【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】
第7回マニフェスト大賞応募スタート特別企画「審査委員インタビュー連載」
マニフェストの課題と可能性~いまこそ、議会の出番だ!~
千葉茂明・マニフェスト大賞審査委員(月刊『ガバナンス』編集長)2/2ページ(2012/07/12 早大マニフェスト研究所)
今こそ、議会の出番!
――マニフェスト大賞を通じて思うことは何か。
千葉 もっともっと議会、議員には頑張ってもらいたい。「マニフェスト選挙」と言いながらも、首長候補者の個性やポピュリズム的な政策に投票してしまう傾向がある。地方政治が注目されることは喜ぶべきかもしれないが、地域づくりを考えるうえでは危うい面も否めないのではないか。首長が掲げる重要政策については、議会が論点・争点をあぶり出し、市民も巻き込んだ上で方向性を決めていくべきだ。予算編成権や執行権は首長にあるが、最終的な議決権は議会にある。議会・議員は、その責任の重さを再認識し、議決に至るまでの過程の見せ方を一層工夫する必要がある。また、首長・議会の一方だけが突出して改革を進めるのではなく、「両方が優れているモデル」をそろそろ指向する時代かもしれないと感じる。
――これからの議会に何を期待するか。
千葉 民主党政権のもと、地域主権改革の法律がいろいろできているが、その成果がなかなか住民に伝わっていない。「義務付け・枠付け」の見直しについても地域経営にどう生かすのか、議員側からもっと提起していいのではないか。立法機関として政策的な議員提案条例も出すべきだが、やみくもに出すのではなく、執行部側が見落としていたり、動きが鈍いようなテーマに果敢に挑んでもらいたい。議員提案条例を作るためには住民ニーズの把握が不可欠であり、そのためには住民の前に出て行く議会報告会・意見交換会が不可欠、そのためには議員間討議が不可欠……と必然的に議会運営のあり方も変わっていく。その活動の意義が住民に理解されると議員・議会の存在感が増していくのではないか。
「そうはいっても、議会には事務局職員が少なくて無理」と話す議員もいるが、専門的知見の活用は法定化されているし、参考人招致もどんどん行えばいい話。議会基本条例で附属機関や調査機関の設置を規定する議会も増えている。福島県会津美里町議会や山梨県昭和町議会など小さな自治体議会でも地元大学と提携し、改革を進めている。ある意味で「言い訳」は通用しない時代になってきたことを認識すべきだろう。
また、もっと着目してほしいのが決算審査。徳島県小松島市議会のように、主だった政策や首長マニフェストの柱を中心に決算審査で議会として事業評価を行い、次年度予算に向けて政策提言をするなど、単なる認定・不認定にとどまらず、議会がコミットする工夫が必要だ。静岡県藤枝市議会では事前・事後に加え、当年度事業の事中評価も行っている。決算審査を充実させることは「地方政府」としての質向上につながるはず。首長は独任制だが、議会は複数の住民代表で構成される合議制機関だ。議会による事業評価を活用した決算審査は、いろいろな考え方の人たちが開かれた場所で議員間討議を行い、合意形成を図っていく土壌づくりにもなる。
――全国の首長、議員にメッセージを。
千葉 議会は会期が重なるため、横の議会の動きは見えにくい。首長も他の首長の自治体経営を学ぶ機会はそれほど多くはないのではないか。マニフェスト大賞では、最先端の地方自治の取り組み、そしてなにより同じ政治家の熱き志に接することができる。自分たちの自治体で応用、発展させる絶好の機会ととらえ、ぜひとも「善政競争」の場であるマニフェスト大賞に積極的に参加してほしい。
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- 千葉茂明(月刊「ガバナンス」編集長)
- 1962年生まれ。日本教育新聞記者を経て、91年(株)ぎょうせい入社。月刊「悠」編集部、月刊「晨」編集部・編集長を経て、2001年から月刊「ガバナンス」副編集長、2008年4月から現職。2001年5月号から「議会改革リポート 変わるか!地方議会」を、2009年4月号から「『地方主権』へのビジョン」(知事インタビュー)を連載中。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。