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ツイート数にも現れた自民党・安倍氏への関心、政策では「原発」に注目 衆議院選挙2012「ソーシャルメディア分析」 (2012/12/21 政治山)

ここでは、キーワードごとにツイートとRTの解析し、書き込み内容をポジティブ(好意的)か、ネガティブ(否定的)に分類し、その傾向を紹介していく。また、こうしたポジティブ/ネガティブのツイートが国内のどの地域から発信されているかを解析したヒートマップも併せてご覧いただくことにしよう。

「橋下氏」と「嘉田氏」、ポジ/ネガで大きな差

グラフ4

 まずは、各キーワードのポジティブ/ネガティブの割合を見ていく(グラフ4)。なお、このグラフではポジティブ/ネガティブのどちらとも判別できなかったツイートは除いた。このため「野田氏」の母数(n値)が414となっていることをお断りしておく(「野田氏」の総数は1,376)。

 ここのグラフで目を引くのは、「橋下氏」と「国防軍」ではないだろうか。「橋下氏」はポジティブが16.4%と13項目のうちで最も低い割合となった。また、「国防軍」のポジティブは32.9%である。ポジティブ/ネガティブの単純比較で、ポジティブをネガティブが上回ったのは、先の「橋下氏」「国防軍」の他、「民主党」と「安倍氏」「石原氏」の計5項目だった。

 一方、「未来の党」はポジティブが82.9%と政党の中では突出している。今回、分析対象とした「未来の党」のツイート・RT数は、ちょうど6,000。うち、ポジティブ/ネガティブの分類ができなかったのが965ツイートだったので、母数(n値)は5,035である。この5,035の8割超が好意的なツイートと判定された。こうした傾向は「嘉田氏」にも見られた。「嘉田氏」のポジティブ率は77.9%(n=903)である。

 ただ、前のページで報告した通り、この2つのキーワードは、他のキーワードに比べ総数自体が低調だったのも事実。少ないツイート・RTの中身が好意的だったことがうかがえるものの、これは一部の支持層がツイートしていたとも考えられ、ポジティブ/ネガティブ双方での大きな議論になっていなかったとも考えられる。やはり、日本未来の党にとっては今回の衆議院選挙は“準備の時間が足りなかった”ということだろうか。

投票日2日後の18日に大きく動いたポジティブ率

グラフ5

 次に、ポジティブ/ネガティブのツイート・RTを日付別に集計し「ポジティブ率」を算出したグラフ5(A、B、C)を見てみよう。「ポジティブ率」は、ポジティブ数をポジティブ数とネガティブ数の和で割ったもの(ポジティブ率=ポジティブ/ポジティブ+ネガティブ)。0.5がしきい値となり、これより大きいと好意的なツイートが多かったことになり、0.5より小さければ否定的な意見が多かったことになる。

 政党ごとの結果をまとめたグラフ5-Aを見ると、全体の傾向と同様、「未来の党」は期間を通じてポジティブ率0.8前後で推移している。この他の政党は17日までは大きな差はなかったが、18日になり「民主党」のポジティブ率が急に下がった。投開票日当日の16日や大勢が確定した17日ではなく、18日にポジティブ率が下がったのが特徴的だ。実は、18日に大きくポジティブ率が動く傾向は、他のキーワードでも見られた。

 政治家ごとのグラフ5-Bでは、多くのキーワードが18日に大きな動きを見せている。それまで0.6~0.7程度のポジティブ率を維持していた「野田氏」が、18日にポジティブ率0.14まで急落した。一方、「橋下氏」は17日に0.08まで落ちていたポジティブ率が、18日には0.35まで回復している。「嘉田氏」は政党同様、高いポジティブ率(0.91)となっていたが、17日以後は下落を続け、18日に回復基調に載せている。

 次に、グラフ5-Cで政策のキーワードを見ていると、「国防軍」が特徴的な動きを見せていた。14、15日はポジティブ率約0.4で推移していたものの、投票日当日に下落。翌17日もポジティブ率を下げていた。ところが、18日にポジティブ率0.50と急回復を見せることになる。先の「野田氏」と「橋下氏」「国防軍」に関連してソーシャルメディア上で何か動きがあったことが推定される。

 その他の「憲法」「原発」ともにポジティブ率が0.5を超えて推移している。今回の調査ではどういう立場からの発言なのかまでを捉えることができなかったが、憲法改正をうたい脱原発に慎重な自民党の勝利が伝えられた16日を挟んだ前後に、両キーワードのポジティブ率に目立った変化は見られなかった。とは言え、18日にポジティブ率が動いているのは政党や政治家のキーワードと同様である。

東日本と西日本で分かれる評価

グラフ6

 最後に、ポジティブ/ネガティブのツイートが国内のどの地域から発信されているかを解析し、地図上に表記したヒートマップをご覧いただこう。ここでは、東名阪地域を中心に、特に顕著な差異を見せた6キーワードをピックアップして紹介する。なお、データは調査対象期間の5日間を通してのものになる。

 まず、政党名をキーワードとしたツイートから紹介する。「自民党」は東北地方でポジティブ/ネガティブに差が出ている。ポジティブでは、宮城(仙台市付近)や福島(郡山市付近)、栃木(宇都宮市付近)、新潟(新潟市付近)などにヒートポイントが現れた。ネガティブに目を転じてみると、これらのポイントが消えている。自民党は、西日本よりも東日本でポジティブに語られていたことが分かる結果だ。

 「民主党」では、新潟と福島で差が出ている。ベースとなるポジティブツイートは少ないが、仙台市付近ではネガティブツイートがほとんど出ていない。同様な傾向は、香川(高松市付近)でも見られた。一方、青森(八戸市付近)と岩手(盛岡市付近)、さらに静岡(静岡市付近)ネガティブが増加もしくは出現している。民主党に関しては、全国的なバラつきがあり、さらに詳細な調査が必要となりそうだ。

 次に「維新の会」を見てみると、福島でポジティブが消え、愛知(名古屋市付近)でネガティブが増えている。また、宮城でもネガティブが増加し、大阪圏でもヒートポイントが大きくなっている。大阪府の小選挙区で勝利を収めた日本維新の会だったが、ソーシャルメディア上では必ずしも好意的に語られていたわけではなさそうだ。

 「未来の党」に関しては、母数が少ないながらも、ポジティブとネガティブで大きな差が出た。ポジティブでは、北から青森、宮城、福島、栃木、首都圏、愛知、大阪から滋賀にかけてでヒートポイントが出現。一方、ネガティブでは、こられの多くが縮小もしくは消滅している。特に、東日本では首都圏と青森に薄いヒートポイントがあるだけとなった。これは「嘉田氏」でも同様の傾向だったことをご報告しておく。

 この他、政治家に関しては、大きな差異が現れたのは「安倍氏」と「橋下氏」だった。「安倍氏」のポジティブは東名阪を中心に出現。青森や新潟、広島などでもポジティブなツイートが発信されていた。ポジティブを見てみると、新潟と広島でヒートポイントがほとんどなくなり、静岡に比較的濃いヒートポイントが現れている。また、ポジティブにはなかった東北地方のヒートポイントがネガティブで散見されるようになった。

 最後に「橋下氏」のヒートマップをご紹介する。「橋下氏」はもともとネガティブツイートが多かったのはすでにご紹介したが、ヒートマップによってその発信元が明らかになった。ポジティブとネガティブのマップをご覧いただければ明らかなように、ポジティブのヒートポイントで目立つのは首都圏と大阪圏くらい。一方、ネガティブマップを見ると大阪圏と青森のヒートポイントが濃くなっているのが目に入ってくる。さらに、よく見ていくと、日本中いたるところ、特に西日本でヒートポイントが発生していることが確認できる。他のキーワードでは見られなかった傾向で、よくも悪くも橋下氏の話題性の高さを再確認させられる結果となった。

◇        ◇        ◇

自民党の圧勝で終わった今回の衆議院選挙だが、この結果を見るとソーシャルメディア上でも「自民党」「安倍氏」が多く取り上げられていることが分かった。ツイート・RT内容のポジティブ/ネガティブ分析でも期間中、「自民党」「安倍氏」ともにポジティブ率が安定しており、今回の勢いを裏付ける結果となっている。自民党は政権公約で「インターネット選挙の解禁」をうたっており、今後、こうしたソーシャルメディア分析がさらに重要度を増すことは間違いないだろう。

(政治山)

※ポジティブ/ネガティブ分析には、「東山昌彦、乾健太郎, 松本裕治, 述語の選択選好性に着目した名詞評価極性の獲得, 言語処理学会第14回年次大会論文集, pp.584-587, 2008.による、日本語評価極性辞書(名詞編)ver.1.0」を参照しました。

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