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政治山調査特別編

被災地生活状況調査レポート

7.一時金の受給状況

一時金(支援金、義援金、見舞金、保険金、その他)の受給状況を調べました。

7-1.一時金の受給額別世帯数
7-2.支援金、義援金、見舞金、保険金の受給状況
7-3.支援金の申請と受給状況
7-4.支援金を申請していない理由

■一時金の種類について

【支援金】
被災者生活再建支援法に基づき、震災により住宅が全壊・大規模半壊・半壊した世帯に対し、都道府県と国から支給されます。
【義援金】
日本赤十字社などの義援金受付団体から、都道府県を通じて被災者に支払われます。
【見舞金】
主に市町村から、震災により被災した住民または世帯に支払われます。受給対象者や金額は、自治体や見舞金の種類により異なります。
【保険金】
生命保険会社や損害保険会社などと契約し、保険の対象となる事故や災害が生じた場合に支払われます。金額や手続きなどは、契約内容により異なります。

7-1.一時金の受給額別世帯数

支援金、義援金、見舞金、保険金などの一時金を受け取った世帯は全体の半数以下に留まっています。
受取金額は30万~50万円が最も多く、全壊世帯の義援金が35万円であることや7-2の結果から、そのほとんどは義援金の受け取りであることがわかります。

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7-2.支援金、義援金、見舞金、保険金の受給状況

一時金の中では、義援金を受け取った割合がもっとも高く、4割の世帯が義援金を受け取っています。
支援金、見舞金、保険金はいずれも9割以上の世帯が受け取っていないことが分かりました。

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7-3.支援金の申請と受給状況

支援金の申請をした世帯の97.8%が、まだ支援金を受け取っていないことが分かりました。

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7-4.支援金を申請していない理由

支援金を申請していない世帯が17.5%あり、その理由については以下のような回答がありました。

  • 良くわからない
  • まだ夫が見つかっていないため
  • り災証明の判定がまだのため
  • 公営住宅は該基礎支援金については申請済み。加算支援金については業者より契約書を受け取っていないため未申請
  • 実家が壊滅したため忙しい。
  • 何とかギリギリ生活出来るから。
  • 知らなかったから
  • よくわからない
  • 他に出て歩かないのであまりわからない。
  • 受付初日(4/14)申請で約1カ月で入金との話が、現在も入金なし!!
  • 借りた分を返済しなければならないから。そしたら借りない方がいい。
  • 加算支援金はまだ申請していない→契約書が作成出来てないから
  • 工場が全壊し売上減少する中で、これ以上借金を増やしたくない為
  • 破損度が低いかなと思い、まだしていません。
  • まだそのような状況でなく、今後の予定が立てられない。
  • どこにも行きたくない。忙しい。
  • 一部損壊のために何にも該当にならず、風呂の釡がだめになり、国民年金なので(2人)現金でかいかねて、
    いまだに風呂に入りかねています。主人がねたきりでお金もかかるので大変です。
  • 分からなかった
  • かりてもかえすみこみがない
  • 誰も教える人がいないので分かりませんでした。
  • 一部損壊で対象外
  • 大工さんの見積もり出ない
  • 再調査中の為(完了)り災証明書が未発行です。
  • 再調査依頼のため判定がまだである
  • 返す見通しがないので
  • 自宅の補修の見積りが、業者が忙しくなかなか来てくれず契約書が作れない。
    応急修理制度は業者が面倒がって、引き受けてくれずすすまない。
  • 業者の見積もりと契約書の遅れ
  • まだ、建設制限についての見通しがたっていないため

申請していない理由として最も多かったのは「わからない、知らなかった」というもので、20件ありました。
また、「借りても返せない」などと、支援金を借金と勘違いしている回答も5件あり、制度そのものの周知徹底がなされていない現実が浮き彫りになりました。

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8.流動資産の状況

調査対象世帯では、どれだけの資産が蓄積されているのか調査しました。

8-1.1世帯当たりの流動資産の状況
8-2.1人当たりの流動資産の状況

※本調査では、預貯金、有価証券などを流動資産の対象とした。

8-1.1世帯当たりの流動資産の状況

流動資産を保有しているのは、3割の世帯に留まっていることが分かりました。

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8-2.1人当たりの流動資産の状況

1世帯当たりの流動資産額が100万円未満の世帯が3分の1であることが分かりました。

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9.純負債の状況

調査対象世帯では、純負債がどれくらいあるのかをレポートします。

9-1.純負債の状況
9-2.純負債総額と1世帯あたりの平均負債額

※本調査では、純負債を各世帯の負債から流動資産を差し引いたものとした。
固定資産は流動性が失われているため、評価額ゼロとした。負債と流動資産の対象は下記の通り。
負債=住宅ローン、自動車ローン、その他借入金
流動資産=預貯金、有価証券など

9-1.純負債の状況

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9-2.純負債総額と1世帯あたりの純負債額

今回の調査対象世帯の負債をみると、有効回答530世帯のうち40.2%(回答があった世帯の7割以上)、213世帯が負債を負っており、総額は21億円にのぼりました。1世帯当たりの負債額は約1,000万円となります。

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10.二重ローン問題

二重ローンとは、震災前に負っていた負債に加え、震災によりさらに負債を負うことです。
このレポートでは、調査対象世帯のうち、持ち家が全壊した世帯は1,000万円、半壊した世帯は500万円の新規負債を負うと仮定した場合をシミュレーションしました。

10-1.負債状況の比較
10-2.世帯収支の比較

10-1.負債状況の比較

■仮定条件
(1)現状の負債は前述の9と同様、各世帯の負債から流動資産を差し引き、固定資産評価額をゼロとして算定した純負債。
(2)二重ローンには、現状の負債に、持ち家が全壊した世帯は1,000万円、半壊した世帯は500万円の負債を加えた。

現状に二重ローンを加算すると、負債を負う世帯が全体の過半数を超え、回答があった世帯の9割以上が負債を負うことになります。現状と二重ローンを比較すると、負債総額は21億円から39億と81%増加します。1世帯当たりの負債額は1,008万円から1,426万円に増加する結果となりました。

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10-2.世帯収支の比較

■仮定条件
全壊世帯は1,000万円、半壊世帯は500万円を20年返済、年利2%で新たに借りた場合の月返済額をそれぞれ5万円、2万5,000円として収支を計算しました。

現状の負債に、損壊した住居を修復するための負債を加算すると、収支が赤字となる世帯が全体の38%となり、回答があった世帯の6割以上が赤字世帯になるとの予測が出ました。

「世帯ごとの現状収支と二重ローンの場合の収支の比較」は、回答があった336世帯を収支金額順に並べて収支金額を線で表しました。全体的に赤字幅が拡大(線が下に移動)し、新たに赤字に転落する世帯が25世帯増えました。

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11.赤字世帯の生活持続可能期間の予測

1カ月の収支が赤字の世帯が流動資産を用いて生活した場合、持続可能な期間を算出しました。

11-1.現状の赤字世帯の生活持続可能期間(予測)
11-2.現状と二重ローンを抱えた場合の生活持続可能期間の比較(予測)

11-1.現状の赤字世帯の生活持続可能期間(予測)

■仮定条件
(1)1カ月の収支が赤字の世帯が、流動資産を用いて生活をすると仮定する。
(2)負債は返済しない。
(3)流動資産をすべて生活費に充てる。

現状で、流動資産がない、もしくは赤字を賄えず、既に家計が破たんしている世帯が95にのぼります。半年後には129、1年後には141、1年半後には151、2年後には154世帯(赤字世帯の86.5%)の家計が立ち行かなくなるとの予測が出ました。

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11-2.現状の赤字世帯の生活持続可能期間(予測)

■仮定条件
(1)1カ月の収支が赤字の世帯が、流動資産を用いて生活をすると仮定する。
(2)負債は返済しない。
(3)流動資産をすべて生活費に充てる。
(4)二重ローンの予測条件は10-2と同様、持ち家が全壊した世帯=1,000万円、半壊した世帯=500万円の負債を、
20年2%の利率で借り入れたと想定し、それぞれの返済額(全壊=5万円、半壊=2万5000円)を支出に加算した。

二重ローンを抱えた場合は、流動資産がない、もしくは赤字を賄えず、既に家計が破たんしている世帯が112にのぼります。半年後には153、1年後には165、1年半後には178、2年後には184世帯(赤字世帯の90.6%)の家計が立ち行かなくなるとの予測が出ました。

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総評

 今回の調査では、お金という非常に個人的な質問にも関わらず、かなり多くの方にお答えをいただき、それだけ切迫した状況を訴えたい気持ちが強かったということが想像され、身の引き締まる思いでレポートを作成した。未回答の割合が多い質問については、回答済を分母とした割合も出すことにより、読者に解釈の幅、および議論の余地を残した。

 今回の調査対象となったのは530世帯、1,844人である。これを今回の震災の規模に当てはめて考えると、宮城県だけで全壊、半壊、一部損壊世帯が約24万世帯ということから、これを宮城県の約500分の1の縮図として見ることができる。無論必ずしも単純な掛け算ではなく、あくまでも目安としてであるが、宮城県全体でこのような調査が行うのが難しければ、今回の調査を元に、その500倍を宮城県全体の状況として想像するやり方はある程度有効であろう。

 そこで今回の調査を改めて総括する。まず530世帯で約300人の雇用が失われている。これを宮城県全体に当てはめると約15万人になる。宮城県全体の就業人口が約110万人であるから、その14%強が雇用を失ったことになる。震災後の宮城県のハローワークの離職票交付件数が51,689件(平成23年6月3日厚労省速報値)であるから、届け出のない人も考慮すると、15万人の失業はある程度有効性のある数字と言えよう。これに伴い、この地区の月収総額が約6,000万円の減収となり、これを宮城県に当てはめると、県民の年収が3,600億円減ったことになる。宮城県民の年間所得は約5兆7,000億円なので、この約6%に該当する。

 これに対し、支出がいくらあるかを調査した結果、収支が赤字になっている世帯が全体の33.6%、回答世帯の53.0%に達していることがわかった。これを宮城県全体に当てはめてみると、全壊、半壊、一部損壊の24万世帯の33.6%、約9万世帯が赤字ということになる。未回答の解釈次第では、12万世帯以上が赤字という推測もできる。さらに負債を見てみると、調査対象世帯の40.2%の213世帯に、総額約21億円、1世帯平均1,000万円以上の純負債(今回の震災で固定資産の評価はゼロと計算)があることがわかった。これを24万世帯で考えると10万7,000世帯に総額1兆円の純負債がある計算になる。今回の調査では、全壊家屋の建て直しに1,000万円、半壊家屋の修復に500万円を要するという前提で、それを新たにローンで借りた場合のシミュレーションも行った。それを24万世帯に当てはめると13万7,000世帯で総額約2兆億円の二重ローンとなる。

 これらの調査結果を踏まえ、最も重要なポイントである生活持続性についてもシミュレーションした。それによると、半年以内に破綻する世帯が129世帯、二重ローンを加える仮定で計算すると153世帯に上ることがわかった。これを24万世帯に換算すると、それぞれ6万5,000世帯と7万7,000世帯となり、このまま行くと、宮城県全体で6万5,000世帯~7万7,000世帯の家計が半年以内に破綻しかねないことがわかった。これをさらに半年延ばすために重要なのが生活再建支援金の支払いだが、今回の調査でそれがほとんど支払われていない(申請した世帯の2.2%のみ)ということもわかった。この点については早急に調査と対忚が求められる。

 今回の調査でわかったのは、仕事も家財も失った人々が生活に困窮し、それゆえに食糧支援や物資支援を必要としている実態だ。問題はすでに、震災の問題ではなく、震災という経済的インパクトを伴う出来事の結果、従来の経済社会システムから放り出された人々の生活保障の問題に移っている。単なる復興だけではなく、それを支える経済政策について抜本的な議論をしないと、急激に発生したこのような大規模な社会保障を支えきれず、この問題が日本全国に飛び火することは確実である。

 最後に、大変な生活の中、本調査にご協力いただいた被災者の皆様、チーム王冠の皆様に深い謝意を表したい。彼らは決して自分たちだけのことを考えてこの調査に協力してくれたのではない。声を上げることで、少しでもより良い明日を作ろうとしてくれたからに他ならない。私たちは、本レポートでデータとして扱われた全ての数字の裏には、そんな1,844名の生身の人間がいることをしかと肝に銘じ、これを未来に役立てなければならない。