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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】

第1回 マニフェストは、ほんとうに必要ないの?(2012/05/17 早大マニフェスト研究所)

政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載をスタートしました。マニフェストをテーマとした連載「マニフェスト学校~政治山出張講座~」では、議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考えていきます。その第1回、「マニフェストは、ほんとうに必要ないの?」をお届けします。

いまでは「マニフェストは詐欺の代名詞」

2009年衆院選で民主党が掲げたマニフェスト2009年衆院選で
民主党が掲げたマニフェスト

 いま、マニフェストへの国民の信頼が落ちています。

 2009年の衆院選で民主党が圧勝し、政権交代がおこりました。あの選挙では、高速道路無料化や子育て支援制度といった民主党が掲げたマニフェストの政策がメディアなど各方面で取り上げられ、マニフェストが大きく注目される選挙になりました。しかし、政権奪取後は修正や実現断念が続き、今では、「マニフェストは詐欺の代名詞」と呼ばれるほどになりました。また、選挙のときに具体的な政策を示さない、抽象的な公約を掲げる候補者も以前のように増えはじめ、政策で選ぶ選挙から遠くなり始めています。

 マニフェストの存在自体が悪いのでしょうか。民主党の作成過程や運営方法に問題があっただけではないのでしょうか。実際、国ではなく地方に目を向けてみると、例えば第5回マニフェスト大賞グランプリを受賞した松阪市、第6回グランプリ受賞の弘前市のように、作成過程、運営手法、検証などの面で優れた事例がいくつも出てきています。また、学校、病院、図書館など政治以外の分野でもマニフェストをマネジメントに活用する事例が多く生まれています。今後の連載でこういった事例にも触れていきます。

 選挙からマニフェストがなくなるとどうなるのでしょう。マニフェストが出現する以前の選挙公約は、「ぼんやりとした、耳ざわりがよいスローガン」を並べたものがほとんどでした。具体的な政策は書かれていませんから、有権者は「投票した政治家や政党が、自分たちが望んでいる政策を行ったか」どうか、あとで検証することができません。それでは、政治家の責任も、選んだ側の有権者の責任も問うことはできず、無責任な政治が進んで、将来へのツケが増すばかりです。

1人ひとりが未来に責任をもって投票するマニフェスト型政治は必要

 いま、国は1,000兆円近くの借金を抱え、人口の減少も進んでいます。経済成長が続いていた以前のように「あれもこれもします」という政策では、これからの時代うまくいかないのは当然です。選挙の際に、つくりたい国の理念・ビジョンを明確に示し、政策の優先順位とともに、財源や具体的な手法を示し、国民1人ひとりが未来に責任をもって投票するという、マニフェスト型政治は必要です。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。

関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)

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