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ネットが変える政治のかたちを政治家、識者が議論
日本政策学校シンポ「ソーシャルメディアが変革する日本政治」開催
(2012/10/16 政治山)

インターネットが政治に及ぼす影響を政治家、識者を招き議論するシンポジウム「ソーシャルメディアが変革する日本政治」が16日、東京都渋谷区の渋谷フラッグRoom7Mで行われた。哲学者で評論家の東浩紀氏、元ジャーナリストでミドルメディア「NO BORDER」代表の上杉隆氏、参議院議員の鈴木寛氏らがパネリストとして招かれ、日本政策学校代表理事の金野索一氏が司会を務めた。パネルディスカッションでは、政治のネット活用における日本と海外の現状比較や、ネット活用を阻む日本社会のメンタリティの問題、今後のネット活用への期待が語られた。主催は、多様な民意が反映される「真の民主主義社会」実現を推進するリーダー育成のために創設された日本政策学校。今回は、第二期開講シンポジウム『政治を可視化・双方向化する』シリーズの第2回目で、前回は名古屋市長の河村たかし氏とみんなの党参議院議員の松田公太氏らをゲストに、「第三極 日本の政治をどう変えるか」というテーマで開催された。

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ソーシャルメディアは政治を変えるのか

日本政策学校シンポジウム「ソーシャルメディアが変革する日本政治」シンポジウム「ソーシャルメディアが変革する日本政治」

 ネットと政治の関わりについて鈴木氏は、文部科学副大臣として関わった、ネット上や実際の社会で教育政策の形成に一般市民を参加させる「熟議カケアイ」を例に出し、すでに政策形成にネットやソーシャルメディアが影響しているとした。この事業の成果もあり、内閣官房が開催した公開の場で翌年度予算の配分を決める「政策コンテスト」では、文科省の予算が1〜6位を占めた。コンテストへ応募のあった33万通のうち、約半数が10代から30代の若者の投票だったとし、ネットやソーシャルメディアが政策形成に関わっている現状や、若年層が積極的に関わるなどの新しい動きについて語った。

 東氏は、自身の思想書「一般意志2.0」で言及したネットと政治についての考えを要約した。現代は、社会が複雑になりすぎ、また“ビックデータ”という個人データを行政がどう活用するのかという課題があると語り、こうした状況にこれまでの民主主義および熟議だけでは対応しきれないとした。東氏は、民意を集めるツールとしてのネットに着目。議会制民主主義が持つ「熟議」の部分を補完するものとして、ネット上で形成される、多くの人の意見の集まりである「集合知」をあげた。今後は、選挙で選ばれた選良(エリート)がつくり出す「熟議」を「集合知」が取り囲み、選良の決定に対して大衆がプレッシャーを与えて政治を運営していくというイメージを語った。

 上杉氏は、ジャーナリズムの観点からネットと政治の関係に触れ、アメリカと日本では「言論空間の多様性が違う」とした。アメリカでは新聞・テレビなど既存のメディアとネットメディアなどのメディアが「適度に分断されている」のに対して、日本では、既存のメディアとネットメディアは二元化が起きていると語った。その点、マスメディアや官僚機構が多様性を認めることで、「言論の多様化が起きて、自然にいろいろなテーマが語られることになる」とした。

パネルディスカッションの登壇者、哲学者で評論家の東浩紀氏。
パネルディスカッションの登壇者、哲学者で評論家の東浩紀氏。
同じく登壇者の元ジャーナリストでミドルメディア「NO BORDER」代表の上杉隆氏。
同じく登壇者の元ジャーナリストでミドルメディア「NO BORDER」代表の上杉隆氏。

ネットと政治の将来は

 パネリストらの意見では、現在の日本での「ネットの政治利用」については、悲観的な意見が多かった。東氏は、政治や社会にネット活用が進まない理由として、日本人のメンタリティを挙げた。中国に留学した知人の学生を例に出し、「中国の話題に関する専門的な知識も、のちの自身の就職への影響を不安視し、さらに炎上リスクを考えて(自由に)書けない」状況にあるといい、専門的な知識が共有されることなくデッドストック(死蔵)されているのが問題だと語った。今後は、政治側がネット利用を進めることに加えて、こうした日本人のメンタリティを変えていき、ネットの言論空間を建設的な場にしていかなければならないと述べた。

 上杉氏は、アメリカ政治でのネット活用を現地取材で見てきた経験をふまえ、「日本のネット利用は、アメリカから4年遅れ」と指摘。日本で積極的にSNSなどが活用されたとしても、2012年の米大統領選で行われているネット活用状況からすると、いまの日本は「前近代的と見られるだろう」と語った。

 一方で、鈴木氏は、政治家の役割が「政策形成」から「政策の編集方針を決定する」ことに移ってきたとし、市民と一緒に政策をつくっていく際のコミュニケーションの場として、ソーシャルメディアやネットを活用していくことが求められているとした。

 上杉氏も、アメリカのメディアの現状として、権威あるジャーナリズムの賞であるピューリッツァー賞に2012年、初めて専業のネットメディアが選ばれた事実に触れ、「日本でもネットメディアのようなマイクロメディアがどこかのタイミングでマスメディアに転換するときが来るのでは」と期待を込めた。

 東氏は、いまの政治に足りないものとして、「ネットを使って社会を変えるという新党」だとし、今後はネットを積極的に利用している若年層の考え方を代弁する政党が出てくるべきだとした。

 パネルディスカッションのあとは、同学校代表理事の金野氏から「日本政策学校は真の民主主義をどう実現するか」というテーマで講演が行われた。

登壇者の民主党・鈴木寛参議。
登壇者の民主党・鈴木寛参議。
会場には多くの観客がつめかけた。
会場には多くの観客がつめかけた。
関連ページ
日本政策学校(外部サイト)
第2回 ソーシャルメディアが変革する日本政治 -『政治を可視化・双方向化する』シリーズ(外部サイト)
第3回 三バンのない選挙の戦い方 -『政治を可視化・双方向化する』シリーズ(外部サイト)
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