイントは?
「立候補予定者の主張は、みなさんの経歴やあり方に裏打ちされた政策になっているはずです。個々の政策を1つひとつバラバラに見るのではなく、経歴など全体を見て一貫性があるのかを感じながらみてほしいと思います」
「各立候補予定者の政策集をみましたが、『苦い薬』は、あまり入っていないようです。すでに、わが国は、何でもできるバラ色の時代は終わりました。ある政策を実行するかわりに、県民に耐えてもらうことは何かを読み取ってほしいと思います」
- 林 紀行
- 現在、環太平洋大学(岡山県岡山市)講師。早大マニフェスト研究所招聘研究員、ローカル・マニフェスト推進ネットワーク中国運営委員も務める。