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松下政経塾卒塾フォーラム「未来会議~これからの政治と教育を考えよう~」レポート(2012/10/12 松下政経塾31期生 西野偉彦)

 将来世代の声を政治に生かすための政治参加のあり方と政治参加意識の育成について議論する松下政経塾卒塾フォーラム「未来会議~これからの政治と教育を考えよう~」が9月29日、東京・港区の明治学院大学で開催された。明治学院大教授の川上和久氏の講演や前神奈川県知事の松沢成文氏ら3名の有識者のパネルディスカッションなどが行われたイベントの模様と、「シティズンシップ教育」への思いを、西野偉彦氏に寄稿してもらった。

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 松下政経塾卒塾フォーラム「未来会議~これからの政治と教育を考えよう~」(公益財団法人松下政経塾主催・明治学院大学法学部共催)を9月29日に開催した。明治学院大学法学部教授の川上和久氏による基調講演、私が行った塾生研修報告、前神奈川県知事の松沢成文氏、共同通信論説委員の川上高志氏とNPO「Youth Create」代表理事の原田謙介氏の3名を交えたパネルディスカッション、という三部構成である。

 企画運営は3カ月前から行い、大学生や社会人がスタッフとして関わって下さった。当日は、約200名の来場者に質問を投げかけ、意思表示用の「緑(=YES)」「赤(=NO)」の紙を掲げて頂きつつ、パネリストとの活発なクロストークも行うことができた。本フォーラム開催に際し、多大なご協力を頂いた皆様に、この場を借りて厚く御礼を申し上げたい。

パネルディスカッションの登壇者。左から前神奈川県知事の松沢成文氏、NPO「Youth Create」代表理事の原田謙介氏、共同通信論説委員の川上高志氏。
パネルディスカッションの登壇者。左から前神奈川県知事の松沢成文氏、NPO「Youth Create」代表理事の原田謙介氏、共同通信論説委員の川上高志氏。
西野氏は「シティズンシップ教育」について、塾生研修報告を行った。
西野氏は「シティズンシップ教育」について、塾生研修報告を行った。

未来のために「政治参加意識」を育む

 日本に「政治参加を学ぶ教育」を創る―。これが私の志である。その原点は、学生時代に多くの政治家から「若い世代への政策は後回し。政治に参加しないから当たり前だ」という言葉をかけられたことにある。たしかに、国や地方の選挙において、20代を中心とした若い世代の投票率は、他世代と比べると低い傾向にある。しかし、混迷の度を深める日本においては、未来に対して責任ある政治を行っていくうえで、若い世代が積極的に政治参加することがより一層求められている。そのためには、現行のカリキュラムでは十分に行われていない「政治参加意識を育む教育」を推進する必要性があるのではないか。このような問題意識を抱いて、私は松下政経塾の門を叩いたのである。

 この2年半、国内外のさまざまな教育現場を訪れ、研修させて頂いた。その中で注目したのは、2010年度から全国に先駆けて「シティズンシップ教育」を県立高校で実施している神奈川県である。「シティズンシップ」とは「市民性」を意味し、シティズンシップ教育は「政治や社会に参加する意識や態度を育む教育」として、欧米を中心に盛んに行われている。神奈川県では、このシティズンシップ教育を全国に先駆けて検討し、3年に一度の参議院選挙を活用した「模擬投票」など、主体的に政治に参加する意欲と態度を養う取り組みを導入している。

県立高で「模擬議会」を実施

西野氏の報告テーマは、「“シティズンシップ教育”が切り拓く、新しい社会のカタチ」。 西野氏の報告テーマは、「“シティズンシップ教育”が切り拓く、新しい社会のカタチ」。

 現場調査を行う過程で、2011年度には神奈川県立湘南台高校の依頼を受け、シティズンシップの教育アドバイザーを務めさせていただく機会も得た。担当教員と共に、実施年度が限定されている「模擬投票」に代わる日常的な授業プログラムとして「模擬議会」を考案した。これは、1年生全員を対象に「総合的な学習の時間」を約4時間活用し、各クラスの生徒を「与野党」に分け、「太陽光発電の推進」「消費税の10%増税」「ごみ袋の県内有料化」という3つのテーマを審議し、最終的に「本会議」で採決するという試みである。独自の教材を作り、実社会の課題についての討議や発表を組み込むことで、選挙制度や議会制度を教えると同時に、生徒1人ひとりが政治参加の重要性について考察し、積極的に社会に参加しようとする授業を展開した。結果的に、事前と事後に行ったアンケート調査によって、高校生の政治参加意識は向上したと言える一方で、教員の政治的中立の担保や地域・保護者の理解促進など、シティズンシップ教育を実施する上での課題も浮き彫りになった。

「政治参加を学ぶ教育」を創るという志

 卒塾フォーラムでは、こうした実践研修についてご報告させて頂いたわけだが、会場からは「シティズンシップ教育の重要性について共感した」「学校だけではなく、家庭や地域など社会全体で推進する工夫が必要だと思う」など、前向きな声を多く伺い、私自身にとっても大きな励みとなった。今後は、現場での実践経験を生かし、東京都をはじめ全国でシティズンシップ教育を推進していくための制度作りに向け、幅広い分野で活躍する方々と意見交換をさせて頂きながら取り組んでいきたい。そして、松下政経塾を卒塾した後も、生涯をかけて、日本に「政治参加を学ぶ教育」を創るという志を追求していく決意である。

西野偉彦(にしの・たけひこ)
西野 偉彦(にしの・たけひこ)
1984年東京生まれ。明治学院大学法学部政治学科卒。学生団体RING、港区長選や衆院選の公開討論会などに関わり、若者の政治参加を推進。2010年、松下政経塾入塾(31期生)。神奈川県立湘南台高等学校シチズンシップ教育アドバイザー(2011年-2012年)。
プロフィールはこちら 「松下政経塾HP」
※本稿に関するお問合せは、西野偉彦/nishino_at_mskj.or.jp まで
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