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【大村市長 園田裕史 #4】既得権益と対峙し責任をとるのが首長 (2018/10/24 HOLG.jp

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(第3話から続く)

結局は選挙の勝ち方

加藤:今、行政運営をする中で既得権が根強く残っていると危惧することはありますか?

園田市長:今は正直ないですね。役所の職員がどう思っているかわからないですけど(笑)、私は役所と既得権者との多くの関係はリセットできたと思っています。

 医師会との関係にしても今は健全だと思っていますし、様々な施策や事業にたくさん協力してもらっています。建設業界もそうですね。結局は選挙の勝ち方だと思っていて、特定の団体から票を集めてもらって選挙に勝った首長であれば、そっちの方向を向かざるを得ないじゃないですか。

 私はありがたいことに、ボランティアで協力してくれた仲間達のおかげで、しがらみを作らず選挙に勝たせてもらいました。だから、業界団体から変なお願いはありません。健全な要望はありますが、「選挙の時に手伝ったから誠意を見せろ」というのはないですね。

 団体の要望について部長たちに揉んでもらう時にも、自分の知り合いだからこうしてみたいな話は一切しません。コソコソする必要もないので、部長たちには自由に揉んでもらっています。それは、入札でも人事でも同じです。あたりまえのことですけどね。それと、市民の関心が高い事業等をプロポーザルで決定する際には、市民公開型にして徹底的に開かれたやり方をとっています。

園田裕史 大村市長

既得権益と対峙し責任をとるのが首長

加藤:どうしても政治行政の周りには既得権益者が生まれてしまいがちだと思います。しがらみを作らないために、職員にできるアドバイスはありますか?

園田市長:大村市では現状、職員が歪められているとは感じていないですね。ただ、できることはすぐにやる。“できない”を“できる”に変える時間をもらう。それでもできないことはその理由を丁寧に根気強く説明を繰り返すことでしょうか。

 また、職員が議論してあげてきたもののなかで、「この事業は切りたいけど切れないんですよ」という時に、その既得権益と対峙し責任をとるのが首長の役目だと思っています。ですから、職員と首長が人間関係を構築し、ちゃんと意見を吸い上げられる状態にしておくことは重要だと思います。

 本当に職員がカットしたいと考えている場合は、首長を悪者にして「市長が切れって言ったから切ります」と説明してもらって良いんです。ただ、実際のところ「カットしたいものを提案して」と言っても、この2年間で職員からの提案はあんまりなかったんですけどね(笑)。結局、「市長が切れと言ったから切りました」と言っても、最終的に矛先が向くのは職員だ、というのはあると思います。

 実務的な部分でいうと、役所の職員は私よりも関係団体と仕事をする頻度が多いですよね。その中で、一緒に事業を進めていくこともありますから、心情的にも荒立てたくないという気持ちがでてくるのではと思います。だからこそ、明確な基準やガイドラインを作って、職員が相手に説明できる根拠を用意することが重要だと思います。これは首長だけでなく職員にも勇気がいることです。

「違うことは違うと言おう」

加藤:市民や民間企業からの依頼だと断れるけど、議員からの話は断りづらいと聞くこともあります。

園田市長:それは各自治体で違うんじゃないかなと思うんですけど、今の大村にその雰囲気はないですね。結局は首長のスタンスがどのように職員に伝わっているかということだと思います。不当な要求があった場合に、忖度を指示するのか、しないのか。議員や地域からは様々な要望が届きますし、同じような内容も多い。それらに対して公平性をもって判断し、丁寧に説明を繰り返すことが重要だと考えます。

加藤:そういう時に怒鳴りつけてくるような議員はいないんですか?

園田市長:社会的情勢でそういうこともなくなって来ていますし、そういう圧力があっても職員はその都度、個別の内容を見て判断してくれていると思っています。市では議会初日に毎回、訓示をしているんですよ。みんなで一丸となって乗り切っていこうと話をしますが、その時に必ず「自信を持とうよ」と言っています。

 役所の中に入って思いますが、市役所の職員はみんな一生懸命頑張っているんですよ。良くやっているし良く準備している。でも、議員に何か言われても準備した内容をあまり発言しない。議員との関係が悪くなると色々とやりにくくなることもあると、議会でサンドバック状態になっても絶えてしまう。「一般質問の1時間が終わったら、終わりだ」という感じで我慢することもあると思います。

 でも、「それはダメ」だと伝えています。「答えられることは全部言ってくれ、逆に反問権を使ってでも、違うことは違うと言おう」、と言い続けているので、少しずつ雰囲気は変わってきています。

うまくいっていない施策はすぐに手を打つべき

加藤:補助金だけではなく、事業の評価スキームについても見直しされていますよね?

園田市長:今、全国の自治体どこもいわゆる事業仕分け的な事務事業評価をやっているじゃないですか。うちもそうなんですけど、その事務事業評価の作業自体が形骸化していたりするんです。

 財政課は711ある事業を見ながら毎年の予算枠にはめていくけど、事業の評価と予算配分が連動しきれていない。というのも、結局、評価シートを埋めていくことに時間が費やされて、本質的にPDCAを回しきれていない。ですから、そのシートを簡素化して、そこに割かれる時間を削減しようと取り組んでいます。

 今うちには大きく61の施策があって、その下に711の事業があります。その施策が総合計画とうまく結びついているかどうか、そして、その費用対効果を突き詰めないといけない状態だと思います。

 中でも、特に気を付けていることがあります。事業は3年間やってみないと成果が出ないから3年は様子を見なければいけないと役所は考えがちですが、1年経っても活用されることの少ない補助制度もあったりするんです。それでも3年間様子を見るというのはダメだと思っていて、制度を活用する各関係団体との意見交換を繰り返しながら、制度設計をブラッシュアップしていくことを指示しています。それでも活用頻度が低いものは1年でやめるとか、新たな形に転換することで事業評価の形骸化を防いでいくよう進めています。

(第5話へ続く)

※本インタビューは全6話です

提供:HOLG.jp

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