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「安定」なき時代の転職の成功法則とは (2018/11/9 瓦版

関連ワード : 働き方改革 労働・雇用 

転職新時代到来 Vol.5 ~完熟社会の働き方の先にある人材流動化の行方~

重要なのは人材がどこへ流れるか

2030年の人手不足の推計値は644万人――。パーソル総合研究所×中央大学の共同研究「労働市場の未来推計2030」が様々な統計データを解析するなどで算出した数字だ。産業別ではサービス業の人手不足が最大で400万人。ついで医療・福祉の187万人と続く。職業別では専門的・技術的職業従事者で212万人。都道府県別では東京が最も多く133万人となっている。

パーソル総合研究所×中央大学

あくまで推計だが、人口減少は着々と進んでおり、この数字が劇的に解消されることは基本的にはないと考えたほうがいいだろう。そのプロセスには、企業の消滅もあれば産業自体の衰退もあるだろう。逆に新たな産業の勃興もある。こうした日本社会の新時代への環境適応に伴う大きな地殻変動で発生するひずみを埋めるのが、流動化した人材だ。

もしも隆盛産業へばかり人が流れ込むようでは右から左の民族移動で終わるだけで、問題の本質的解決にはならない。日本の将来を担う産業へスムーズに有望人材が流れる一方で、人気はないがニーズの高いいわゆる不人気産業へも適切に人が配置されていかなければ、日本の国力は確実に衰退へ向かう。

物理的にどうしても人員が不足する部分は機械化やAI化で補完。その上で人がやるべきことや人にしかできない業務をあぶり出し、やりがいをもって仕事に取り組める“加工”をすることなどが最適化への有効な一手となるだろう。

例えば転職支援サービスがこうした役割を率先すれば、流動化した人材が適性に落ち着くことにつながるはずだ。これまでは企業の認知度や人気、報酬の高さなどが求職者への引きになっていた。だが、価値観の多様化が進む昨今はそれも一要素でしかない。なにより慢性的な人手不足で、転職市場の主導権が求職者にシフトしている現実がある。これまで以上にユーザーに寄り添ったきめの細かい情報提供やフォローがなければ、本当に求職者にとってふさわしい進路をナビゲートすることはできないだろう。

安定が基準でなくなることで180度変わる転職の成功法則

一方、求職者側の視点でみれば、売り手市場ではあるが、例えばより人手不足が深刻なAI産業へ転職できるのかといえば、多くがスキル不足という壁に突き当たる。売り手市場であるものの、行きたいところへ行きやすいわけではないのが実状で、このことが人材最適化を複雑にしている。そうした中で、ソフトバンクが収益力のある事業への人材の大規模な配置展開を発表。教育もしっかりと織り込んだ、“企業内転職”という新たな動きも出始めた。

加えて、複数企業に所属する複業という選択肢も浸透し始めている。一度辞めた企業に戻る出戻り採用もじわじわと拡がりつつある。退職代行を活用する求職者も増加している。人材の流動化は、多様な“触媒”が介在しながら、まさにアメーバのように無形のまま加速をつづけている。

人口減少と企業寿命短縮を背景にした転職新時代の到来。それは、所属企業や職を変えることが当たり前になることであり、同時に自身のスキルや生き方を軸にした働き方が主流になることといえるだろう。言い換えればそれは、社会人としての「安定」の意味が、依存型から自立型へ大きくシフトすることに他ならない。

アメーバのように流動化した人材は、まさにどんな隙間にでも滑り込む。逆にいえば、求職者にとって、その数だけ理想の職場があるということだ。自由と混とん。転職新時代を的確に移動するための羅針盤は、求職者自身の中にしかない。(了)

提供:瓦版

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