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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第26回「若者は政治に関心を持つべき…なのか」(2013/03/06 中野区議会議員 森たかゆき/LM推進地議連会員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第26回目は、中野区議会議員の森たかゆき氏による「若者は政治に関心を持つべき…なのか」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 中野区議会議員の森たかゆきと申します。
 中野区は、新宿・渋谷といった世界的な商業地区に隣接する日本有数の住宅密集地です。交通の便がよい割に山手線の内側などに比べると比較的家賃が安いこともあって、20代、30代の若者が多く住んでいます。私はその中野区の議会で、最年少議員として仕事をしています。そうしたこともあって、若者の立場から議会で発言することも自然と多くなります。例えば、区広報へのソーシャルメディア活用の提言、職員数削減を新卒採用抑制で行う計画の問題点の指摘、などを行ってきました。

 今、若者の声が政治に届いていないと言われています。国会でインターネット選挙運動の「解禁」が議論されている中、ネット選挙が若者の政治への関心を高めることを期待する声も聞かれます。私はもちろんインターネット選挙運動の「解禁」には賛成です。しかし、若者は本当に政治に関心を持つべきなのか。私は、このことを一度立ち止まって考えるべきだと思っています。それは「政治に関心を持つ」ことが、何を意味するのかを考えることでもあります。例えば、「政治への関心」が「民主党内の主流派と反主流派が云々…」といった政局への関心を意味するのであれば、私は「若者は政治に関心を持つべきだ」というメッセージにはまったく賛同できません。政治への関心は、政局への関心ではなく政策への関心であるべきです。

 しかし、政策に関心を持つのは、政局に関心を持つよりもハードルが高いように思います。では、若者が政策に関心を持つにはどうすればよいのか。そのヒントを与えてくれるのが、私が議員活動を通じて出会った若い方々です。例えば「原発事故の影響が心配だ。給食食材の放射線量測定をしてほしい」と要望をくださった若いお父さんお母さんたち。例えば「条例で漫画やアニメを規制しようとするのはおかしい」と反対活動をされていた漫画、アニメ好きの人たち。彼らは、政治に関心があるというよりは、自分たちが直面した問題を解決するために、その手段として政治に向き合わざるを得なくなりました。

中野区議会議員・森たかゆき氏 中野区議会議員・森たかゆき氏

 若者は、1人ひとりが正社員だったり、非正規労働者だったり、独身だったり、結婚していたり、シングルマザーだったり、心身に障害を持っていたり、要介護認定を受けた親がいたりします。当然、彼らが生活の中で直面している問題はそれぞれに異なるはずです。私は、若者にはまず自分の生活上の問題に向き合ってほしいと思います。そのことが、問題解決の手段としての政治(=政策)への関心につながっていくのではないでしょうか。

 そして、その間をつなぐクッションとして、私は区役所など行政の行っている事業に目を向けてみることをお勧めします。まだ形になっていない政治家の政策より、具体的な制度として運用されている行政の事業の方が具体的で分かりやすいはずです。自分が抱える問題に関係する事業はどういったものがあるのかを調べてみて、必要であれば実際に利用してみる。そして、その中で問題を感じたり改善点を見つけたりした時、その時こそが、問題解決の手段として政治に関心を持つべきタイミングです。ぜひ、遠慮せずに地元の議員にコンタクトをとってみてください。例えば、区議会議員でも、区役所の制度すべてを利用することは不可能です。私自身、中野区役所の制度利用者の方から頂いた意見に教えられるという経験を何度もしてきました。

 このコラムを読んでくださっている方の多くは、すでに高い政治への関心をお持ちだと思います。そうした方が若者に政治参加の大切さを訴えると、どうしても「べき」論に偏りがちです。しかし、政治への無関心、政治不信は今や世界的にみられる傾向であり、「べき」論だけで政治参加の大切さを納得してもらうことは容易ではありません。若者に政治参加の大切さを訴える側に今求められていることは、まず若者の置かれているさまざまな困難な状況を理解した上で、そうした問題を解決する手段として政治を提示していくことであると思います。

 最後に、本論とは少しずれますが、「政治参加を意識しない政治参加」について考えてみたいと思います。私は、昨年中野駅周辺で大規模工事が行われた際、駅利用者のTwitterでのつぶやきをtogetterにまとめてみました。様相の変わった駅の感想をつぶやいた人のほとんどは、それに政治的な意味があるとは意識してなかったでしょう。でも、政治性を意識しない率直な感想であるがゆえに、普段聞く区民の意見とはまた違った区民の意識が垣間見え、とても参考になりました。

 もちろん、今のところそれが政治家や行政の意思決定に直接影響を与えることはありませんし、投票など従来からの公式的な政治参加がなくなるわけでもありません。しかし、情報技術の発展は、少しずつ「政治参加を意識しない政治参加」の可能性を示し始めています。政治参加の大切さを訴える際には、政治参加のあり方そのものがドラスティックに変化していく可能性についても意識しておく必要がある時代になってきているのではないでしょうか。

著者プロフィール
森たかゆき(もりたかゆき):1983年2月26日生まれ。2005年早稲田大学法学部卒業。2007年早稲田大学大学院公共経営研究科修了。大学院では若者の投票行動分析を行うかたわら、長妻昭衆議院議員の事務所スタッフとして政治の現場を経験する。株式会社NTTデータ勤務を経て、2010年5月に行われた中野区議会議員補欠選挙に27歳で挑戦し初当選。翌年の中野区議会議員選挙で再選。
民主党東京都連区市町村議員団幹事・同青年委員会大学局副局長。
HP:森たかゆきウェブサイト
facebook:takayuki.mori.75 / twitter:@moritakayuki
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