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【LM推進地議連連載/地方議員リレーコラム】

三重県議会「次への展開」~マニフェスト大賞受賞後の取組み~(2012/08/22 三重県議会議員 水谷正美/LM推進地議連)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載コラムを掲載しています。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信中です。第15回は、三重県議会議員の水谷正美氏による「三重県議会「次への展開」~マニフェスト大賞受賞後の取組み~」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 皆さん、こんにちは。三重県議会議員の水谷正美です。

 先日、このコラムの執筆についてご依頼をいただき「何を書くべきか」少し悩みましたが、議会改革の先進議会として紹介いただくことが多い三重県議会が、「2008年マニフェスト大賞グランプリ(会派)」や「2010年マニフェスト大賞・最優秀議会改革賞」の受賞後、2011年の統一地方選挙を経て、継続して取り組んでいる改革テーマのうち、特筆すべき内容をご紹介することが適当であると考え、この場をお借りしてご報告することにいたしました。

 このコラムの読者の多くは、マニフェスト大賞への応募を検討中の方や受賞経験者の方々だと思います。一般読者の皆さんには、少し専門的な表現が多く分かりにくいかもしれませんが、あしからずご了承ください。

常に進化する議会基本条例

写真左が三谷議長(当時)、右が水谷議員 写真左が三谷議長(当時)、右が水谷議員
(2010年11月マニフェスト大賞授賞式)

 まず、全国都道府県議会で初めて制定された三重県議会基本条例の改正についてご報告することにします。

 2010年11月の最優秀議会改革賞の受賞(写真)を経て翌年の2011年1月、山梨学院大学の江藤俊昭教授に会長にご就任いただいている、学識経験者ら5人で構成された議会改革諮問会議から、「三重県議会における議会改革のさらなる取組-改革度No.1議会の次への展開-」と題した最終答申を提出いただきました。

 その答申では、議会基本条例について「議会活動内容や今後、新たに取りくむべき方向性などを踏まえて、必要に応じて適宜、見直していく必要がある」と提案いただいたのです。議会基本条例には、第28条で「議会は、この条例の施行後、常に県民の意見、社会情勢の変化などを勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」という検討条項を規定していることから、2011年7月に、議員9人で構成する「議会基本条例に関する検証検討プロジェクト会議」が設置され、2012年6月に議会基本条例(改正案)が取りまとめられました。

 その改正の概要は、(1)議会活動において重要な機能を果たしている会派の役割として、「議員がその責務を果たすために行う活動を支援する」(第5条第3項関係)ものであること、(2)議員の定数並びに選挙区および各選挙区において選挙すべき議員の数について、県民意思などが的確に反映されるよう、議会は不断の見直しを行う(第6条の2関係)こと、(3)議会には知事等の事務に対する執行監視などの責任があることから、議会は「議決責任を深く認識し」議会活動などに関し県民に対して説明する責務を有する(第7条関係)こと、(4)議会は「合議制の機関としての特性を生かし」知事などとの立場及び権能の違いを踏まえ、議会活動を行わなければならない(第8条第2項関係)こと、(5)「文書による質問」制度を設ける(第14条の2関係)こと――以上の点で条例改正案が上程されて全会一致により可決・成立しています。

 今回の改正で、「議決責任」を条例に明記したことは先進的な取り組みだと考えています。また、すでに一部の先進議会でも導入されている「文書質問制度」については、議会運営員会の申し合わせにより、文書質問書及び回答書を記録するため、新たに文書質問記録集として作成することなどが定められました。

 この改革は、議員が本会議や委員会での質問等の機会にとらわれず、知事などに対し文書による質問ができることから、議員や会派のマニフェストで提言している政策について文書によって進捗を確認することのできるものであり、議会機能の強化の観点から有意義なものだと考えています。

完全通年議会の導入

 さらに、前述の議会改革諮問会議の最終答申の中で、「会期のさらなる見直しについて、議会・会派・議員の3つの活動のバランスに配慮した上で、通年議会を前提にした議会の年間スケジュールの検討を行うべき」と提案いただいたのです。そこで、2011年7月に、議員9人で構成する「会期等のさらなる見直しに関する検証検討プロジェクト会議」を設置し、議論を重ね、2012年7月に検証検討結果を取りまとめ、現在の二会期制である準通年議会を前進させた完全通年議会を導入することが適当であると結論付けました。

 完全通年議会の導入は2013年からで、3月末の税制改正関連の条例案審議などを考慮して、年度単位で区切るのではなく、始期を1月、終期を12月としています。このことで、夏・冬の時期に閉会期間が存在する現在の二会期制の会期日数は、年間約230日でしたが、夏期の閉会日がなくなることで、さらに会期日数が増加することになります。

 完全通年制の導入により、知事の招集手続きを経なくても議長の判断で本会議を開催できたり、知事の専決処分を極力避けることができたり、審議期間を十分に確保できることから、議員間討議が充実し、参考人の招致や公聴会の開催などが行えたりすることなど、議事運営などの弾力的かつ効率的な運用が可能になります。これは、住民自治の観点からも、有意義な議会改革であると考えています。

議員報酬等の在り方

 最後に、私たち議員の適正な報酬額はいくらなのか?という難題に挑戦した取り組みをご紹介したいと思います。

 私は以前から、議会の閉会している月に、いわゆる月給である「報酬」が支給されるのはなぜか?という疑問に対し、主権者にどう説明すれば分かりやすく、納得度が高まるのか考えていました。「閉会日」がほとんどなくなる通年議会が導入され、「休会日」に政務調査と文書質問制度を組み合わせた活動ができることで、少なからずこの疑問は解消されることになると考えています。

 三重県議会は、会派代表者会議をはじめすべての会議を公開にし、自立した二元代表制による地方政府を目指して議会改革を先導してきました。この先駆的取り組みの根底を支えるのは構成する議員1人ひとりの議員活動です。

 議員共済年金の廃止や議員定数の削減議論のように、議員報酬についても全国的に減額傾向にあるけれども、それぞれの議員活動が支障なく行えるように一定の水準を確保する必要があることから、三重県議会では、議員にとって身近な問題である報酬などの在り方について、一度しっかりとした立論を求めようではないかということになりました。

 そこで、2011年6月に議会基本条例の規定に基づき、全国都道府県では初めて、議員活動および議会活動を支える議員報酬および政務調査費の在り方について調査するため、「議員報酬等に関する在り方調査会」を議決により設置したのです。

 そして、東京大学の大森彌名誉教授に座長にご就任いただき、学識経験者など5人で構成された調査会から、2012年1月に議員報酬について中間報告が提出されました。そこでは、議員を「公選職」と整理したうえで、議員報酬については「増額」となる適正額が示されています。そして、引き続き、政務調査費に関する調査が行われ、2012年6月に「三重県議会議員の活動と議員報酬等のあり方-県民の期待・信頼に応えるために-」と題した最終報告書が提出されました。

 政務調査費の在り方についての報告は割愛しますが、議員報酬が増額となる根拠については、同じ公選職の知事を比較対象とし、全議員の日々の活動内容を調査・検証し、職務活動時間による比率を乗じて報酬額を算定したところ、三重県議会議員の場合、1人当たり約7.95%の増額となる条例本則に規定すべき適正額やその根拠について明らかにしていただくことができました。

 今後、条例本則を修正するタイミングは大変難しいものでありますし、もちろん、議員活動の効率化と成果についての議論や、算定額のさらなる検証は必要です。また、時々の社会経済情勢や県の財政状況などを考慮して行われる、附則や特例条例による減額は、政治的判断としてあり得るものであります。

 この調査会による提言がなされたことの意義は、執行部の設置している「特別職報酬等審議会」による結論とは別に、議会が議会外の知見を活用し、議会自らが自立して判断をしていこうとするところにあると考えています。

 さて、皆さん。三重県議会の現在進行している改革についてどのような印象をお持ちになられたでしょうか?

 これらの改革は、若手中心というよりも、議長をはじめとした5期生以上の先輩議員の指導力によってなされたと言っても過言ではありません。全国各地から視察に来られて、個別にご相談させていただく若手議員の方々の中で、ご自身の所属する議会の改革が進まないのは「古い議員のせいだ」とか「体質が悪い!」とお話しされる方が少なからずいらっしゃいます。もしそのように思い悩んでいるのであれば、それは「巻き込み力」を身に付けている我慢の時ですから、継続して努力を続けてみるべきでしょう。選挙もそうですが、「私たちの仕事は、敵をつくることではなく、味方をつくること」なのですから……。

三重県議会議員 水谷正美
著者プロフィール
水谷正美(みずたにまさみ):1965年8月18日三重県生まれ。IBM Japan, Ltd.退社後、代議士秘書を経て、1999年に四日市市議会議員。最大会派代表、議会運営委員長などを歴任し自治基本条例の制定や議会基本条例を提案。2006年に第一回マニフェスト大賞特別賞を受賞。2007年から三重県議会議員。最大会派に所属し、政策総務常任委員長、教育警察常任委員長などを歴任。2008年にマニフェスト大賞グランプリ(会派)、2010年にマニフェスト大賞最優秀議会改革賞を受賞。早稲田大学大学院卒。
HP:三重県議会議員 水谷正美 ホームページ
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