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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第12回「議会・議員のさらなる広聴・広報機能の充実に向けて」 (2012/11/21 亀山市議会議員 豊田恵理/LM推進地議連運営委員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第12回目は、亀山市議会議員の豊田恵理氏による「議会・議員のさらなる広聴・広報機能の充実に向けて」をお届けします。

亀山市の概要

東海道五十三次の1つ・関宿の歴史ある町並み 東海道五十三次の1つ・関宿の歴史ある町並み

 亀山市は三重県の中北部に位置する、人口5万人の緑豊かな町です。江戸時代には東海道に3つの宿場町(亀山宿、関宿、坂下宿)を持ち、参勤交代や伊勢参りなど、多くの人や物が行き交う「交通の要」でもありました。その後、内陸産業都市として企業立地が進み、2002年には電機メーカー・シャープの誘致により、亀山市の名前が「液晶産業都市」として全国的に知れ渡りました。

 亀山市の財政力指数(注)は最盛期には1.39でした。しかし、リーマン・ショックの発生や液晶産業での他国との競争が激化。これにより、2011年度には財政力指数が1を割り込み、交付団体になりました。現在は、大きな方向転換を迫られています。

(注)地方公共団体の財政力を表す指標。1を下回ると、地方交付税交付金が支給される「交付団体」となる。

財政状況の激変・市の方向変換

亀山市議会議員・豊田恵理氏 亀山市議会議員・豊田恵理氏

 私が議員になった2009年2月はリーマン・ショックの発生直後であり、それまで好調だった亀山市の財政状況も、ここから大きく傾き始めました。「シャープ効果」と言われた景気のよいころは、市内にはマンションやアパート、店舗などが建ち、人口もどんどん増えました。しかし今では、単身用アパートが1棟ごと空っぽなのも珍しくありません。それに加え、国内液晶産業の業績不振。関連会社もその影響をまともに受け、市も今後の方向を再検討する時期に入っています。

本当に必要なものは何か?

 私が議員なりたてのころに直面した大きな議案事項の1つに、「自然の森公園整備計画を白紙にする」というものがありました。この整備計画は、亀山市が景気のよかったころに前市長が掲げた一大プロジェクトで、市の南部地区に大きなレジャー施設を作ろうというもの。今までずっと取り残されがちだった南部地区の住民の多くが長い間、大きな公共施設を望んでいました。この整備計画には13億円以上が必要でしたが、景気が一気に悪化した時期には、どう考えても必要なものではなかったと思います。私もこの南部地区の住民でした。白紙にすることに反対意見はあったものの、やはり市全体の将来を考え、白紙に同意しました。

開かれた議会へ

市政報告会の様子 市政報告会の様子

 これからは「陳情型の市政」から脱却しなければなりません。「あれもこれも必要」と言いがちな議員としての活動も、今後は「何が本当に必要なのか」を見極めていくことが求められます。そのためにも、多くの市民と向き合い、さまざまな立場の人から意見を聞き、それらを尊重しつつ、議論を重ねて決断していかねばなりません。また、決断に至る経緯、結果の報告・説明も市民に対して丁寧にすることも重要です。そのためには、市民に対する窓口機能をより充実させ、市民の意見をより集約するシステムが必要になると思います。議員として、議会として「市民にとってどうあるべきか」を議会全体で常に模索しています。

マニフェスト大賞との出会い

 2011年、私はほかの市の議員さんから「マニフェスト大賞の実行委員をやってみないか」と誘われ、今回が初参加です。そして、ここで活動をともにする中で、新鮮なアイデアや試みをする活発な議員さんたちに出会い、世界が本当に広がりました。そこで得た新しい知識や情報を亀山市に持ち帰り、無駄なく生かしたいと思っています。そして今回は、亀山市議会もマニフェスト大賞に初めて応募しました。残念ながら賞を逃してしまいましたが、次回に向けて今も議会改革に鋭意取り組んでいます。

議会のさらなる広聴・広報機能の充実に向けて

 ここで亀山市議会の取り組みについて、少し詳しくご紹介しましょう。

 亀山市議会は、議会および議員の活動についての基本理念を明確に掲げ、市民と議会、議会と市長との関係を示し、現在、議会改革の一環として「開かれた議会」「市民に信頼される議会」を目指して広聴・広報機能の充実に取り組んでいます。

 中でも、2011年9月定例会以降に放送を開始した『こんにちは!市議会です』という議会報告番組は、年4回開催する議会定例会および臨時会のおもな議案の内容や議決結果、委員会の活動などを10~15分程度の番組にコンパクトにまとめたものです。これを見れば議会の大まかな内容を知ることができます。また、議会だよりや議会ホームページでは伝えきれない部分を伝えることで、より市議会を身近なものに感じていただけるよう、番組制作に取り組んでいます。

『こんにちは!市議会です』制作中のひとこま。事務局が一体となって作っています 『こんにちは!市議会です』制作中のひとこま。事務局が一体となって作っています

 番組の制作については、アナウンス部分の収録と編集を業者に委託していますが、使用する映像の撮影、番組原稿の作成、アナウンサー役についても事務局にて行い、番組の企画・監修については、市議会広聴・広報委員会が行っています。番組収録・編集後、番組内容の確認についても、収録スタジオにて市議会広聴・広報委員会を開催し、番組全体の確認のほか、文字テロップ・図表などの詳細な部分まで確認して、修正個所があればその場で修正し、番組が完成します。

 この番組は、ケーブルテレビによって市全域に放送しているだけでなく、亀山市議会ホームページでも見ることができます。議会からさまざまな情報を発信し、市議会が市民にとってもっと身近なものになるよう議会全体で作り上げていくことを目的とし、より多くの人に興味を持ってもらうために市議会広聴・広報委員会と事務局が一体となり、何度も協議して番組を組み立てていきます。

 このようなさまざまな取り組みが評価されてか、「議会改革度調査2011」(早稲田大学マニフェスト研究所が実施した全国の地方議会へのアンケート調査)では亀山市議会が59位の評価を受けました。現在では議会改革について、他市から多くの視察要請が後を絶ちません。今後も市民の方々からのご意見を参考にしつつ、より多くの市民の方々に親しみがもたれるよう改良を進めていきます。『こんにちは!市議会です』も、ぜひ一度ご覧いただきたいと思います。

著者プロフィール
豊田恵理(とよだえり):2009年に亀山市議会議員補欠選挙で初当選。現在2期目。当選以来ずっと無所属・無会派で活動。とにかく動くこと、「見る・聞く・歩く」を大切にしている。2012年マニフェスト大賞から初めて運営委員に加わる。
ホームページ「亀山市議会議員 豊田えり」
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