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【四條畷市長 東修平 #4】職員の悩みのタネ「利権」 地域との対話会が脱利権への道 (2018/9/12 HOLG.jp

(第3話から続く)

団体のみとの意見交換はほとんどしない

加藤:四條畷市が目指す働き方改革で、最も難しいポイントはどこにありますか?

東市長:働き方改革は市民に向き合う行政組織にすることなので、一番難しいのは補助金です。僕が着任した瞬間から補助金見直しに着手しました。

 前提として、決してすべての補助金が悪と言っているのではありません。その補助金を出した当時には、必要だったんだと思います。ただ、税金から出す補助金については、何の目的で出すのかを明確にする必要があるはずです。なので、「昨年も出したから今年も出す」という考えを改め、一度すべてをゼロベースで見直そうと。今後は、公募によって「なぜいま補助金が必要か」という理由をもとに申請してもらい、客観的な審査ができる制度を整える予定としており、本年度の後半から新制度を適用開始いたします。

東修平 四條畷市長

 あとはイベントですね。イベントって非常に多いんです。市主催のものは、もちろん職員が動きますが、団体主催のものでも、結局、実質的には市の職員が時間を割いて動いていることも多くあり、そこにかなり時間を使っています。職員が全面バックアップしなければならない団体主催のイベントだったら、なくなってもいいですよね。

加藤:批判を受けそうな文脈ですね(笑)。

東市長:でもね、地域の人たちも、それが問題だとうすうす分かっているんですよ。

 行政が団体と1対1で意見交換をしたら、当然、団体にとって利益を大きくするための話ばかり出てきます。でも、地域全体の中でやると全体として公平・公正であるべきという雰囲気になるんです。だから、僕は閉鎖的なところで団体と1対1の意見交換はほとんどしません。

利害関係者と政治の結びつきが行政を歪める

東市長:良かったと思うのは、僕は特定の政党や有力者の推薦をいただいて当選してないので、フラットに政策を考えることができることです。特定の人の顔色を気にせず、市民全体のことを考えられる。これまでの旧態依然とした既得権益者と政治の結びつきは、職員も葛藤していることなんです。これが、行政の正しい振る舞いを歪めてきた原因、とまで言ったら言い過ぎかも知れませんが、でも実際はそうですよね。

 特定の人だけが得するしがらみをなくして、職員が市民のために本当にやりたいと思っていることをやれるようにすることこそが、働き方改革なんです。そのために、その遮蔽物を僕が取り除こうとしている。だから、職員には「もしかしたら4年後には、この席に座ってられへんかも知らん。でも、やるべきことはやり切ってから落ちる」と説明しています。なかには忖度してくれて、「そうした難しい案件は、2期目の1年目にやりませんか?」とか言ってくれる職員もいるんですよ。でも、それじゃあ意味ないですよね。いましかない。長く市長をすること自体が目的ではないですから。

市民から市長が答えられない意見をもらいたい

加藤:どうしたら、そういう既得権益者とバランス良く付き合えるのでしょうか?

東市長:いま、地域を回って市民と意見交換をしていると、例えば「○○実行委員会にはなんで◯◯万円もの補助金が出ているんだ!」みたいなことを言ってくる人がいるんですよ。それを聞いた他の市民は「それだったら◯◯に使おうよ」という意見が出たりして、税の適正な配分が市民同士で議論されていく。

 既存の補助金の理由を問われた時に、論理的に説明できるものであれば、補助金はそのまま継続しますし、逆に説明がつかないものであれば、立ち止まって考え、止めていくんです。そうすると、有力者の方などが案件に絡んでいても、その場に出て来られないですよね。本来なら「来年もよろしゅう頼むわ」みたいな閉じた空間が、全部オープンになる。

加藤:確かに、明るみに出していくと、既得権益者の力が失われていきますよね。

東市長:そうです。その地域との対話会にどんどん参加してもらい、不平不満を言ってもらう。職員からしたら、「市長が答えられない質問が市民から来たらあかん」となるんですが、実は逆なんです。僕が答えられない意見こそドンドンもらいたい。

 おそらく、それが一番効果があるんですよ。いま、地域との対話会は動画を撮っていて、編集無しのノーカットで、すべてホームページに載せているんです。透明性を確保するとともに、「言った、言わない」の世界が一番嫌いなので、それが起きないようにしています。

加藤:動画で記録に残ると、市民や団体も勝手なことは言えないので、良い緊張関係が生まれますね。

既得権益者とはオープンな場で意見交換する

東市長:他にも地域との対話会が面白いと思うのは、ある団体の代表者が「既存の補助金、来年も頼みますわ」みたいなことを普通に言うんですよ。

加藤:言うんですか?(笑)

東市長:はい(笑)。そうすると、すごい空気になるんですよ。「それ、おかしない?」って周りが思う。だから、行政と団体の二者で会ったらダメなんですよ。みんなが聞いている場で意見交換をしたらいいんです。

 たとえば、それを聞いた時に他の団体の方が「ん?」って思えばいい。その団体はその団体で何らかの利権は持っているわけですよね? 皆がお互いのことを知ればいいんですよ。

真剣に行政運営をすれば市民は市の味方になる

加藤:そういう会に利権に絡まない若年層を集めるのは難しくないんでしょうか。

東市長:確かに、団体に所属されている方が多いですが、そうでない方もいらっしゃいますし、若い人も1人2人はいるんですよ。こないだもある地域で「小学校の中に自治会館を建てさせて」というような、あまり現実的でない要望を次から次に言われる方がいて、それに対して僕が1つ1つ説明をしていると、「あの小学校の土地は、元はと言えば我々の先祖が寄付したんだ」みたいなことを言われ、紛糾したことがありました。そういう時に、30代ぐらいの男性が手を挙げて、「これは対話会なんだから、一方的な要望ばかり言うんじゃなくて、私達としても何ができるかを話さないと」と言ってくれたことがありました。

 他にもゴミ捨てに関して、カラスの対策のために、ある住民の方が「新たに市でお金出して職員で対処して」という感じのことを言ったら、別の人が「別に役所の手をわずらわせんでも、自治会で使っているネットを広くしたら解決するのでは」と言う人が出て来るんです。ありがたいですよね。

 でも、市民にそう言ってもらおうと思ったら、行政がどれだけ真剣に向き合っているかという姿勢を絶えず示さないといけない。「それと働き方改革がどうつながんねん」って結構言われるんですけど、市民に向き合える状態を作るために、いまの行政の働き方、行動や意志決定の基準を変える必要があるんです。

(第5話へ続く)

※本インタビューは全5話です。

提供:HOLG.jp

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