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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェスト学校~政治山出張講座~】

第2回 マニフェストってなに?~英国、日本の事例から(2012/05/31 早大マニフェスト研究所)

政治山では、ローカル・マニフェストによって地域から政治を変える活動を行っている「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長:北川正恭早大大学院教授)と連携し、「議会改革」と「マニフェスト」をテーマに連載しています。マニフェストをテーマとした連載「マニフェスト学校~政治山出張講座~」では、議員・首長などのマニフェスト活用の最新事例をもとに、マニフェスト型政治の課題や可能性について考えていきます。その第2回、「マニフェストってなに?~英国、日本の事例から」をお届けします。

マニフェストは「国民との契約」

 マニフェストは「政権公約」「契約書」などと呼ばれますが、そもそもはイタリア語です。有名なところでは、マルクスの「共産党宣言」や産業廃棄物の配送伝票などで使われています。

イギリスの2001年総選挙で労働党が掲げたマニフェストイギリスの2001年総選挙で
労働党が掲げたマニフェスト

 選挙の際にマニフェストを有権者に初めて示したのは、イギリスだと言われています。イギリスでは1834年からマニフェストが存在していましたが、日本で注目を集めたのは、1997年にブレア首相(当時)率いる労働党が「国民との契約」として掲げたマニフェストです。そのなかで、「労働党の最優先事項は教育」と明記されており、「5~7歳児のクラスを30人以下に削減」「すべての4歳児を受け入れられるよう保育園を整備」など、「具体的な内容」が「数値目標」「期限」「財源」とともに記載されました。1997年の選挙で勝利した労働党は、4年間の任期中に契約した内容を検証し、さらに詳細なマニフェストを新たに掲げ、2001年の総選挙でも再び勝利をおさめています。

 マニフェストは理念とともに、「数値目標」「期限」「財源」「工程表」などを有権者に約束するものです。政策を体系立て、事後検証が可能なように示す必要があります。そして、「あれもこれも」というお願いだらけの「ウィッシュリスト」ではなく、限られた財源のなかで何をやめて何を行うのか、「あれかこれか」を選択し優先順位を盛り込む必要があります。

自己決定・自己責任を持つための道具

 日本ではじめてマニフェストが導入されたのは、2003年の統一地方選挙です。国からではなく地方からマニフェストが生まれたことがポイントで、イギリスの事例も参考に導入されました。2003年1月に、マニフェスト運動の発端となる「分権時代の自治体変革」と題されたシンポジウムが三重県四日市市で開催され、4月の統一地方選挙でマニフェストを掲げる首長候補が現れました。

 当時、増田寛也氏は岩手県知事選挙に出馬したとき、「公共事業を三割削減し、環境・雇用・福祉・教育などのソフト事業に転換する」と苦い薬もはっきりと数字でマニフェストに掲げました。当選後、「マニフェストは県職員の意識をがらりと変えた。登庁後すぐに職員がきて『三割削減するには、これらの事業を止める必要があります』と言ってリストを持ってきた。もし、具体的な数値や財源を書かなかったらこうはいかなかった」と述べています。

 このように、マニフェスト型政治は地方から始まり、2003年11月の総選挙からは国政でもマニフェストが掲げられるようになったのです。

 マニフェストは、「地方が自己決定・自己責任で政治を行おう」「地方から国を変えていこう」という挑戦のなかで生まれた道具だとも言えるでしょう。

2003年統一地方選挙の主だった知事のマニフェスト(外部サイト・pdfファイル)
増田寛也(岩手県) 「岩手をこう変えます 私の政策 2003春」
松沢成文(神奈川県) 「神奈川力宣言 マニフェスト(政策宣言)-神奈川力で日本を動かす-」
古川康(佐賀県) 「古川やすしの約束 県民への政策宣言 マニフェストへの試み」

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。

関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)

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